森の長文/読解マラソン長文
●文章類似度判定
時間の不思議 α
なにげなく時計を見て、アレアレレ・・・と、びっくりしたことはありませんか。電池が切れていて、とんでもなくおかしな時間が示されていた時です。本当は今、いったい何時なのだろう、と、妙に心細い気分になってしまいます。
このように、私たちは時間がいつものように流れていくことを信じて疑いません。時間は常に同じ速さで未来へ向かって流れ続け、場所によって変わったり、季節によって変わったりすることなどあり得ないと思っています。
しかし、アインシュタインの唱えた相対性理論によれば、時間というものは絶対のもの、つまり普段私たちが考えているように確かなものではないのです。重力や空間などとの関係からさまざまに変化してしまう、意外にも頼りない存在のようです。
この理論では、速い速度で動いているものの時間は、止まっているものの時間より遅く進みます。ただ、この場合の「速い」というのは、光の速さに近い超高速ということです。
たとえば、光速の九十パーセント、時速九億キロメートルで飛ぶロケットがあるとします。それはジェット機の一万倍以上のスピードです。このロケットに乗っている人には、地球上よりも時間がゆっくりと流れます。この場合、ロケットの中での一年は、地球での約二年四か月分に当たります。もし、本当にそんなロケット旅行をしたとしたら、「行ってきまーす」と言って一年後、家に帰ってみると、なんとひとつ年下のはずの弟より若くなっていた、ということが起こります。これが何十年も宇宙旅行をしたなら、どうでしょう。地球に帰ってはきたものの、知った顔はだれもなく、まさに浦島太郎になった気分です。どんなにか宇宙の竜宮城が『恨めし』太郎でしょうね。
また、ブラックホールでは時間も空間も大きくゆがんでいるといいます。あまりにも強力な重力をもつ天体だからです。かりに、とてつもなく勇気のある人がブラックホールに飛び込んだとします。そうすると、その人にとっては吸い込まれていく数秒のことが、遠く離れた地球から見ると、数千年も数万年もの時間になるのです。数万年という長さは、人間にとっては無限に近い、つまり時間が止まっているのも同じということで、ブラックホールは「凍りついた星」とよばれることもあります。時間がカチカチに凍って、流れていないというわけです。
しかしながら、ロケット旅行やブラックホールなど、普通の生活からはかけはなれたことです。では、相対性理論とは、私たちには関係のない本の中だけの話でしょうか。
最近目にすることも多いカーナビゲーション。これは人工衛星からの電波を受けて、車の位置を計算するシステムです。ところで、人工衛星は地球上に比べるとはるかに重力の弱いところを、しかも高速で飛んでいます。ということは、地球とは時間の進み方が、わずかにずれているのです。そこで登場するのがこの相対性理論です。これによって時間のずれは直され、カーナビは正しい車の位置を教えてくれます。「この道だ!」「いや、あの道だ!」と、今まで車の中で繰り返されていたけんかを、アインシュタイン先生がなくしてくれたのです。家庭の平和に大きく役立ちました。
ところで、こんな難しい理論を考えるまでもなく、人の意識の中で、時間は自由に伸び縮みします。友達と遊ぶ楽しい時間はあっという間に過ぎるのに、だれかのお説教の時間は無限に長く感じる、などということはよくあることです。また、昔住んでいた家のことをはっきりと思い出せたり、十年後のかっこいい自分の姿を思い描いたりなど、頭の中では時間は自由に流れます。
目に見えず、手で触れることもできないのに、感じられ、信じられる時間。しかし、あたり前だと思い込んでいるものの正体を疑ってかかると、世界はまたちがった顔を見せてくれるかもしれません。