森の長文/読解マラソン長文  ●文章類似度判定


 海の塩の秘密 Μ
 海水は塩辛いものです。私たちはそれを当たり前のことだ思っています。実際、そこに含まれる塩分は大変な量です。海水を全て蒸発させ、残った塩分を陸地に敷き詰めると、百五十メートルもの厚い層ができると言われているほどです。この大量の塩は、一体どこから来たのでしょう。
 研究の結果、塩の源には色々あることが分かってきました。
 まずは川です。地球上に存在する川のうち大半は淡水なので、これは意外な感じがします。雨が降ると水が地中にしみ込んで、土の中にあるミネラル分を溶かします。このミネラル分の中に塩分が含まれているのです。こうして溶け出した塩分は、川によって海まで運ばれます。ただ、淡水の川に含まれる塩分はごく少ないので、なめても塩辛いとは感じません。これはありがたいことです。夏の暑い日、のどが渇いたので水を飲もうとすると塩辛い、というのはいただけません。拷問のようなものです。
 塩分の出所としては、他に海底火山の活動があります。爆発や熱水の噴出によって、地中からミネラル分が放出され、その中に含まれる塩分が海水に溶け込むのです。
 このように、塩は色々なところから海を目指してやって来ますから、海には塩がたまる一方のように思えます。その上、海からはどんどん水分が蒸発しミネラル分だけがあとに残ります。これでは、塩分がどんどん濃くなっていったとしても不思議ではありません。しかし現実には、海水の塩分濃度は千分の三十五ほどでほぼ一定しています。つまり、増える分と減る分とがうまい具合に釣り合っているのです。塩分は一体どこへ行くのでしょう。
 まず、海の生物が塩を体の中に取り込みます。例えばサンゴやえび・かになどは、硬い殻を作るために塩類を必要とします。これらの生き物が死ぬと、その殻に含まれていた塩類は海底にたまります。こうして塩分の一部は取り除かれます。また、川が運ぶ物質が塩分を取り込んでそのまま海底にたまることもあります。このように、色々な方法によって海水中の塩分は取り除かれ、そのかなりの部分が海底にたまっていきます。
 では、この海底にたまった塩分はどうなるのでしょうか。海底を含む地殻は巨大なプレートで成り立っています。それらのプレートは少しずつ移動し、二つ以上のプレートが出会うところでは、一方が隣のプレートの下に入り込みます。沈み込んだ海底は高温のマントルの中で溶けてしまいます。当然、海底にたまっていた塩分も一緒に溶けてしまいます。つまり「海底とともに去りぬ」とばかりに海底とともに地球内部へ帰ってゆくのです。
 地中から海へ、そしてまた地中へ。塩は、この壮大な旅を気の遠くなるような年月の間繰り返してきたのです。今日のお味噌汁がおいしいのは、この永遠の旅人がお椀の中にちょうどいいあんばいで入っているから。もちろんお母さんの腕がいいからでもあります。塩にもお母さんにも感謝していただきましょう。