森の長文/読解マラソン長文
●文章類似度判定
クマとの共生 τ
最近、人里におりてきたクマによる被害がニュースでもときどき報道されています。クマの生息地に近い住宅では、自宅の玄関先にクマがいた、などということもあるようです。キノコ狩りに山に入った人が襲われたりするので、クマは凶暴でこわい動物だと思われています。でも、はたして本当にそうなのでしょうか。
現在日本には、北海道に住むヒグマと本州に住むツキノワグマの2種類がいます。ヒグマの方がツキノワグマよりも大型です。ツキノワグマの体重が60〜140キログラムくらいなのに対して、ヒグマのオスでは体重が250キログラムになるものもいるそうです。250キログラムというと、大人の男の人3人分よりもさらに重いです。動きは意外にすばやく、ツキノワグマでも時速40キロメートルくらいで走れるそうですから、ゆっくりめに走っている自動車くらいの速さは出ることになります。しかも、木登りも得意ですから、追いかけられたら、まず逃げられません。爪は鋭く、きばもあります。確かに、敵に回すと、こわい動物のようです。
ふだんは山で木の実や虫、小動物などを食べているクマは、かなり警戒心が強いので、自分から人間に近づいてくることはまずありません。どちらかというと、人間を恐れていて、できれば出会いたくないと思っているのです。ですから、クマと出会わないようにするためには、クマよけの鈴やラジオなど、大きな音を出すものを持って歩くとよいと言われています。クマの方に、先に逃げてもらうのです。
それでも、クマが人里におりてくることがあります。秋、冬ごもりの前にたくさんの食べ物を必要としている時と、春、冬ごもりから目覚めてお腹をすかせている時が多いようです。人里には、人間の出した生ゴミが置かれていることがあります。また、果物畑や畑には、おいしそうな食べ物がたくさん生えています。庭先の柿の木につられてくることもあるようです。
人里に来ることは、クマにとっても人間にとっても望ましいことではありません。人に出くわしたクマが人に危害を加えてしまったり、その恐れがあるというだけでも、追われて鉄砲で撃たれて殺されることもあります。しかし、クマを撃ち殺すだけでは、問題の解決にはなりません。第一、クマがかわいそうです。クマがこんなに人里におりてくるようになったのはなぜか。その原因を調査して、対策をとらなければならないのです。
クマが人里におりてくるようになったのには、いくつかの原因が考えられます。クマのすみかの山が人間の開発で荒らされ、クマの食べ物が少なくなっていること。あるいは逆に、山の食べ物がたくさんあるのでクマが増えているからだという説もあります。そして、人里に行けばおいしい食べ物がたくさんあると、クマが知ってしまったことも、大きな原因です。
では、解決法にはどんなものがあるでしょうか。今、さまざまな団体が、クマの生活を調査し、クマと人間がどちらもうまくやっていけるように、いろいろな方法を試しています。
まず、クマが近くにいる地域では、生ゴミの管理をきちんとすること。カギ付きのゴミ箱を整備し、ゴミを放置しないようにしています。また、人里に近づいたクマはできるたけ殺さずに捕獲し、人里はこわいところだと学習させて山に戻します。たとえば、クマのいやがる唐辛子スプレーを顔に吹き付けて、脅かすそうです。また、最近では「ベア・ドッグ」と呼ばれる特別に訓練された犬を使って、クマを追い払う試みも始まりました。
もともと、クマたちが住んでいたところへ後から入ってきて、山を切りひらき、町を作ったのは人間です。本当のことを言うと、クマたちの方が迷惑しているにちがいありません。「みなさんのすみかの近くにおじゃましてごめんなさい。でも、あまり私たちの方へはおりてこないでほしいのです。その代わり、毎年お歳暮に、たっぷりのハチミツを贈りますから、どうぞ食べてください。」などという「大人の付き合い」が、クマともできるとよいのですが。