森の長文/読解マラソン長文
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赤ちゃんの音の世界 λ
生まれたての赤ちゃんも、目は見え、耳も聞こえます。でも、赤ちゃんは、自分の目にうつっているものがなにか、耳にひびいてくるものがなにかは、まったくわかりません。
たとえば、ドアが「バタン」としまる音がします。赤ちゃんにはその音は聞こえますが、それが「ドア」が「しまった」ときの音ということはわかりません。なにしろ、「ドア」というもののことをまだ知らないのですから。
赤ちゃんに世界がどう見えるか、どう聞こえるかについては、さまざまな研究がされてきました。
赤ちゃんの目にうつるものは、まぶしい光です。その中に、なにか動くものが見えるのです。
赤ちゃんの耳に聞こえるものは、赤ちゃんの頭の中で、いつまでもこだまのようにひびいているそうです。生まれて1ヶ月の赤ちゃんの耳の中は、あちこちでお寺のかねがなりひびいているような、こだまだらけの音の世界です。その中から、少しずつ、いろいろな音を聞き分けられるようになります。
ですから、赤ちゃんは、はっきり、ゆっくりしゃべってくれる声がすきです。
大人たちが、赤ちゃんにいっしょうけんめい話しかけるとき、よく「赤ちゃんことば」を使います。いつもより、高い大きい声で、ことばをやさしくして、みじかくくぎりながら話しかけます。
たとえば、
「ごはんはおいしかったですか?たくさん食べられていいこですね」
と話しかけるより、
「まんま、おいしい?いっぱい、たべたね、いいこ、いいこ」
と言ってあげたりします。
そして、実は赤ちゃんにとっては、このような話しかけ方のほうがしんせつなのです。
赤ちゃんは、ゆっくりはっきりしゃべってくれると、ぼんやりしたこだまのひびきの中からことばを聞きわけることができます。生まれて4ヶ月くらいになると、大人どうしの会話より、赤ちゃんことばで話しかけてくれるほうをあきらかに聞きたがるようになります。ぼんやりしたこだまより、はっきり聞こえてくる音をつかまえるほうがおもしろいし、安心するからです。
けれど赤ちゃんの耳には、大人のまねできない能力もあります。
赤ちゃんは、世界中で話されているどんなことばの音も聞き分けることができるのだそうです。
たとえば、日本人はよく英語で「L」と「R」の発音が区別できないと言われます。フランス人は、「ハヒフヘホ」という音が出せません。そのほかにも、「ダヂヅデド」という音が出せない国など、国によってさまざまなことばがあります。でも赤ちゃんは、そのすべての音を聞き分けられるそうです。だから、赤ちゃんは外国語の天才といえるかもしれません。
自分が赤ちゃんのときはだれでも、世界中のことばが持っている発音を聞きわけることができて、声に出すこともできていたというわけです。
けれど赤ちゃんはそのうちに、自分のまわりでよく使われていることばの音だけを聞き取るようになっていくのです。はっきり聞こえれば聞こえるほど、そして、何度もくりかえしてもらえればもらえるほど、赤ちゃんはことばをはやく覚えることができます。
題名を『赤ちゃんの音の世界』に変えてください。
参考資料:ダフニ・マウラ、チャールズ・マウラ『赤ちゃんには世界がどう見えるか』(草思社1992年)