森の長文/読解マラソン長文  ●文章類似度判定


 ヘモグロビンと葉緑素 τ
 ホラー映画や推理ドラマでは、「したたる真っ赤な血」の映像に、怖い場面が想像されて、ドキドキしたり、時には「きゃーっ」と叫んでチャンネルを変えてしまうことがあります。赤いペンキがたれていても、私たちは血を連想してしまいます。でも、血の色はなぜ赤いのでしょうか。
 じつは、血の色は必ずしも赤とは限らないのです。ふだんあまり血まで見ることはありませんが、エビやタコ、イカなどは青い血を持っています。人間や多くの動物の血の色は確かに赤ですが、この赤い色は、意外なものに関係があります。それは、「鉄」です。「鉄」というのは、あの金属の「鉄」です。機械や、自動車や、その他さまざまなものに使われています。では、どうして、あの「鉄」と血が関係あるのでしょうか。
 人間の血液は、約45%の赤い色のものと、残り55%の黄色い液体でできています。この赤い色のものは、「赤血球」と呼ばれるつぶつぶの集まりです。黄色い液体は、「血漿」といいます。赤血球は、丸いお団子を、真ん中をへこませてつぶしたような形をしていて、約8ミクロンくらいの大きさです。ミクロンというのは千分の1ミリのことですから、すごく小さくて目では見えません。この赤血球が、私たちの体の中で酸素を運ぶ、とても大切な役目を果たしているのです。
 赤血球のつぶの中には、「ヘモグロビン」という赤い色素がいっぱいに詰まっています。これが、血の赤い色の正体です。ヘモグロビンは、「ヘム」と「グロビン」が合体してできているのですが、「グロビン」は透明なのに対して、「ヘム」が赤い色をしています。そして、この「ヘム」の真ん中に「鉄」が含まれていて、このために「ヘム」が赤い色をしているのです。
ちなみに、青い血のエビやタコでは、「鉄」は含まれていません。エビやタコの血の中には、「鉄」の代わりに「銅」が含まれています。銅というのは、10円玉を作っている金属がそうです。銅は、そのままではやや赤い色をしていますが、血の中では青い色の素になるのです。
 心臓から送り出された血液は、肺に行きます。肺は、私たちが呼吸して空気が入ってくるところです。肺は、表面がとても小さな小部屋になっていて、その小部屋の壁には血管が縦横無尽に走っています。ここで、ヘモグロビンの中の鉄が、酸素を受け取るのです。そして、その酸素を持って体中に流れていき、あちこちの細胞にその酸素を渡します。
 細胞が活動するには酸素が必要で、活動するといらない「二酸化炭素」ができます。ヘモグロビンと血液は、このいらない二酸化炭素を代わりに受け取って、また肺へともどっていきます。そして、また肺で、二酸化炭素と酸素を交換して運んでくるのです。
 ところで、こんな働き者のヘモグロビンですが、意外なことに、とても似たものが植物の中にあるのです。
それは、植物の葉の中にある「葉緑素」です。葉緑素は葉が緑色に見えている素になっているものですが、こちらもとても働き者です。太陽の光を浴びると、葉緑素は、なんと私たちが捨てている二酸化炭素と水を使って、デンプンという養分と酸素を作り出すことができるのです。地球上に酸素がいっぱいあるのは、じつは植物の葉緑素のおかげなんですね。
そして、とても不思議なことは、この葉緑素と私たちの血の中にあるヘモグロビンのヘムは、構造がとてもよく似ているのです。葉緑素は、ヘムの中の鉄の代わりに、真ん中に「マグネシウム」という金属が入っています。ヘモグロビンと葉緑素。どちらも、動物と植物が生きていくのにとても大切なものですが、それがこんなに似ているというのは、もしかすると動物も植物も、やはりみんな仲間なのだということなのかもしれません。
私たちが赤い血の代わりに、葉緑素でも生きていけるようになるといいですね。そうすると、太陽の光に当たるだけで、食事をしなくてもお腹いっぱい、なんてことになるかもしれないからです。でも、いろいろなおいしい料理を食べる楽しみはなくなりますね。