森の長文/読解マラソン長文  ●文章類似度判定


 砂糖 τ
 時計が動くには電池が必要なように、私たちが生きて活動するためにも、エネルギーが必要です。そのエネルギーを、私たちはご飯を食べることで体に取り込んでいます。お米やパンの中に多く含まれているデンプンは、「糖質」と呼ばれるものの仲間で、人間の体の大事な栄養の素です。そして、「砂糖」も、この「糖質」の仲間です。デンプンも砂糖も、一番小さい「単糖類」というのものに分解されて体に吸収され、私たちのエネルギーになっているのですが、特に脳や神経は、この「単糖類」であるブドウ糖だけしか、エネルギーとして利用できません。つまり、脳や神経を働かせるためには、糖質がなくてはならないものなのです。
 最近では「太る」とか、「糖尿病になる」とか、「虫歯になる」などと言われて、ちょっと悪者扱いの砂糖ですが、じつは私たちにとってはなくてはならない調味料です。昔のヨーロッパでは栄養豊富な薬として使われていたこともありました。17〜18世紀頃には、砂糖は現在の石油のように、輸入しなければならない高価な食品だったのです。また、日本でも、江戸時代の17世紀初めから砂糖を輸入し始めましたが、最初のころ、砂糖はやはり薬として、高い値段で輸入されていました。
 どうして砂糖を輸入しなければならなかったかというと、砂糖は最初、すべてサトウキビから作られていたからです。サトウキビというのはイネ科の植物で、熱帯や亜熱帯などの暑い地方でしか栽培できないので、ヨーロッパなどでは作ることができなかったのです。日本では、現在は沖縄と南西諸島で作られています。
 サトウキビは高さが2〜3メートル、茎の太さ2〜4センチメートルの、竹とススキを足して2で割ったような姿をしています。原産地であるニューギニアでは、高さ5〜6メートルにもなるそうです。太い茎の節と節の間に、甘い汁を含んだ綿のようなものが詰まっています。この茎をつぶして絞り、その絞り汁をそのまま煮詰めると黒砂糖が出来上がります。絞り汁から、不純物を取り除いてきれいにしてから結晶を作ると、ふだん私たちが食べている上白糖ができます。さまざまなビタミンや鉄分、カルシウムなども不純物といっしょに取り除かれてしまいますから、黒砂糖の方が栄養はたくさんあるようです。
 サトウキビは暑い地方でしかとれなかったので、ヨーロッパで力のあったスペインやポルトガル、イギリスやフランスなどは、そういう暑い地方に乗り込んでいって支配し、自分たちの植民地にしました。そして、その地方の人々や、アフリカから無理やりつれてきた人たちを働かせて、砂糖を作らせたのです。
 しかし、そういう植民地を持たない国は困りました。このままでは、砂糖があまり手に入らない。そこで、他のものからも砂糖がとれないか、一生懸命研究が行われました。18世紀の中ごろ、今のドイツであるプロイセンの研究者が、サトウダイコンにも砂糖が含まれていることを発見しました。そして、フランスのナポレオンがサトウダイコンの栽培に力を入れたので、ヨーロッパ中に広まったのです。
 サトウダイコンはテンサイ、またはビートとも呼ばれ、カブに似た植物です。この根から砂糖をとることができます。サトウキビと違って、涼しい気候でよく育つので、日本では北海道で栽培されています。ロシア民話に出てくる「カブ」は、たいていはこのサトウダイコンのことだそうです。『大きなカブ』のお話が有名です。
 現在、砂糖の約7割は、やはりサトウキビから作られています。残りの3割が、サトウダイコンから作られます。その他、サトウカエデの幹に穴を開け、そこから出てくる液を集めて煮詰めたものがメープルシロップで、カナダのものが有名です。
 「宿題しなさいよ」と言われて、「ちょっと待って。おやつを食べてから。」というのは、脳に栄養を与えてよく働くようにするという意味で、正しいことなのです。「腹が減っては戦ができぬ」と言いますが、それは脳にとっても同じことです。