森の長文/読解マラソン長文  ●文章類似度判定


 世界一小さい犬 Μ
 なんでもコンパクトがもてはやされるこの頃ですが、犬の世界も例外ではありません。品種改良の結果たくさんの犬が小型化され、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクトな犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなのです。
 しかし、「天然の」小型犬もいます。チワワです。餌代もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は、ペットとして大変人気があります。
 チワワの出身地はメキシコです。意外にも南国の生まれなのです。西暦九世紀、つまり今から三千年近く前にメキシコのトルテカ族が飼っていた、と言われています。後におこったアステカ族もこの犬を大切にしました。チワワの中でも毛色が青っぽいものは信仰の対象となり、あがめられていたそうです。あるアステカ族の王様はこの犬が大好きで、何百匹も飼っていました。そして犬一匹に一人の世話係をつけたと言います。
 実はこの犬、もともとはテチチという名前で知られていました。チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろです。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコはチワワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ頃、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりました。
 チワワは人間が大好きです。人間との接触が多いほど元気に育つと言われています。また、小さいのに大変長生きで、十歳を過ぎても元気です。愛想がよくしつけもしやすいので、比較的気軽に飼える犬なのです。
 しかし、注意も必要です。まず、この犬は高さの感覚を持っていません。そのため、高いところから無造作に飛び降りて骨折することもしばしばです。この犬の大きさからすると、ベッドやソファでさえ高所ですから、気をつけてやらなければなりません。さらに、消化器官が小さい上にカロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいのもチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび与えてやる必要があります。
 震えるのはこの犬の特徴です。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、不満があるとき、こわがっているときに震えます。これはチワワの魅力を大いに増す特徴だと言えるでしょう。あるコマーシャルで、大きな目をうるませて震えているチワワを主役にしたところ、大変な話題となりました。あまりに反響が大きかったため、何本も続篇がつくられたほどです。
 小さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。