森の長文/読解マラソン長文
●文章類似度判定
香水になるフルーツ Μ
すれ違いざまによい香りがすると、たとえ相手が美男美女でなくても思わず振り返りたくなるものです。よい香りは人をひきつけるのです。また、特定の香りにはリラックス効果があることもよく知られています。人間は昔から、香りに興味を持ち、よい香りを発する原料つまり香料を探してきました。
香料には動物性と植物性があります。動物性のものとしては、麝香つまりムスクが代表的でしょう。これは本来、鹿の一種から取られるものです。植物性の香料として一般的なのは、なんと言っても花々です。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高値で取引され、今でも世界中で愛されています。
しかし、植物性の香料は花だけではありません。どちらかといえばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、それがフルーツの一種であるベルガモットです。実は、この果実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また男性用のコロンの約半分に入っているのだそうです。それもそのはず、このフルーツから取れるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて一つの香りにする、という働きがあり、これは他の香料にはない特性なのです。
ベルガモットはミカン科の植物で、秋から冬にかけてオレンジ大の実をつけます。香水になるエッセンスは、この果実の皮から採れるのです。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島最南部に位置するカラブリア地方です。他の土地ではほとんど育ちません。というのも、この植物は大変な気難しやなのです。暖かくしかも南向きの土地でなければならず、強い風や湿度の高い状態も嫌います。この条件にぴったり合うのは、カラブリアの沿岸地方だけなのです。
記録によれば、少なくとも十八世紀初めにはすでに、香料としてのベルガモットの取引が行われていたようです。千七百四年、一人のイタリア人がドイツのケルンで香水を売り出しました。それが大ヒット、香水の主な成分がベルガモットだったことから、この植物の本格的な商業販売が始まります。この香水は「ケルンの水」つまりオーデコロンとして知られるようになり、その名は現在、軽い香水一般を指す言葉となっています。つまり、元祖オーデコロンの原料ベルガモットは、香水の起源ともいえる存在なのです。
しかし、この植物の起源そのものは深いなぞに包まれています。興味深いことに、野生のベルガモットというものはありませんし、この植物を種から育てることもできません。他の柑橘系の木々に挿し木して育てるしかないのです。
神秘に包まれた香りの世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれませんね。