森の長文/読解マラソン長文
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マンボウ κ
マンボウは、その愛嬌のある風貌で、スキューバダイビングをする人や水族館を訪れる人々に人気があります。大人のマンボウの大きさは、だいたい畳一枚ほどもあり、体の後ろ半分が切り取られたような形をしているため、まるで頭だけが泳いでいるように見えます。
人気のあるマンボウですが、実は水族館での飼育はたいへんむずかしいのです。その理由は、えさをうまく食べられないことや、泳ぎが下手で水槽の壁に体をぶつけて弱ってしまうためです。そこで、水面に顔を出したときにえさを直接口に入れたり、体をぶつけないよう丸い水槽を用いたり、ビニールやネットで壁をおおうなど、マンボウを守るための工夫をしています。
イクラやカズノコを思い出すとわかるように、魚の仲間は驚くほど卵をたくさん産みます。その中でもナンバーワンはマンボウで、メスが一度に産む卵の数は、三億個近くにもなります。三億個の卵がすべて大きなマンボウに成長したら、世界中の海はマンボウだらけになってしまいます。しかし、マンボウはそれほど数の多い魚ではありません。
マンボウのお母さんは、卵を産みっぱなしで、保護するということをしません。卵や孵化したマンボウの子どもは、海中に漂っている間に、どんどんほかの生き物に食べられてしまいます。最初のごく小さいうちは、イワシやサンマ、アジなどのえじきになり、少し大きくなったマンボウの子どもは、マグロやカツオ、海鳥、ウミガメなどに襲われてしまいます。
けれども、マンボウの子どもたちも、ただ何の抵抗もせず、食べられているわけはありません。子どものマンボウの体には長いとげがたくさんあります。まるでお菓子のコンペイトウのようで、大人のマンボウとは似ても似つかない形です。大きな魚に対しては、この程度のとげはなんの役にも立ちませんが、小型の魚に食べられる確率は小さくなります。このとげは、大きくなるにつれて短くなり、マンボウ独特の形に変わっていきます。
マンボウの兄弟たちは、成長するまでにどんどん数が減っていきます。生き残って大人になることができるのは、三億個もあった卵のうち、たったの三十個ほどです。成長したマンボウは、体の表面が分厚いゴムのようになり、サメの牙さえも通しません。猟師のモリはもちろん、ライフル銃の弾でさえ通しにくいのではないかと言われています。小さいときは弱々しかったマンボウですが、大人になると敵に襲われる危険はほとんどなくなります。大人のマンボウは、他の魚を襲って食べるようなことはありません。泳ぎが下手で、獲物を追いかけることができないので、口の周りに近づいてきたクラゲや小魚を吸い込んで食べるだけです。