【4】
小諸
(
こもろ
)
なる
古城
(
こじょう
)
のほとり
雲
(
くも
)
白
(
しろ
)
く
遊子
(
ゆうし
)
悲しむ
(
かな
)
緑
(
みどり
)
なすはこべは
萌え
(
も
)
ず
若草
(
わかくさ
)
も
藉
(
し
)
くによしなし
しろがねの
衾
(
ふすま
)
の
岡辺
(
おかべ
)
日
(
ひ
)
に
溶け
(
と
)
て
淡雪
(
あわゆき
)
流る
(
なが
)
【5】あた
ゝ
(
た
)
かき
光
(
ひかり
)
はあれど
野
(
の
)
に
満
(
み
)
つる
香
(
かおり
)
も
知ら
(
し
)
ず
浅く
(
あさ
)
のみ
春
(
はる
)
は
霞み
(
かす
)
て
麦
(
むぎ
)
の
色
(
いろ
)
わづかに
青
(
あお
)
し
旅人
(
たびびと
)
の
群
(
むれ
)
はいくつか
畠中
(
はたなか
)
の
道
(
みち
)
を
急ぎ
(
いそ
)
ぬ
【6】
暮
(
くれ
)
行け
(
ゆ
)
ば
浅間
(
あさま
)
も
見
(
み
)
えず
歌
(
うた
)
哀し
(
かな
)
佐久
(
さく
)
の
草笛
(
くさぶえ
)
千曲川
(
ちくまがわ
)
いざよ
ふ
(
う
)
波
(
なみ
)
の
岸
(
きし
)
近き
(
ちか
)
宿
(
やど
)
にのぼりつ
濁り
(
にご
)
酒
(
ざけ
)
濁れ
(
にご
)
る
飲
(
の
)
みて
草枕
(
くさまくら
)
しばし
慰む
(
なぐさ
)
(「
小諸
(
こもろ
)
なる
古城
(
こじょう
)
のほとり」
島崎
(
しまざき
)
藤村
(
とうそん
)
)