1. 【1】
二月三日は
節分です。ぼくたちは
豆まきをしました。
2.「
鬼は
外、
福は
内。」
3.と、
元気よく
大声をあげました。パラパラと
豆が
散らばります。おもしろくてどんどん
投げました。ベランダから
外に
投げるときは、ちょっとだけ
声を
小さくしました。【2】どうしてかというと、
夜なので
大声をあげると
近所迷惑になるからです。
4.「
豆の
片付けはチップにやらせるからじゃんじゃんまいていいよ。」
5.と、
お母さんが
笑いながら
言いました。チップというのはぼくの
家の
犬です。【3】まいた
豆は
食いしんぼうのチップがきれいに
食べてしまいます。
6.
豆まきのあと、ぼくが
お父さんと
お母さんに
年の
数だけ
豆を
配りました。
7.「
お父さんは三十一
歳だから三十
一個ね。はい。」
8.そう
言って
お父さんの
前に
豆を
置きました。【4】
お母さんには、
9.「はい、
お母さんは三十四
個ね。」
10.と、三十四
個数えました。
11.「いいなあ、こんなにいっぱい。」
12.と、ぼくがうらやましそうに
言うと、
13.「いいでしょう。」
14.と、
お母さんはにっこりしました。【5】
お母さんが、
15.「
年の
数だけとって
食べるんだよ。」
16.と
言うので、ぼくと
弟たちは
自分で
豆を
取りました。ぼくは六
個でリョウタは五
個。キョウタは四
個のはずでした。でも、ぼくはキョウタが四
個以上口に
入れているのを
見てしまいました。【6】キョウタのやつ、それじゃあぼくより
年上じゃないかと
思いました。リョウタはちゃんと五
個だけ
食べていました。ぼくも六
個だけ
食べました。ぼくとリョウタは
真面目だなと
思いました。∵
17. みんなに
配ってからもまだ
豆は
残りました。【7】
残った
豆はぼくが
作った
紙の
箱に
入れてテーブルの
上に
置いておきました。その
豆を、
お父さんが
食べていました。
次から
次へと
豆を
口に
放り込んでいます。まるで
豆の
方から
お父さんの
口に
ふっ飛んでくるみたいです。【8】おもしろそうなのでぼくも
真似してばくばくと
食べてしまいました。だからぼくも
年の
数よりも
食べてしまいました。どうして
年の
数だけ
食べるのかなあと
不思議に
思いました。
豆がきらいな
人はどうするのかなと
心配になります。【9】
年の
数だけ
食べるのじゃなくて、はじめから
好きなだけ
食べることにしたらいいと
思います。
18. ふと、おじいちゃんとおばあちゃんの
顔を
思い出しました。
19.「じいとばあは六十
個も
豆を
食べたのかな。」
20.と、
お母さんに
聞いてみました。【0】
お母さんは、
21.「さあ、どうかな。
今度、
電話で
聞いてみたらいいんじゃない。」
22.と
言って
笑いました。
23.(
原作 しゅんのすけ
編集 言葉の
森長文作成委員会 ω)