シオン3 の山 8 月 1 週
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○自由な題名
○星空を見たこと
★おにぎりを作ったこと、セミをつかまえたこと
○虫をつかまえたこと
○味覚を感じる場所
 私たちが味を感じることができるのは、舌や口の中にある味蕾(みらい)の中の細胞が味を感じ、それを電気信号に変えて、神経を通じて脳に送るからです。味の感じ方は年齢だけではなく、性別や人種によっても違いますし、個人差もあります。また、味覚は、気候や風土などの環境にも左右されます。日本人は白人に比べて味蕾(みらい)の数が多いので、日本料理のように繊細な味の料理が発達したのだという説があります。また、日本人の男性は女性よりも味蕾(みらい)の数が多いので、甘いものを甘く感じすぎて苦手であるという説もあります。実際、苦味で測定する、「味盲(みもう)」と呼ばれる味を感じにくい人の割合は、日本人では十人に一人くらいですが、白人ではその三倍近くいるそうです。
 この、味を感じる味蕾(みらい)の数は、年が若いほど多いのです。つまり、赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるときがいちばん多く、年をとるとともに減って、老人になると赤ちゃんのときの半分から三分の一になります。
 赤ちゃんは生まれる前、お母さんのおなかの中の羊水という水を飲んでいます。この水はわずかに甘く、お母さんのお乳に似ている味だそうです。味蕾(みらい)の中の細胞が感じる味は、お母さんの食べる食事によってもわずかずつ変わってくると言われています。味蕾(みらい)をたくさん持っている赤ちゃんが生まれてきたときには、すでに「わが家の味」になじんでいるのかもしれません。
 老人では味蕾(みらい)の数だけではなく、唾液の分泌も減ってくるので、食べ物がうまく唾液に溶けずに、味蕾(みらい)に届きにくくなるのも、味を感じづらくなるひとつの原因です。ですから、老人になると、味を感じるまでに時間がかかったり、どちらかというと味が濃い食べ物を好むようになります。
 ところで、現代では、若い人たちの間にも味覚障害の人が増えて問題になっています。味覚障害といってもいろいろなタイプが∵あり、まったく味を感じないものから、本来の味と違う味を感じるもの、特定の食べ物の味だけを感じないものまで、さまざまです。これらは味蕾(みらい)に異常があるために起こるのですが、その原因で最も多いのが、亜鉛が足りないために起こる味覚障害です。
 亜鉛というのは金属の一種で、私たちの体にはなくてはならないミネラル分です。どうしてなくてはならないかというと、私たちの体の細胞が新しく作りかえられるとき、亜鉛が必要になるからです。味蕾(みらい)の中の細胞は、寿命が十日ほどしかありません。つまり、十日ごとに新しく生まれ変わらなければなりません。そのとき、亜鉛の助けが必要になるのです。しかも、亜鉛は、体の中では作り出せないので、外から取り込まなくてはなりません。亜鉛は、小麦の胚芽や生ガキ、カタクチイワシ、カボチャ、ココア、抹茶などに多く含まれています。
 病気のせいで、あるいは他の薬のせいでこの亜鉛の取り込みができなくなると、亜鉛不足(ぶそく)が起こります。また、現代の食生活で問題になるのは、加工食品やインスタント食品に含まれる食品添加物です。これらの中には、亜鉛を取り込みにくくするものがあります。さらに、無理なダイエットや、好きなものばかり食べる偏食によっても、亜鉛不足(ぶそく)が起こります。ですから、若い人たちにも、味覚障害が増えているのです。
 やはり、食生活には気をつけていないと、「おいしい味に出アエン」ということになりそうです。味蕾(みらい)を発達させて、おいしいミライの食生活を楽しんでいきましょう。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(τ)