長文集  7月2週  ○ウミガメの産卵  si-07-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/06/09 09:38:12
 世界中を簡単に旅することができなかった
昔の人々にとって、ウミガメが毎年決まった
季節になると海岸にやってきて卵を産んでい
く様子は、神秘的だったことでしょう。そん
なウミガメから、竜宮城(りゅうぐうじょう
)という夢のような話が生まれたのかもしれ
ません。
 では、日本にやってくるウミガメには、ど
んな種類があるのでしょうか。日本列島は四
季がはっきりしているので、季節によって気
温や海水温が大きく変わってきます。その中
で、日本に卵を産みにくるのは、アカウミガ
メ、アオウミガメ、タイマイなどのカメで 
す。関東地方より南の海岸で卵を産むアカウ
ミガメは、春になると日本近海に姿をあらわ
します。アオウミガメは、屋久島より南で卵
を産み、タイマイは沖縄本島より南で卵を産
みます。
 産卵場所となる海岸の沖には、オスがメス
より一ヶ月も前に来て待っています。やがて
メスがやってくる時期になると、オスたちは
メスのあとをついてまわるとともに、オスど
うしで激しく争い、メスを奪い合います。か
んだり、ぶつかったり、オールのような足で
はたいたりと、とても迫力があり、水族館で
ゆったり泳いでいるときの姿からは想像もつ
かないほどです。その後、オスは産卵場所の
まわりの海から姿を消します。メスは近くの
砂浜に上陸して産卵します。
 お風呂やプールに入ると、体が軽く感じら
れます。それは、水の中につかっているもの
には浮力が働くからです。海中のウミガメ 
は、浮力のおかげで重さが陸上にいるときよ
りもずっと軽くなります。しかし、浮力の働
かない陸上では自由に体を動かすことができ
ません。海から上がって卵を産むときには、
外敵から自分や卵を守ることもできなければ
、すばやく逃げることもできません。そのた
め、産卵をひかえたメスは、夜になってから
用心深く砂浜に上陸 し、安全を確かめてか
ら産卵にとりかかるのです。∵
 アカウミガメは、左右の後ろ足を交互にシ
ャベルのように使っ て、大きな穴を掘り、
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一回に百個ほどの卵を産みます。一頭のメス
は、夏の産卵期の間に多いときで六回くらい
卵を産みます。
 では、ウミガメは危険をおかしてまで、ど
うして陸に卵を産むのでしょう。ウミガメは
、陸上で生活できるように進化してきた爬虫
類の仲間です。爬虫類は乾いた場所でも体の
水分が外へ出ていかないように、丈夫なウロ
コのような皮膚で体をおおっています。卵 
も、水中に産む魚類や両生類のものと違い、
鳥類の卵のように殻に包まれています。ウミ
ガメの卵は、殻を通して息をしており、水中
だと息ができずに死んでしまうのです。この
ため、ウミガメは一生の大部分を海で暮らす
ようになった今でも、卵だけは陸に産みにく
るのです。
 ウミガメのひとりごと、「わたしも、本当
は、海でウミたいわ あ」。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
Κ)