長文集  9月2週  ○印象派の光  si-09-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/06/10 13:15:00
 みなさんは空の絵をかくとき、何色でかき
ますか。ふつうは空 色、つまり薄い青色に
するのではないでしょうか。しかし、もしか
すると、ある人は、昨日の夕焼けの空を思い
出してきれいなオレンジ色にするかもしれま
せん。
 確かに、空の色は時刻によっても、天気に
よっても変わります。空だけではありません
。木でもベンチでも人の顔でも、その時々で
いろいろな色合いに変わります。では、その
時々の色を決めるのはなんでしょうか。
 それは光です。物は、光との関係によって
さまざまな色合いに変化します。特に、外の
景色は太陽の光をじかに受けているので、一
日のうちでもさまざまに印象を変えます。こ
の光というものを大切に考えて、自然の姿を
そのまま絵にしようと考えたのが、印象派と
呼ばれる芸術家たちでした。
 印象派とは、十九世紀の後半にフランスで
起こった画家を中心とするグループです。そ
れまでは、時間をかけてかきこんだ重々しい
作品がよいとされてきました。そのため、一
瞬の輝きをとらえてすばやく仕上げる印象派
の絵は、最初単なるスケッチにすぎないと見
られていました。印象派の最初の印象は、あ
まりよくなかったのです。
 しかし、印象派の人たちは、実はしっかり
した科学的な考え方にもとづいて制作をして
いました。そのひとつが、シュヴルールとい
う人の色の考え方です。彼は本の中で、とな
り合う色がおたがいに影響しあって、いろい
ろな見え方になることを説明しました。そし
てとなり合う色どうしが違えば違うほど、よ
り大きな効果があるとしました。
 例えば、赤と緑、黄と紫などは、最も違う
色合いで、このような色の組み合わせを補色
の関係と呼びます。補色を並べてみると、目
がちかちかするような効果を生みます。青っ
ぽい色は奥に∵引っ込み、赤っぽい色は前に
飛び出してくるようにも見えます。
 その印象派の画家たちの中で中心となった
のが、クロード・モネです。モネは、移ろい
やすい光や自然の鮮やかな色を、だれよりも
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深く追い求めました。
 それまでの絵は、絵の具を混ぜることによ
ってさまざまな色を作り出していました。絵
の具は混ぜ合わせれば混ぜ合わせるほど、明
るさがなくなっていきます。絵の具の筆を洗
っていると、水がどんどん暗い色になってい
くことを知っている人も多いでしょう。印象
派以前の絵は、暗い部分に影をつけることに
よってものの奥行きを出していたので、絵が
更に暗く重い感じになっていました。
 モネはこうした暗い絵を嫌いました。そし
て、光に溢れたみずみずしい景色を描くため
に、新しい技法を使いました。ある色を作る
のに、絵の具を混ぜ合わせるのではなく、純
粋な色を数多くの点としてとなり合わせるよ
うに描いたのです。こうすると、離れて見た
場合、それらの色が混ざり合って見えます。
しかし、絵の具を混ぜて使ったときよりもは
るかに明るい色になるのです。モネは、とな
り合う点どうしを補色の関係にするなど、い
ろいろな工夫を重ねました。こうして、モネ
の絵は、自然の風や太陽のあたたかさまで感
じさせるようなものになっていったのです。
 最初は受け入れられなかったモネの絵も、
次第に多くの人に認められるようになりまし
た。今その光溢れる絵は、世界中の人々から
愛されています。

「モネさんのような絵を、印象派の絵と言っ
てもイーンショウ  か。」
「うん、いいかモネ。」

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
α)