長文集  5月3週  ★急がばまわれ(感)  ta-05-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
急がばまわれ

 【1】いそぐ時には、少しくらい危険があ
っても、近道をとおりたくなる。けれどそれ
が失敗する原因になる。だから、時間がかか
ってめんどうでも、安全な道やたしかな方法
を選んだ方が、けっきょくは得なことになる
んだ。
 【2】ことわざのもとになったのは、平安
時代に源俊頼が作ったこんな和歌だ。
 武士(もののふ)の矢馳の船ははやくとも
急がばまわれ瀬田の長橋
 歌の意味は、大津へいくのには、びわ湖の
岸の矢馳からでる舟に乗っていけばはやい。
でもいそぐのなら舟にのらず、湖岸の道をと
おり瀬田川の橋を渡って陸の道をいった方が
いいよ、というんだ。
 【3】矢馳というのは地名で、矢橋とも書
く。滋賀県草津市のびわ湖の岸のあたりのこ
とだ。古くからここには、大津までの渡し舟
の便があったんだ。陸の道をいくと、びわ湖
の南岸をぐるっとまわり、瀬田川の長い橋を
渡らなければならない。かなり時間がかか 
る。【4】それにくらべ、湖上をいけば近道
になる。むかいの大津まで直線距離でいくか
ら、うんとはやかったんだ。
 しかし渡し舟でいくのは、いろいろ危険が
あった。ちょっと強い風が吹いたりすると、
流されてなかなか大津につけない。【5】ま
た、この舟は小さなものだったから、大きな
波にかんたんに転ぷくすることもあったんだ
。いそぐので舟に乗ったのに、大津につけず
ひき返したり、舟がひっくりかえっておぼれ
死んだり、こわい目にあう人がたくさんいた

 【6】この歌の中で「急がばまわれ」のこ
とばだけがひろまっていき、ことわざとして
いまものこっているんだ。これは、さいしょ
は道についていったんだけど、その後は生活
のいろんなことについてもいわれるようにな
ったんだ。
 【7】だれでも、少しでもはやくしごとを
すませたいから、ついはやくできる方法をや
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ろうとする。でもいそいでやろうとすれば、
はや∵くやることばかりに気をとられて、一
つ一つたしかめたり、ゆっくり考えたりしな
い。【8】その結果、やり方をまちがえた 
り、とんでもない失敗をすることになるんだ

 たとえば、テストがそうだね。ぼくは、学
生の時に「急がばまわれ」のことわざをわす
れていたので、なん度も失敗したよ。【9】
テストを時間内にはやくやろうといそぐあま
り、問題をしっかり読まずに答えを書くこと
があったんだ。はやくできて得意になって提
出したのはいいけど、十問のうち正しい答え
ははんぶんもなかっ た。【0】それなら、
問題をていねいに読んで、よく考えてたしか
な答えを書いていった方がよかったんだ。七
問しか答えが書けなかったとしても、正解だ
ったらその方がいいものね。

 「常識のことわざ探偵団」(国松俊英著 
フォア文庫)より