1.急がばまわれ
2. 【1】いそぐ時には、少しくらい
危険があっても、近道をとおりたくなる。けれどそれが
失敗する
原因になる。だから、時間がかかってめんどうでも、安全な道やたしかな
方法を
選んだ方が、けっきょくは
得なことになるんだ。
3. 【2】ことわざのもとになったのは、平安時代に
源俊頼が作ったこんな和歌だ。
4.
武士の
矢馳の船ははやくとも急がばまわれ
瀬田の長橋
5. 歌の意味は、
大津へいくのには、びわ湖の岸の
矢馳からでる
舟に乗っていけばはやい。でもいそぐのなら
舟にのらず、湖岸の道をとおり
瀬田川の橋を
渡って
陸の道をいった方がいいよ、というんだ。
6. 【3】
矢馳というのは地名で、矢橋とも書く。
滋賀県
草津市のびわ湖の岸のあたりのことだ。古くからここには、
大津までの
渡し舟の
便があったんだ。
陸の道をいくと、びわ湖の南岸をぐるっとまわり、
瀬田川の長い橋を
渡らなければならない。かなり時間がかかる。【4】それにくらべ、湖上をいけば近道になる。むかいの
大津まで直線
距離でいくから、うんとはやかったんだ。
7. しかし
渡し舟でいくのは、いろいろ
危険があった。ちょっと強い風が
吹いたりすると、流されてなかなか
大津につけない。【5】また、この
舟は小さなものだったから、大きな波にかんたんに転ぷくすることもあったんだ。いそぐので
舟に乗ったのに、
大津につけずひき返したり、
舟がひっくりかえっておぼれ死んだり、こわい目にあう人がたくさんいた。
8. 【6】この歌の中で「急がばまわれ」のことばだけがひろまっていき、ことわざとしていまものこっているんだ。これは、さいしょは道についていったんだけど、その後は生活のいろんなことについてもいわれるようになったんだ。
9. 【7】だれでも、少しでもはやくしごとをすませたいから、ついはやくできる
方法をやろうとする。でもいそいでやろうとすれば、はや∵くやることばかりに気をとられて、一つ一つたしかめたり、ゆっくり考えたりしない。【8】その
結果、やり方をまちがえたり、とんでもない
失敗をすることになるんだ。
10. たとえば、テストがそうだね。ぼくは、学生の時に「急がばまわれ」のことわざをわすれていたので、なん度も
失敗したよ。【9】テストを時間内にはやくやろうといそぐあまり、問題をしっかり読まずに答えを書くことがあったんだ。はやくできて
得意になって
提出したのはいいけど、十問のうち正しい答えははんぶんもなかった。【0】それなら、問題をていねいに読んで、よく考えてたしかな答えを書いていった方がよかったんだ。七問しか答えが書けなかったとしても、
正解だったらその方がいいものね。
11. 「
常識のことわざ
探偵団」(
国松俊英著 フォア文庫)より