a 長文 2.2週 00e
 「すまないなあ。おれの給料きゅうりょうがやすいから、おまえにくろうをかけるなあ。」
 「いいえ、そんなこと。」
 「ぬう機械きかいができたら、ふくをつくるのも、ずいぶんらくになるだろうな。」
 「ええ、そうすれば、こんなにかたもこらないでしょうし。それにねえ、あなた。もし、そんな機械きかい発明はつめいしたひとは、大金持ちおおがねも になれるんですって。」
 「ふーん、じゃあ、ひとつ、そいつを発明はつめいしてみるか。」
 ハウは、じょうだんでなく、そういいました。
 びんぼうのために、学校がっこうへいけなかったハウは、もう、びんぼうはこりごりでした。つまや子どもこ  には、らくをさせてやりたいとおもいました。
 ハウは、さっそく、機械きかい研究けんきゅうに、とりかかりました。
 しかし、ちょっとかんがえたのでは、かんたんにできそうでしたが、どうしてどうして、なかなかむずかしいことでした。
 またたくまになんねんもたちました。だが、ハウのミシンは、できませんでした。
 ハウは、つとめをやめて、ミシンの発明はつめいにうちこんでいました。ハウは、あけてもくれても、ミシンのことばかりかんがえました。
 いとのつかいかたや、はりのかたち、はりのうごかしかた……。いろいろ、くふうしてみましたが、なかなか、うまくいきませんでした。
 ハウは、研究けんきゅうにゆきづまって、ぼんやり、つまのはり仕事しごと手もとて  を、ていました。
 「おまえにらくをさせてやろうとおもったのに、かえってびんぼうさせちゃったなあ。」
 「いいのよ。あなたの成功せいこうをしんじているんですもの。」
 「ぼくは、ゆうべ、こんなゆめをたよ。ぼくは、土人どじんにつかまっちゃったんだ。土人どじん酋長しゅうちょうが、はやくミシンをつくれ、つくらないと、ひとつきだぞって、ぼくののまえに、やりをつきつける
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んだよ。」
 「ほほほ、あなたが、いつも、はやくミシンをつくらなければっておもってるから、そんなゆめを見るみ んですわ。」
 「しかも、そのやりのさきにあながあいているんだよ。」
と、ハウはわらいました。ところが、そのわらいが、きゅうにハウのかおからきえたのです。
 「あっ、そうだ!」
 ハウは、仕事場しごとばへとんでいきました。
 ハウはいままで、りょうはしがとがったはりのまんなかに、あなをあけて、いとをとおしていたのです。
 だが、ゆめのなかのやりのはさきのように、はりのさきに、あなをあけたらどうだろうと、かんがえたのです。
 ハウは、さっそくためしてみました。

 (長崎源之助
 「子どもこ  聞かき せるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ
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