a 長文 1.1週 e
一番めの長文は幼長の一~三月のものを再掲しています。
 1夏(なつ)の間(あいだ)、あんなにたくさん見かけ(み  )たカエルは、冬(ふゆ)にはまったく見かけ(み  )なくなります。カメやヘビも、冬(ふゆ)の間(あいだ)は見かけ(み  )ません。しかし、また春(はる)になると、姿(すがた)を現す(あらわ )ようになります。2カエルにしてもヘビにしても、あんなに毛(け)がなくてつるつるの体(からだ)では、さぞ冬(ふゆ)には寒い(さむ )ことでしょう。それに、冬(ふゆ)の間(あいだ)は、エサにする虫(むし)などの生きもの(い   )もとても少なく(すく  )なります。3それでは、こういう生物(せいぶつ)たちは、寒い(さむ )冬(ふゆ)をどうやってすごしているのでしょう。
 じつは、カエルやカメやヘビなどは、冬(ふゆ)の間(あいだ)、冬眠(とうみん)といって、地面(じめん)の中(なか)や池(いけ)の底(そこ)、木(き)の穴(あな)など、比較的(ひかくてき)暖か(あたた )そうで安全(あんぜん)な場所(ばしょ)にかくれて寝(ね)ているのです。4カエルやヘビは変温動物(へんおんどうぶつ)といって、外(そと)の気温(きおん)が下がっ(さ  )てくると、自分(じぶん)の体温(たいおん)も同じ(おな )ように下がっ(さ  )てしまいます。だから、冬(ふゆ)になって気温(きおん)が下がっ(さ  )て活動(かつどう)できなくなると、冬眠(とうみん)してしまうのです。
 5この冬眠(とうみん)の間(あいだ)は、体(からだ)の中(なか)に蓄え(たくわ )たエネルギーを使っ(つか )て生き(い )ていますから、エサを食べる(た  )必要(ひつよう)がありません。息(いき)さえしなくても大丈夫(だいじょうぶ)なものもいるといいますから驚き(おどろ )ます。6息(いき)もせずに生き(い )られるとはちょっと生意気(なまいき)ですね。こうして、まるで死ん(し )だように眠り(ねむ )続け(つづ )、カエルのいなくなった世界(せかい)は静まりかえる(しず     )のです。
 7春(はる)になり、外(そと)が暖かく(あたた  )なってくると、眠っ(ねむ )ているカエルたちの体(からだ)もいっしょに温まり(あたた  )、体温(たいおん)が上がっ(あ  )てきます。すると、カエルたちの体(からだ)は再び(ふたた )活動(かつどう)を始め(はじ )、「ああ、おなかがすいたなあ」と、外(そと)に出(で)てきます。8そのころには、エサたちも冬眠(とうみん)から目覚め(めざ )たり、新しく(あたら  )生まれ(う  )たりしてたくさんいるので、おなかいっぱい食事(しょくじ)をすることができます。
 「眠れる(ねむ  )森(もり)の美女(びじょ)」という、魔法使い(まほうつか )に眠らさ(ねむ  )れたお姫様( ひめさま)の話(はなし)があります。
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9お姫様( ひめさま)は王子(おうじ)様(さま)のキスで長い(なが )眠り(ねむ )から目覚め(めざ )ますが、「眠れる(ねむ  )森(もり)のカエルたち」にとっては、春(はる)の暖かい(あたた  )太陽(たいよう)が、まるで「王子(おうじ)様(さま)のキス」のように思える(おも  )ことでしょう。カエルたちは、太陽(たいよう)の暖か(あたた )さで次々(つぎつぎ)と我(われ)に返る(かえ )のです。0

 言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(τ)
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長文 1.1週 eのつづき
 1昨日(きのう)の土曜日(どようび)に隣(となり)の家(いえ)のサトシがぼくの家(いえ)に遊び(あそ )にきました。サトシにはアリサという名前(なまえ)の妹(いもうと)がいます。アリサとお母さん( かあ  )はバレエの練習(れんしゅう)があるので、サトシはお留守番(るすばん)です。 
 最初(さいしょ)に、ぼくたちはベイブレードで遊び(あそ )ました。2サトシはたくさんのベイを持っ(も )ています。トイザラスに行く(い )といつも売り切れ(う き )になっている珍しい(めずら  )ベイも持っ(も )ています。ベイの数(かず)では負け(ま )ているけど、ぼくは頑張り(がんば )ました。対戦(たいせん)結果(けっか)は引き分け(ひ わ )です。 
 そのあとは、一丁目(ちょうめ)公園(こうえん)に行く(い )ことにしました。3お母さん( かあ  )は、
「今日(きょう)は寒い(さむ )からお家(うち)の中(なか)で遊ん(あそ )だら。」 
と少し(すこ )困っ(こま )た顔(かお)をして言い(い )ました。ぼくは、
「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。行っ(い )てくるね。」 
と、玄関(げんかん)を出(で)ました。外(そと)は寒く(さむ )て、風(かぜ)がぴゅうぴゅう吹い(ふ )ていました。4やっぱり家(いえ)の中(なか)で遊べ(あそ )ばよかったかなあと思い(おも )ながら、ぼくはポケットに手(て)を突っ込み(つ こ )ました。一丁目(ちょうめ)公園(こうえん)には、タケシとシンジがいました。ぼくたちはいっしょになって鬼ごっこ(おに   )をしました。たくさん走り回っ(はし まわ )たのでまるでお風呂(ふろ)上(あが)りのように体(からだ)がぽかぽかになりました。 
 5家(いえ)に帰る(かえ )とちょうど三時(じ)のおやつの時間(じかん)でした。 
「みんなで百(ひゃく)円(えん)ショップに行っ(い )て好き(す )なものを買っ(か )ておいで。」 
と、ぼくのお母さん( かあ  )がお財布(さいふ)を出し(だ )ながら言い(い )ました。サトシとぼくの双子(ふたご)の妹(いもうと)のカスミとヒカリは百(ひゃく)五円(えん)ずつもらいました。ぼくだけ二百(ひゃく)十円(えん)もらいました。6どうしてかというと、お母さん( かあ  )が、
「お母さん( かあ  )の分(ぶん)もひとつ買っ(か )てきてね。」 
と、こっそり言っ(い )たからです。 
 ぼくの家(いえ)を出(で)て坂(さか)を降り(お )ていくと左側(ひだりがわ)に百(ひゃく)円(えん)ショップがあります。ぼくは四個(こ)で百(ひゃく)円(えん)のコーナーで選び(えら )ました。7買っ(か )たものは、どらチョコとジュースとベビースターとあわです。あわはラム
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ネのお菓子( かし)です。それを食べる(た  )と、口(くち)の中(なか)は泡(あわ)だらけになります。まるでモリアオガエルのたまごのようです。サトシもぼくの真似(まね)をしてあわを買い(か )ました。8二人(ふたり)で口(くち)を大きく(おお  )開け(あ )てカスミとヒカリに見せ(み )たら、
「うわあ、まずそう。」 
と逃げ(に )られました。 
「おいしいよなあ。」 
と、ぼくとサトシは顔(かお)を見合わせ(みあ  )て笑い(わら )ました。まだ食べ(た )たことがないから、味(あじ)が分から(わ  )ないのだなあとぼくは思い(おも )ました。9お母さん( かあ  )にはチョコレートのお菓子( かし)を買っ(か )てきてあげました。お母さん( かあ  )は、
「ありがとう。このお菓子( かし)、大好き(だいす )。」 
と喜び(よろこ )ました。ぼくはいいものを買っ(か )たなと嬉しく(うれ  )なりました。楽しい(たの  )土曜日(どようび)でした。0

(言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい) ω)
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a 長文 1.2週 e
 1月(つき)の青い(あお )ばん、アフリカの草原(そうげん)で、ライオンに三つ子(み ご)がうまれました。まるまるふとってククククとよくわらうのがコロン、ちっともわらわないのがムウ、ちょっとばかりげんきがないのがショボン……となづけられて、いくにちかすぎました。2ちかくにお花( はな)ばたけがあるせいか、花(はな)のさいているときにうまれたせいか、みんなひどく花(はな)ずきでした。三びきは、よく、ちかくの森(もり)の、花(はな)ばたけにねそべりにゆきました。
 3さてまた月(つき)の青い(あお )ばん、三びきが花(はな)のあいだでふざけていると、かあさんライオンがやってきて、コロンをよびました。
――コロンちゃん、いっしょにいらっしゃい。
 4うん、とコロンはおきあがり、クローバーを、ちょいとあたまにつけて、かあさんライオンについてゆきました。
 森(もり)にはいると、かあさんライオンはいいました。
――きょうはね、ケモノのつかまえかたをおしえてあげるの。5よくみてらっしゃいよ。そういうと、じっとからだをひくめて、しのび足(あし)で、ツツツツツウと、すすみます。おや、ウサギがいるぞ。
――ここでね、ウンといきをすいこんで、ひととびにゆくのよ。
 6かあさんは、ささやくようにコロンにおしえると、ウンと、いきをすいこみます。
 はなのあなが、三かくにひろがり、ひげがヒョロリとたれてしまって、とってもへんなかおです。みたとたん、コロンはクククククと、わらいだしてしまいました。7ウサギはもちろん、ぴょんと、ひととびでサヨナラしてしまいました。
――だめじゃないの、コロンちゃん。
――だって、さっきのかあさんのかお、あんまりおかしかったんだもの。それに、あのウサギのあわてかたったら!
 8そしてまた、ククククなのです。かあさんライオンは、あきらめてかえりました。
 つぎのよるは、ムウでした。
――ムウちゃん、いっしょにいらっしゃい。
 ムウは、だまってついてゆきました。森(もり)にはいると、かあさんライオンはいいました。
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――9きょうはね、ケモノのつかまえかたをおしえてあげるの。よくみてらっしゃいよ。
 そういうと、からだをしずめて、スススススと、しのび足(あし)ですすみます。おや、あそこにリスがいるわ!――ここでね、ウオーッってほえるの。0そしたら、リスはびっくりして、ちぢみあがっちゃうのよ。そこを、つかまえるの。
 かあさんは、そうムウにささやくと、あごがはずれそうに大きく(おお  )口(くち)をひらいて、ウオーッとほえました。
 もちろん、リスはビリリリと、でんきがかかったみたいになってうごけません。
――さあ、おたべ。
 かあさんライオンがムウにいいましたが、ムウはこたえません。じっと、リスをみつめています。そして、「さあ」と、もういちどかあさんがすすめると、ムムウと、かおをしかめるのです。かあさんはびっくりして、ムウをみました。
 へんじなし、なのです。
――どうしたの?
 それもそのはず、ムウもうごけなかったのです!
――あらあら、ムウちゃんまで!
 ごめん、ごめん。
 かあさんライオンは、あわててムウのしっぽを、ちょいとおしてやると、ムウはやっとうごけましたが、リスのほうもそのすきに、ひととびで木(き)にかけのぼりました。

「ぽけっとにいっぱい」『三びきのライオンの子(こ)』より(今江(いまえ) 祥智(よしとも))フォア文庫(ぶんこ)
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a 長文 1.3週 e
 1ひろいせかいにでられたうれしさに、ユラは、からだじゅうウーンとのばして、花(はな)のひらくようにひらいたのです。ところがね、おわんのようにまるいぼうしのかわりに、ユラのは四角(しかく)、まっ四角(しかく)なのです。2ユラは、となりにうかんでいるなかまにたずねました。
――ねえきみ、ぼく、まるくならないんだよ。
 するとそのクラゲは、ユラをながめて、おおごえをあげました。
――おやおや、ほんとだ。おーい、みんな、みてごらん。へんなのがいるぜ。
 3たちまち、なん十ぴきものクラゲたちが、ゆらゆらゆらとなみにのってきて、ユラをかこみました。
――へんなの。
――まるくないぜ。
――ぼくらとちがってらあ。
――クラゲじゃないわ。
 ユラぼうやは、びっくりしました。
4――ちがうよ、ぼく、クラゲだよ。ほら、足(あし)も手(て)もみんなとおなじだけあるし、いろもこえも、おなじじゃないの。
――だって、まるくないぜ。
――四角い(しかく )クラゲなんてみたことないや。
 そこでみんなこえをそろえて、アッハッハとわらうのです。
 5ユラはもう、なにもいえなくなり、そのまま海(うみ)のあおいろのなかにとけてしまいたいとおもいました。あぶくのように、シュンときえたほうがいいなとさえおもいました。けれど、どちらもできぬこと。6ユラはだまって、なかまからはなれました。そして、ちいさななみ、大きな(おお  )なみにゆられながら、その夜(よる)は、ひとりでねむりました。
 あくるあさから、ユラはいっしょうけんめいに、じぶんのなかまをたずねてまわりました。
 7まず、イカのところでききました。
――ね、ぼく、あんたのなかまなの?
――じょうだんじゃなぃ。四角い(しかく )イカなんているものか。イカは三角(さんかく)にきまってる。一角(いっかく)おおいよ。それに、きみは、ぼくみたいにはやくおよげないじゃないか。
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 8そういうとイカは、ロケットみたいにシュウッと水(みず)をふくむと、さっとおよいでいってしまいました。ふうん、と、ぼうやはまたゆられてゆきます。
 こんどはタコ。
――ね、ぼく、あんたのなかまかしら?
9――なんだって。そんな白い(しろ )タコなんているかい。それに足(あし)のかずだってちがうし、だいいち、このイボイボがないじゃないか。
 そういうと、タ()コはプウウッとスミをふっかけて、いってしまいました。
 0だめかなあ……ぼうやはスミをふきとりながら、またゆらゆらとはなれてゆきます。
 つぎはナマコ。
――ね、ぼく、あんたのなかまだね。
――フフフフ、きみ、足(あし)が長(なが)すぎますよ。ほら、ぼくらは、もっとずんぐりしてるんだよ。
 そういいながら、ヨタヨタと、からだじゅうであるいていってしまいました。
 クラゲのぼうやは、しかたなく、もとのところへもどるほかはありませんでした。
 けれど、みんなもなかまにいれてくれません。ユラはひとりぽつんとはなれて、ゆらゆら、ゆられていました。
 ユラは、できるだけまるくなろうとやってみました。ぜんぶの足(あし)をつっぱって、あたまをまるくおしてみたり、プーンと、おもいきりふくれてみたり、岩(いわ)にかどっこをゴツンとぶつけてみたり……でも、どうしても、まるくならないのです。その夜(よる)も青い(あお )三日月(みかづき)が、空(そら)にかかっていました。
 ひとりぼっちのユラは、三日月(みかづき)にきいてみようとおもいました。
――ね、お月(つき)さま、ぼく、どうしてまるくならないのかしら……。
 お月(つき)さまは、なにもこたえない。ただ、きれいにしずかに光っ(ひか )ています。でも、あおい光(ひかり)をあびていると、ユラはとてもなつかしい気もち(き  )になって、ひとりでに、おいのりしたくなるのでした。

「ぽけっとにいっぱい」『四角い(しかく )クラゲの子(こ)』より(今江(いまえ) 祥智(よしとも))フォア文庫(ぶんこ)
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a 長文 1.4週 e
 脳(のう)は、人間(にんげん)の体(からだ)の中(なか)で最も(もっと )エネルギーを必要(ひつよう)とする器官(きかん)です。脳(のう)の重(おも)さは、体(からだ)全体(ぜんたい)の重(おも)さのおよそ二パーセントを占める(し  )と言わ(い )れています。たとえば、体重(たいじゅう)が五十キログラムの人間(にんげん)の脳(のう)の重(おも)さは、一キログラムになるというわけです。それほどの重(おも)さを占め(し )ているわけではありませんが、この脳(のう)は大変(たいへん)な食いしん坊(く   ぼう)です。人間(にんげん)が必要(ひつよう)とする全(ぜん)エネルギーのうち、二十パーセントもが脳(のう)に使わ(つか )れています。しかも、ただの大食漢(たいしょくかん)ではありません。なかなかのグルメなのです。どうしてかというと、脳(のう)がエネルギー源(げん)として取り込む(と こ )のは、ブドウ糖(   とう)だけだからです。また、脳(のう)は余分(よぶん)なエネルギーを蓄え(たくわ )ておくことができないので、絶えず(た  )ブドウ糖(   とう)を補給(ほきゅう)し続ける(つづ  )必要(ひつよう)があります。
 ご飯( はん)やパンなどの穀類(こくるい)、ジャガイモやサツマイモなどのイモ類(るい)など、炭水化物(たんすいかぶつ)と呼ば(よ )れるものはブドウ糖(   とう)のもとになります。体(からだ)を動かす(うご  )ためや成長(せいちょう)のためだけでなく、脳(のう)の働き(はたら )を活発(かっぱつ)にするためにも、きちんと食事(しょくじ)を取る(と )ことは大切(たいせつ)だと言え(い )ます。眠り(ねむ )から覚め(さ )、栄養(えいよう)不足(ぶそく)の脳(のう)にとって、とりわけ朝食(ちょうしょく)は最高(さいこう)のご馳走( ちそう)です。
 こんな実験(じっけん)結果(けっか)があります。ラットを迷路(めいろ)に放り込む(ほう こ )と、まず一目散(いちもくさん)に走り出し(はし だ )ます。しかし、人間(にんげん)のように高度(こうど)な知能(ちのう)を持た(も )ないラットのことですから、すぐに道(みち)に迷い(まよ )、あがき始め(はじ )ます。あがいているラットの脳(のう)内(ない)は、どんな状態(じょうたい)になっているのでしょう。脳(のう)の中(なか)には様々(さまざま)な働き(はたら )をする場所(ばしょ)があり、それぞれが自分(じぶん)の役目(やくめ)を果たす(は  )ために働い(はたら )ています。迷路(めいろ)は空間(くうかん)を認識(にんしき)する能力(のうりょく)を必要(ひつよう)とします。迷路(めいろ)に入れ(い )られたラットの脳(のう)内(ない)の空間(くうかん)記憶(きおく)を司る(つかさど )部分(ぶぶん)のブドウ糖(   とう)の値(あたい)は、通常(つうじょう)よりも大きく(おお  )落ち込ん(お こ )でいたそうです。それだけ脳(のう)がエネルギーを使っ(つか )たということになります。注射(ちゅうしゃ)によってブドウ糖(   とう)を補給(ほきゅう)してあげたところ、迷路(めいろ)抜け(ぬ )の成績(せいせき)が上がっ(あ  )たという結果(けっか)も得(え)られました。疲れ(つか )きった脳(のう)が、ブドウ糖(   とう)というエネルギーを補給(ほきゅう)したおかげで見事(みごと)に元気(げんき)を取り戻し(と もど )たのです。
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 歩く(ある )、走る(はし )という大きな(おお  )動作(どうさ)を伴う(ともな )体(からだ)の動き(うご )と比べ(くら )てみると、脳(のう)の仕事(しごと)は、はっきりとは目(め)に見え(み )ません。ですから、そんなにも多く(おお )のエネルギーを必要(ひつよう)とするとは想像(そうぞう)できないでしょう。しかし、多く(おお )のエネルギーが必要(ひつよう)だということは、それだけ重要(じゅうよう)な働き(はたら )をしているからにほかなりません。脳(のう)は大変(たいへん)な働き者(はたら もの)です。私(わたし)たちが眠っ(ねむ )ているあいだでさえひとときも休ま(やす )ずに働き(はたら )続け(つづ )ます。脳(のう)の中(なか)は、神経(しんけい)細胞(さいぼう)がぎっしりとつまっていて、体(からだ)のすみずみまで命令(めいれい)を出し(だ )ています。心臓(しんぞう)の動き(うご )や呼吸(こきゅう)でさえ、脳(のう)が命令(めいれい)を出し(だ )ているおかげで一時(いっとき)も休ま(やす )ずに続け(つづ )られているのです。
「Oh! No.()(オー、ノー)少し(すこ )休み(やす )たいよ。」
 そう思う(おも )こともあるかも知れ(し )ません。それでも、脳(のう)は働き(はたら )続け(つづ )ます。

 言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(ω)
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a 長文 2.1週 e
一番めの長文は幼長の一~三月のものを再掲しています。
 1いまから五千(せん)年(ねん)くらい昔(むかし)のことです。文明(ぶんめい)がさかえはじめたころの人々(ひとびと)は、夜空(よぞら)を見上げ(みあ )て、宇宙(うちゅう)というのは、自分(じぶん)たちの住ん(す )でいるこの地球(ちきゅう)だけだと思っ(おも )ていました。2きらめく星(ほし)は、空(そら)という高い(たか )天井(てんじょう)にはりついているもので、太陽(たいよう)も月(つき)も、空(そら)にはりついて動い(うご )て行き(い )、しずむと地面(じめん)の下(した)を通っ(とお )てまた東(ひがし)にいくと考え(かんが )ていたのです。
 ギリシャ時代(じだい)になって、宇宙(うちゅう)のしくみが考え(かんが )られるようになりました。3二世紀(せいき)頃(ごろ)に活躍(かつやく)した天文学(てんもんがく)者(しゃ)プトレマイオスは、天動説(てんどうせつ)という考え(かんが )を唱え(とな )ました。それは、地球(ちきゅう)が宇宙(うちゅう)の中心(ちゅうしん)にあって、そのまわりを太陽(たいよう)や月(つき)や惑星(わくせい)がぐるぐる回り(まわ )、いちばん外側(そとがわ)に恒星(こうせい)があるという考え方(かんが かた)です。4まだ、望遠鏡(ぼうえんきょう)も発明(はつめい)されていない時代(じだい)のこの考え方(かんが かた)は、その後(  ご)千(せん)年(ねん)もの間(あいだ)人々(ひとびと)に信じ(しん )られました。
 十六世紀(せいき)になって、地球(ちきゅう)が宇宙(うちゅう)の中心(ちゅうしん)という考え方(かんが かた)に異議(いぎ)を唱え(とな )たのは、ポーランドの天文学(てんもんがく)者(しゃ)コペルニクスでした。5コペルニクスの考え方(かんが かた)は、宇宙(うちゅう)の中心(ちゅうしん)は太陽(たいよう)で、地球(ちきゅう)と惑星(わくせい)は太陽(たいよう)のまわりを円形(えんけい)の軌道(きどう)にそって回っ(まわ )ているというものでした。地球(ちきゅう)の方(ほう)が動い(うご )ていると考え(かんが )られたことから、地動説(ちどうせつ)と呼ば(よ )れています。
 6はじめて望遠鏡(ぼうえんきょう)を使っ(つか )て星(ほし)を見(み)たのは十七世紀(せいき)、イタリアのガリレオ・ガリレイでした。ガリレオは望遠鏡(ぼうえんきょう)によって、月(つき)のクレーターや太陽(たいよう)の黒点(こくてん)などをつぎつぎと発見(はっけん)しました。
 ニュートンが「万有引力(ばんゆういんりょく)の法則(ほうそく)」を発見(はっけん)すると、惑星(わくせい)の動き(うご )はもっと正確(せいかく)にわかるようになりました。7万有引力(ばんゆういんりょく)の法則(ほうそく)では、すべてのものはたがいに引き合っ(ひ あ )ていると考え(かんが )られました。そこで、月(つき)と地球(ちきゅう)、地球(ちきゅう)と太陽(たいよう)もたがいに引か(ひ )れ合っ(あ )ていて、まわりを回る(まわ )ことができるとしたのです。しかし、その時(とき)もまだ、宇宙(うちゅう)の中心(ちゅうしん)は太陽(たいよう)で、宇宙(うちゅう)とは太陽系(たいようけい)のことでした。
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 8十八世紀(せいき)になり、イギリスの天文学(てんもんがく)者(しゃ)ハーシェルによって、宇宙(うちゅう)は恒星(こうせい)の世界(せかい)までひろがり、銀河系(ぎんがけい)というものがわかるようになってきました。私(わたし)たちの地球(ちきゅう)の位置(いち)が、銀河系(ぎんがけい)の中(なか)のひとつになったのです。
 9二十世紀(せいき)に入る(はい )と、すぐれた技術(ぎじゅつ)の望遠鏡(ぼうえんきょう)が次々(つぎつぎ)と開発(かいはつ)され、恒星(こうせい)までの距離(きょり)を測る(はか )ことができるほど高性能(こうせいのう)になりました。この観測(かんそく)のおかげで、銀河系(ぎんがけい)の大き(おお )さも、銀河系(ぎんがけい)の中(なか)のさまざまな天体(てんたい)のことも、そして銀河系(ぎんがけい)以外(いがい)の銀河(ぎんが)、さらに宇宙(うちゅう)全体(ぜんたい)のすがたまでもがわかるようになってきたのです。
 0人間(にんげん)の見る(み )世界(せかい)は、どんどん広がっ(ひろ  )ていきます。やがて宇宙(うちゅう)の大き(おお )さも超え(こ )て広がっ(ひろ  )ていくのかもしれません。 

 言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(μ)
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長文 2.1週 eのつづき
 1二月(にがつ)三日(みっか)は節分(せつぶん)です。ぼくたちは豆(まめ)まきをしました。 
「鬼(おに)は外(そと)、福(ふく)は内(うち)。」 
と、元気(げんき)よく大声(おおごえ)をあげました。パラパラと豆(まめ)が散らばり(ち   )ます。おもしろくてどんどん投げ(な )ました。ベランダから外(そと)に投げる(な  )ときは、ちょっとだけ声(こえ)を小さく(ちい  )しました。2どうしてかというと、夜(よる)なので大声(おおごえ)をあげると近所(きんじょ)迷惑(めいわく)になるからです。 
「豆(まめ)の片付け(かたづ )はチップにやらせるからじゃんじゃんまいていいよ。」 
と、お母さん( かあ  )が笑い(わら )ながら言い(い )ました。チップというのはぼくの家(いえ)の犬(いぬ)です。3まいた豆(まめ)は食いしんぼう(く     )のチップがきれいに食べ(た )てしまいます。 
 豆(まめ)まきのあと、ぼくがお父さん( とう  )とお母さん( かあ  )に年(とし)の数(かず)だけ豆(まめ)を配り(くば )ました。 
「お父さん( とう  )は三十一歳(さい)だから三十一()個(こ)ね。はい。」 
そう言っ(い )てお父さん( とう  )の前(まえ)に豆(まめ)を置き(お )ました。4お母さん( かあ  )には、 
「はい、お母さん( かあ  )は三十四個(こ)ね。」 
と、三十四個(こ)数え(かぞ )ました。 
「いいなあ、こんなにいっぱい。」 
と、ぼくがうらやましそうに言う(い )と、
「いいでしょう。」 
と、お母さん( かあ  )はにっこりしました。5お母さん( かあ  )が、 
「年(とし)の数(かず)だけとって食べる(た  )んだよ。」 
と言う(い )ので、ぼくと弟(おとうと)たちは自分(じぶん)で豆(まめ)を取り(と )ました。ぼくは六個(こ)でリョウタは五個(こ)。キョウタは四個(こ)のはずでした。でも、ぼくはキョウタが四個(こ)以上(いじょう)口(くち)に入れ(い )ているのを見(み)てしまいました。6キョウタのやつ、それじゃあぼくより年上(としうえ)じゃないかと思い(おも )ました。リョウタはちゃんと五個(こ)だけ食べ(た )ていました。ぼくも六個(こ)だけ食べ(た )ました。ぼくとリョウタは真面目(まじめ)だなと思い(おも )ました。
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 みんなに配っ(くば )てからもまだ豆(まめ)は残り(のこ )ました。7残っ(のこ )た豆(まめ)はぼくが作っ(つく )た紙(かみ)の箱(はこ)に入れ(い )てテーブルの上(うえ)に置い(お )ておきました。その豆(まめ)を、お父さん( とう  )が食べ(た )ていました。次(つぎ)から次(つぎ)へと豆(まめ)を口(くち)に放り込ん(ほう こ )でいます。まるで豆(まめ)の方(ほう)からお父さん( とう  )の口(くち)にふっ飛ん(  と )でくるみたいです。8おもしろそうなのでぼくも真似(まね)してばくばくと食べ(た )てしまいました。だからぼくも年(とし)の数(かず)よりも食べ(た )てしまいました。どうして年(とし)の数(かず)だけ食べる(た  )のかなあと不思議(ふしぎ)に思い(おも )ました。豆(まめ)がきらいな人(ひと)はどうするのかなと心配(しんぱい)になります。9年(とし)の数(かず)だけ食べる(た  )のじゃなくて、はじめから好き(す )なだけ食べる(た  )ことにしたらいいと思い(おも )ます。
 ふと、おじいちゃんとおばあちゃんの顔(かお)を思い出し(おも だ )ました。 
「じいとばあは六十個(こ)も豆(まめ)を食べ(た )たのかな。」 
と、お母さん( かあ  )に聞い(き )てみました。0お母さん( かあ  )は、
「さあ、どうかな。今度(こんど)、電話(でんわ)で聞い(き )てみたらいいんじゃない。」 
と言っ(い )て笑い(わら )ました。 

(原作(げんさく) しゅんのすけ 編集(へんしゅう) 言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい) ω)
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a 長文 2.2週 e
 1ところがあくる朝(あさ)、かあさんゾウが目(め)をさまして、おどろきました。バオバブがいなくて、そのかわり、ぜんぜんしらないゾウが、よこにねむっているのです。かあさんゾウは、あわててとうさんゾウをおこしました。
 2目(め)をこすりこすり、そのゾウをみてとうさんゾウもおおあわて。それにしても、なんというあつかましいゾウでしょう!
 いや、それよりも、バオバブは、いったいどこへいったのでしょう。
 3ふたりはますますあわてて、そのゾウのおしりを、おもいきりけっとばしてやりました。もしかすると、その下じき(した  )になっているかもしれないではありませんか。かわいそうなバオバブちゃん!
 4けれど、そのゾウはのんびりと目(め)をひらき、
――いたいなあ、とうさん……
 というのです。
――とうさんだって!
 とうさんゾウは、あきれてしまいました。こんな大きな(おお  )ゾウに、とうさんなんてよばれるおぼえはない。5すると、かあさんゾウが、とんきょうな声(こえ)をあげました。
――まああ、とうさん、それはバオバブぼうやですよ!
――バオバブぼうやだって……。
 どうみても、ぼうやなんてからだつきではないのです。とうさんゾウより大きい(おお  )くらいなのですから。
6――ほら、あの目の下(め した)のなきぼくろ……
 さすがはかあさんです。ちゃんと、むすこのとくちょうをおぼえていました。
――そうですよ、ぼく、バオバブですよ。 とうさんたら、じぶんのむすこをみわすれるなんて、ひどいなあ。
 7そんなことをいったって、この大きな(おお  )ゾウを、どうしてきのうのかわいいバオバブぼうやだとおもえるでしょう。とうさんゾウは、じぶんの耳(みみ)をひっぱってみました。
――まだあんなことをやってる。ゆめじゃありませんよォ。
 8バオバブが、ふふくそうにいいました。
――ぼくだといったら、ぼくなんです。ぼくは、大きく(おお  )なるのがはやいだけなんですよ。
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 はやいといっても、はやすぎる、ひとばんでわしより大きく(おお  )なるなんてことがあるものか……と、とうさんゾウは、まだほんとうにできないようすです。
 9しかし、そういうあいだにも、 バオバブは、どうやらすこしずつそだってゆくようなのです。とうさんゾウは、すこしずつ背(せ)のたかくなってゆくむすこをみあげなければなりませんでした。目(め)のまえのできごとです。ほんとうにするほかはありません。

 0そのうちに、バオバブはとうさんの二ばいほどの大き(おお )さにもなってしまいました。ガスいりの風船(ふうせん)でなしに、なかみもちゃんとつまったほんもののゾウです。とうさんだといっても、きみわるがらずにはいられませんでした。このぶんでいったら、あしたは、どうなることでしょう。
 とうさんゾウとかあさんゾウはかおをみあわせるばかりでした。
 
 バオバブは、そのちょうしでどんどん大きく(おお  )なりはじめました。
 とうさんゾウは、むすこのかおをみるのに、えらくなんぎしなければなりませんでした。もともとくびのないゾウのこと、みあげるのはにがてなのです。
 でも、そんなことはまだよかったのです。こまったことに、バオバブのからだが大きく(おお  )なるにつれて、バオバブがたべるものも、ずんずんふえてゆくのです。みるみるうちに、あたりのたべものは、きれいさっぱりなくなってしまいました。これでは、ゾウがものすごいいきおいでふえてゆくようなものでした。とうさんゾウは、いそいでとしよりたちのところへしらせにいきました。

 話(はなし)をきいてほんきにしなかったとしよりたちも、バオバブをみると、たまげてしまいました。これが、ついこのあいだ、ほそいはなを風(かぜ)にふかれて目(め)をほそめていたゾウのあかんぼうでしょうか。
 としよりたちは、イヌがウマをみあげるようにバオバブをみあげなければならないので、すっかりあわててしまいました。そして、バオバブのたべっぷりをみて、もっとあわてました。これでは、いくらたべものがあっても、たりなくなってしまう。たいへんなゾウをかかえこんだものです。
「ぽけっとにいっぱい」より(今江(いまえ) 祥智(よしとも))フォア文庫(ぶんこ)
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a 長文 2.3週 e
 1すごくきれいね! トトが、かあさんをふりむいていいました。
 森(もり)の秋(あき)。森(もり)はきんいろとべにいろの色紙(いろがみ)細工(ざいく)です。もっと、あっちへいこう、――トトは、かあさんにせがみました。あぶないわ。いまは、にんげんが山(やま)の中(なか)をあるきまわるときなのよ。2かあさんがとめました。だってこんなにきれいなんだもの。トトはピョコピョコ、シカのよこっとびでかけだしました。そして谷(たに)まへの道(みち)にでたとたん、
――おッ!
 たちすくんだのはトト。3たちどまってさっと鉄砲(てっぽう)をかまえたのはにんげんです。わかいりょうしです。かあさんが、ひととびでトトのよこにならびました。そして頭(あたま)で、トトをぐいと、おしていいます。トト、おにげ! トトはにげない。4トトは、とうさんのことをおもいだします。これがとうさんをいなくしちまったにんげんか! トトは夏(なつ)にあったポロをおもいだします。ゾクッとからだじゅうをむしゃぶるいがはしり、トトは頭(あたま)をぐっとさげ、するどい目(め)つきで、りょうしをにらみつけました。5トト! かあさんが、またおします。けれどトトは、けんめいです。ポロとおなじかまえで、さっととびかかろうとしたとたん、
――あっはっは!
 にんげんがわらいました。
――うてねえな、おまえは……。
 6そのわかいりょうしは、鉄砲(てっぽう)のつつさきをあげていいました。
――そのちびさんが、かあさんをまもろうってんだからな。
 トトはにんげんのいってることばは、わからない。ただ、かあさんがもうおさないので、きけんがさったことは、わかりました。
7――おれにゃ、うてねえよ。
 りょうしは白い(しろ )歯(は)をみせて、かあさんに話しかける(はな    )ようにいいました。
――こんなきれいな目(め)のこジカは、ころせねえ。
 かあさんはトトに、ぴったりよりそいました。
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8トトはきゅうにぐったりして、そこへすわりこみたくなりました。そのとき、にんげんが、どなるようにいいました。
――おい、早い(はや )とこにげてくれよ! また気(き)がかわるかもしれないんだぜ。
 かあさんが、ぐいとトトをおしました。9こんどはトトもひととびです。あかるい栗色(くりいろ)の二つのてんが森(もり)の中(なか)にきえたとき、りょうしは鉄砲(てっぽう)をかまえて空(そら)にむけてうちました。
 グァアン! ……赤(あか)と黄(き)のかれはが、パラパラと、りょうしにふりかかりました。0

「ぽけっとにいっぱい」『森(もり)のシカ、トト』より(今江(いまえ) 祥智(よしとも))フォア文庫(ぶんこ)
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a 長文 2.4週 e
 宮崎(みやざき)県(けん)の幸島(こうじま)というところにいる野性(やせい)のサルのむれは、人間(にんげん)がまいてやるサツマイモを海(うみ)の波(なみ)であらって、塩水(しおみず)の味つけ(あじ  )をして食べる(た  )ことで有名(ゆうめい)です。 
 そのころ、日本(にっぽん)ではまだあまりサルの研究(けんきゅう)をする人(ひと)がいませんでした。しかし、サルが大好き(だいす )だった京都大学(きょうとだいがく)の今西(いまにし)錦司(きんじ)さんたちは、幸島(こうじま)のサルを観察(かんさつ)したくてやってきたのでした。ところが幸島(こうじま)のサルは、猟(りょう)で狩ら(か )れたことがあったために、人間(にんげん)をとてもこわがっていました。そこで京都大学(きょうとだいがく)の人(ひと)たちは、サルを安心(あんしん)させようと、サツマイモをまいてやりました。そのサツマイモを、サルはあらって食べる(た  )ようになったのです。それまで外国(がいこく)では、サルの研究(けんきゅう)をするとき、えさをまいてやるということはしていませんでした。 
 そのほかにも、外国(がいこく)の人(ひと)がやっていないことを、この日本(にっぽん)の若い(わか )研究者(けんきゅうしゃ)たちはしました。むれのサルに、一匹一匹(いっぴきいっぴき)名前(なまえ)をつけて観察(かんさつ)したのです。たとえば、こわいボスザルには「カミナリ」、わかくて頭(あたま)のいいオスザルには「ヒヨシマル」といったぐあいです。
 日本(にっぽん)での研究(けんきゅう)になれてくると、京都大学(きょうとだいがく)の人(ひと)たちは、アフリカに行っ(い )てゴリラやチンパンジーの研究(けんきゅう)もするようになりました。 
 そして、研究(けんきゅう)したことを国際(こくさい)会議(かいぎ)で発表(はっぴょう)しましたが、それを聞い(き )て世界(せかい)のサル学者(がくしゃ)たちはたいへんおどろきました。日本(にっぽん)で、こんなにりっぱなサルの研究(けんきゅう)がされていたとは思っ(おも )ていなかったのです。日本(にっぽん)のサルの研究(けんきゅう)がいちばん進ん(すす )でいる、と世界(せかい)のサル学者(がくしゃ)たちは感心(かんしん)しました。そんな世界(せかい)のサル学者(がくしゃ)たちが最も(もっと )驚い(おどろ )たのが、日本人(にっぽんじん)がサルたちに名前(なまえ)をつけていたことなのでした。 
 世界(せかい)の学者(がくしゃ)たちは、サルに番号(ばんごう)しかつけていませんでした。それに、サルの顔(かお)や性格(せいかく)が一匹一匹(いっぴきいっぴき)ちがうことにも気がつい(き   )ていなかったのです。
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 西洋(せいよう)の人(ひと)は、人間(にんげん)と動物(どうぶつ)はまったくちがうものだと、はっきりわけて考え(かんが )ていました。けれど、日本人(にっぽんじん)は昔(むかし)から、人間(にんげん)と動物(どうぶつ)とはあまり変わら(か  )ないものだという考え方(かんが かた)だったのです。サルもタヌキもキツネも、日本人(にっぽんじん)にとっては同じ(おな )村(むら)の仲間(なかま)のようなものでした。だから、今(いま)の時代(じだい)になっても、若い(わか )研究(けんきゅう)者(しゃ)はごく自然(しぜん)に、サルになまえをつけたのでした。サルを番号(ばんごう)でよぶことのほうが、むしろやりにくかったのです。
 最初(さいしょ)のころ、世界(せかい)の学者(がくしゃ)たちは、日本人(にっぽんじん)がサルに近い(ちか )からそういうことができるのだと考え(かんが )ていました。しかし、今(いま)では、世界中(せかいじゅう)のサルの研究者(けんきゅうしゃ)たちは、この日本(にっぽん)の方法(ほうほう)を使っ(つか )て、サルたちに名前(なまえ)をつけて研究(けんきゅう)するようになっています。そのほうが、サルたちの社会(しゃかい)や生活(せいかつ)について、よく理解(りかい)できることがわかったからです。

 言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(λ)
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a 長文 3.1週 e
一番めの長文は幼長の一~三月のものを再掲しています。
 1夏休み(なつやす )の友(とも)といえばやはりカブトムシです。昆虫(こんちゅう)の王様(おうさま)と呼ぶ(よ )にふさわしいその姿(すがた)は、子ども(こ  )たちの視線(しせん)をとらえてはなしません。ペットショップのカブトムシコーナーは、毎年(まいとし)黒山(くろやま)の人だかり(ひと   )ができていますし、採集(さいしゅう)ツアーも登場(とうじょう)するほどです。
 2いかにも丈夫(じょうぶ)そうな姿(すがた)のカブトムシですが、その命(いのち)はそれほど長い(なが )ものではありません。卵(たまご)からかえり、冬(ふゆ)を越し(こ )た幼虫(ようちゅう)は、蛹(さなぎ)へと姿(すがた)を変え(か )、夏(なつ)になると成虫(せいちゅう)、つまりカブトムシへと変身(へんしん)しますが、成虫(せいちゅう)になってからの命(いのち)はおよそ一か月( げつ)ほどといわれています。3ですから、夏休み(なつやす )が終わる(お  )ころは、ちょうどカブトムシの命(いのち)もつきる時期(じき)にあたるのです。クワガタムシも、カブトムシと並ん(なら )で人気(にんき)があります。カブトムシがひと夏(なつ)の命(いのち)なのに対して( たい  )、クワガタムシの場合(ばあい)、種類(しゅるい)によっては越冬(えっとう)できるものもあります。えっとうれしくなってしまうでしょう。
 4大切(たいせつ)に育て(そだ )ていたカブトムシの死(し)は悲しい(かな  )ものですが、死ん(し )でしまったからといってすぐに飼育(しいく)ケースを処分(しょぶん)してはいけません。ケースの中(なか)の腐葉土(ふようど)をそっとのぞいてみましょう。もしかしたら、小さな(ちい  )卵(たまご)が見つかる(み   )かもしれません。5直径(ちょっけい)三ミリ程度(ていど)の白く(しろ )て丸い(まる )卵(たまご)です。孵化(ふか)直前(ちょくぜん)の卵(たまご)は大き(おお )さは五ミリ程度(ていど)になり、色(いろ)も黄色(きいろ)味(み)を帯び(お )てきます。この卵(たまご)をじょうずに育てる(そだ  )ことができたら、大切(たいせつ)にしていたカブトムシの二世(にせい)と対面(たいめん)できる日(ひ)がやってくるのです。
 6卵(たまご)からかえった幼虫(ようちゅう)は、おもに腐葉土(ふようど)を食べ(た )て大きく(おお  )なります。幼虫(ようちゅう)時代(じだい)に摂取(せっしゅ)した栄養(えいよう)が、成虫(せいちゅう)のカブトムシの大き(おお )さを決定(けってい)付(づ)けます。いったん成虫(せいちゅう)になってしまったら、どんなに樹液(じゅえき)を吸っ(す )たところでそれ以上(いじょう)大きく(おお  )はなりません。
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7立派(りっぱ)な大き(おお )さのカブトムシは、幼虫(ようちゅう)時代(じだい)に十分(じゅうぶん)な栄養(えいよう)を取っ(と )ていたのです。もしも人間(にんげん)がカブトムシと同じ(おな )性質(せいしつ)だったらどうでしょう。成人(せいじん)したらいくら食べ(た )ても太ら(ふと )ないわけですから、ダイエットに励ん(はげ )でいる大人(おとな)にとってはなんともうらやましい話(はなし)です。
 8通常(つうじょう)、一匹(ぴき)の幼虫(ようちゅう)が蛹(さなぎ)になるまでに食べる(た  )腐葉土(ふようど)の量(りょう)は、洗面(せんめん)器(き)に山盛り(やまも )一杯(いっぱい)分(ぶん)にもなるそうです。カブトムシは、そんな大量(たいりょう)の腐葉土(ふようど)をかぶっとむしゃむしゃ食べ(た )てしまうのです。さすがに昆虫(こんちゅう)の王者(おうじゃ)、驚い(おどろ )てしまいます。
 9友達(ともだち)に自慢(じまん)できるくらいの大きな(おお  )カブトムシを育てる(そだ  )ためには、良質(りょうしつ)な腐葉土(ふようど)を絶えず(た  )補充(ほじゅう)してあげることが大切(たいせつ)です。また、飼育(しいく)ケースの中(なか)のフンを取り除い(と のぞ )たり、掃除(そうじ)をしたり、根気(こんき)よく世話(せわ)を続ける(つづ  )ことが必要(ひつよう)です。
 0では、カブトムシとクワガタムシでは、どちらが強い(つよ )でしょうか。カブトムシの得意(とくい)技(わざ)は、カブト割り(わ )でしょう。クワガタムシの得意(とくい)技(わざ)は、もちろんクワ固め(かた )です。結果(けっか)は、カブトもクワガタも、お互い( たが )をムシして引き分け(ひ わ )になりました。

 言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(ω)
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長文 3.1週 eのつづき
 1先週(せんしゅう)の日曜日(にちようび)に、お父さん( とう  )と神奈川(かながわ)スケートリンクへ行き(い )ました。私(わたし)はこの日(ひ)をとても楽しみ(たの  )にしていました。テレビでフィギュアスケートを見(み)て、すっかりスケートのファンになりました。フィギュアスケートは絶対(ぜったい)に見逃し(みのが )ません。2お母さん( かあ  )は、 
「どうしてあんなことができるのだろうね。」 
と不思議(ふしぎ)そうです。私(わたし)も不思議(ふしぎ)に思う(おも )けれど、練習(れんしゅう)したらできるかも知れ(し )ないと思っ(おも )ています。だから、一度(いちど)でいいからスケートをやってみたかったのです。 
 3お父さん( とう  )は、学生(がくせい)のころにアイスホッケーをしていたそうです。私(わたし)がスケートに行き(い )たいと言っ(い )たら、 
「お父さん( とう  )が教え(おし )てあげるよ。」 
と、得意(とくい)そうに言い(い )ました。そして、来月(らいげつ)の日曜(にちよう)に行こ(い )うと約束(やくそく)してくれました。 
 4スケート場(じょう)に着く(つ )と、すぐにスケート靴(ぐつ)を借り(か )ました。白い(しろ )靴(くつ)です。わくわくしながら履い(は )てみると、思っ(おも )ていたよりも重く(おも )て窮屈(きゅうくつ)でした。まるでペンギンのような歩き(ある )方(かた)でスケートリンクまで歩き(ある )ました。 
5「よし、滑っ(すべ )てみようか。ゆっくりおいで。」 
と、お父さん( とう  )が氷(こおり)の上(うえ)で待っ(ま )ています。おそるおそる氷(こおり)の上(うえ)に乗っ(の )てみました。お父さん( とう  )の手(て)を握る(にぎ )よりも先(さき)につるんと尻もち(しり  )をついてしまいました。ほんの一瞬(いっしゅん)の出来事(できごと)です。 
6「こんなに滑る(すべ )んだ。ああ、びっくりした。」 
と、照れ(て )ながら言う(い )と、お父さん( とう  )は、 
「すぐに慣れる(な  )さ。お父さん( とう  )と手(て)をつないで練習(れんしゅう)だ。」 
と、私(わたし)を起こし(お  )てくれました。お父さん( とう  )に引っ張ら(ひ ぱ )れながらなんとか一周(いっしゅう)しました。7何(なん)度(ど)も転び(ころ )そうになってドキッとしました。二周(しゅう)目(め)では、少し(すこ )余裕(よゆう)が出(で)てきました。右(みぎ)、左(ひだり)、右(みぎ)、左(ひだり)と
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順番(じゅんばん)に足(あし)を出す(だ )ことも覚え(おぼ )ました。三周(しゅう)目(め)になると、ちょっと楽しく(たの  )なってきました。 
「うまい、うまい。コツがわかってきたみたいだね。」 
と、お父さん( とう  )も褒め(ほ )てくれました。8お父さん( とう  )と手(て)をつないで何(なん)周(しゅう)か滑っ(すべ )たあとで、思い切っ(おも き )て一人(ひとり)だけで滑っ(すべ )てみることにしました。深呼吸(しんこきゅう)をして、 
「できる、できる、絶対(ぜったい)できる。」 
と、自分(じぶん)に言い聞かせ(い き  )ました。スーッと右足(みぎあし)を出し(だ )て、次(つぎ)はスーッと左足(ひだりあし)。とてもゆっくりだけど、私(わたし)の体(からだ)は進み(すす )ました。 
9「すごいぞう。やったな。」 
お父さん( とう  )の声(こえ)が聞こえ(き  )ます。お父さん( とう  )の顔(かお)を見よ(み )うと顔(かお)を上げ(あ )た瞬間(しゅんかん)、また尻もち(しり  )をついてしまいました。でも、痛く(いた )ありません。どうしてかというと滑れ(すべ )たことが嬉しく(うれ  )て痛(いた)さも吹っ飛ん(ふ と )でしまったからです。0その後(  ご)も、何(なん)度(ど)も転び(ころ )ながら練習(れんしゅう)しました。時々(ときどき)お父さん( とう  )がひとりで滑り(すべ )に行く(い )こともあります。お父さん( とう  )はまるでスケート選手(せんしゅ)のようです。私(わたし)は、うっとりしながら眺め(なが )ました。私(わたし)も早く(はや )あんなふうに滑れる(すべ  )ようになりたいです。 

(言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい) ω)
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a 長文 3.2週 e
 1ピピは町(まち)のどうぶつえんに、つれてこられました。こんどあたらしくひらかれたどうぶつえんです。
 園長(えんちょう)さんは大(おお)よろこびで、かかりの二郎(じろう)をよびました。
2――二郎(じろう)くん、白(しろ)クマの子ども(こ  )だよ。きっとみんなよろこぶ。さあ東(ひがし)のC26番(ばん)にいれたまえ。
 東(ひがし)C26のおりは、ペンギンの島(しま)です。白い(しろ )大きな(おお  )氷(こおり)の山(やま)がつくってあり、まわりはプールです。もっとも氷(こおり)はコンクリート製(せい)ですがね。3しかしペンギンは、つぎの捕鯨(ほげい)船(せん)でもってきてもらえることになっているので、まだ一ぴきもいません。
 ピピがC26のおりのうらからかおをだしてその白い(しろ )氷山(ひょうざん)をみたとき、どれほどよろこんだことでしょう! 4おもわず二郎(じろう)の手(て)に鼻(はな)をこすりつけたほどです。さあっとからだじゅうにきれいな水(みず)がはしり、青空(あおぞら)をたべたような気もち(き  )でした。ピピははねまわって氷山(ひょうざん)にとびうつり、さて、首(くび)をペタリとつけて、ねそべってみました。5北(きた)のくにでは、いつもこうして、おひるねをしていたものですからね。
 ところが、オヤオヤオヤ、首(くび)のところがちっともひんやりしないのです。おかしいな、とおもってピピは、もうすこし下(した)へおりてゆき、そこでまたねそべってみました。6やっぱりおなじです。ピピはおきあがって、じっと氷山(ひょうざん)をみあげました。まっさおな夏(なつ)の空(そら)を背(せ)にして、ぐっとつったつなつかしいふるさとの風景(ふうけい)とおなじです。
 おかしいな。ピピはおもいきってエイッと氷(こおり)をひっかいてみました。7ジーンと、いたみがからだじゅうをつきとおって、手(て)がしびれました。なにしろ、コンクリートをおもいきりひっかいたんですからね! つめがはがれて、ピピの右手(みぎて)は、たちまちまっかです。けれどピピは、くやしくってくやしくっていたみなどかんじません。
 8だまされたのです。こんなかたい氷山(ひょうざん)などこしらえて!
 ピピはそのときからずっと、おりのおくから、ちっともでませんでした。だまって目(め)をとじて、すみっこでねむっているのです。
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おりの中(なか)は冷房(れいぼう)がしてあります。9ですから、そとのにせものの北(きた)のくにほどのきちがいめいたあつさはありません。
 二郎(じろう)もこまりました。なにをもってきてもたべない。どうしてもうごかないのですからね。このままでは、まちがいなしに病気(びょうき)になります。
 0おきゃくさんたちは、まいにち、からっぽの氷山(ひょうざん)をながめてかえるだけでした。
 どこかでペンギンの声(こえ)がしてバタバタと羽音(はおと)がきこえたような気(き)がしました。けれどピピは、もうけっして目(め)をあくまい、からだをうごかすまい、とこころにきめていたので、じっとしていました。それから、からだがもちあげられて、どこかへはこばれるようにもおもいましたが、やはりピピは、そのままじっとしていました。

 それからずいぶん長い(なが )あいだ、ピピは、こんどはほんとにねむりこんでしまいました。どうぶつえんにもってこられたペンギンたちといれかえに、ピピは、ふたたび北(きた)のくにへつれもどされていったのです。まいにちのピピのひとりぼっちのすがたをみて、がまんできなくなった二郎(じろう)が、ねっしんに園長(えんちょう)さんにたのんだのです。船(ふね)はピピをつんで、北(きた)へ北(きた)へとはしっていました。
 船(ふね)の人(ひと)たちは氷(こおり)の上(うえ)にそっとピピをおろしました。氷(こおり)のつめたさが、すこしずつピピのこころをあたためてゆきました。
――死ん(し )じまったのかな? ひとりがつぶやきました。それから、みんなはいそがしそうに船(ふね)にひきあげてゆきました。ピピは、うっすらと目(め)をひらきました。
 こんどこそ、まちがいなしに、ほんものの氷(こおり)、ほんとの北(きた)の海(うみ)のにおいです。
 けれどピピは、もう二度と(にど )おきあがれませんでした。ただ、からだじゅうがかるくなって、すいすいと空(そら)にまいあがってゆく気(き)がしました。
 ピピのからだのまっすぐ上(うえ)の空(そら)から、小熊(こぐま)座(ざ)のとおい星(ほし)が、ピピのふるさとの白い(しろ )世界(せかい)を、しずかにみおろしていました。
「ぽけっとにいっぱい」より(今江(いまえ) 祥智(よしとも))フォア文庫(ぶんこ)
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a 長文 3.3週 e
 1みよ子(  こ)ちゃんは、このあいだから、こっそりおもいつづけていることがあります。
――いっちゃおうかな……と、夜(よる)になるとおもいます。でも、ちょっとはずかしくって、いえないのです。けれど、きょうは星(ほし)のとくべつにきれいな夜(よる)でした。2そこで、みよ子(  こ)ちゃんは、とうとう、おねだりしたのです。
――ね、おとうさん、おねがい。
 ほほう……と、おとうさんは、めずらしそうにふりむきました。
――あれ、とって。
 みよ子(  こ)ちゃんは、空(そら)にたくさんある星(ほし)をゆびさしました。
 3あははは。おとうさんはわらって、
――あれは、だめ、星(ほし)だもの。
 みよ子(  こ)ちゃんのかおはクシャンとゆがんで、べそをかきました。どうして星(ほし)ならだめなのかしら。
 おにいちゃんなんか、あんな高い(たか )ところをとんでるトンボでも、ひょいとつかまえてくるのに……。
4――あれはね、とってもとおいところにあってとても大きい(おお  )んだ。
 けれどもみよ子(  こ)ちゃんには、おとうさんのせつめいなぞ耳(みみ)にはいりません。おもいつづけていたことを、やっといったのに、あははは、とわらわれちゃったんですからね。
 5みよ子(  こ)ちゃんはだまって家(いえ)をでていって、うしろの丘(おか)にのぼりました。空(そら)の星(ほし)に、いっそうちかくなった気(き)のするところです。そして、そこにしゃがんでなきはじめました。
 エーンエンエンエン
 6大きな(おお  )なみだが、ポタンポタンとおっこちて、土(つち)にすいこまれてゆきます。すると、そのへんでへんな音(おと)がするのです。
 コボン、コボ、コボ、ポコン
 みよ子(  こ)ちゃんはきみがわるくなって、なきやみました。7そしてたちあがったとたん、ポウン……と、足もと(あし  )の土(つち)がはねのけられて、みょうないきものがかおをだしました。
――えへへ、ぼく、モグラだよ。
 モグラなんて、しりません。
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 8けれどモグラのほうは、いっこうにへいきでつづけました。
――みよ子(  こ)ちゃんが、あんまりなみだをおとすんで、ぼくの家(いえ)のまえの道(みち)ね、そこの天井(てんじょう)がゆるんじまうんでね。
――あら、ごめんなさい。
――みよ子(  こ)ちゃんはあやまりました。
9――だって、わたし、そんなところにおうちや道(みち)があるなんて、気がつか(き   )なかったんだもの。
 するとモグラは、みじかい手(て)をふって、いやいや、べつにあやまってもらわないでも……。そこでふたりは、はなしはじめました。0そしてみよ子(  こ)ちゃんが星(ほし)のことをいうと、モグラは、なあんだ、といったかおつきでいうのです。
――ようがす。
 それからくるりとまわれ右(みぎ)、五分(ふん)もしないうちに、また穴(あな)からかおをだすと、
――これですよ、かけらしかとれませんでしたがね。
 ひょいとさしだしたのは、土(つち)のかたまりです。こんな土(つち)なんて、と、みよ子(  こ)ちゃんがうけとらないでいると、モグラはいうのです。
――だってこの地球(ちきゅう)も、星(ほし)の一つなんですよ。空(そら)のむこうからみれば、あおく光っ(ひか )て、くるくるまわってるんです。
 へええ、そうなの、と、みよ子(  こ)ちゃんはおもいました。

「ぽけっとにいっぱい」『星(ほし)をもらった子(こ)』より(今江(いまえ) 祥智(よしとも))フォア文庫(ぶんこ)
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a 長文 3.4週 e
 北極(ほっきょく)地方(ちほう)は、寒(さむ)さがたいへん厳しく(きび  )、海(うみ)もほとんど氷(こおり)でおおわれています。今(いま)では、北極(ほっきょく)に陸地(りくち)がないことがわかっていますが、昔(むかし)の地図(ちず)の中(なか)には、北極(ほっきょく)点(てん)を中心(ちゅうしん)に四つの大陸(たいりく)が描か(えが )れているものがあります。北極(ほっきょく)点(てん)が陸地(りくち)か海(うみ)かということさえ、長い(なが )間(あいだ)、なぞだったのです。
 十六世紀(せいき)に、船(ふね)による北極(ほっきょく)探検(たんけん)が始まり(はじ  )ました。北極海(ほっきょくかい)には、厚(あつ)さが天井(てんじょう)の高(たか)さほどもある氷(こおり)が一面(めん)に浮かび(う  )、ゆっくりと移動(いどう)しています。北極(ほっきょく)探検(たんけん)では、移動(いどう)してきた氷(こおり)に船(ふね)が閉じ込め(と こ )られて遭難(そうなん)するなど、多く(おお )の命(いのち)が失わ(うしな )れました。
 もう一つ、探検(たんけん)家(か)たちに恐れ(おそ )られていたのは、壊血病(かいけつびょう)という原因(げんいん)不明(ふめい)の病気(びょうき)です。これはなかなか解決(かいけつ)できない問題(もんだい)で、この病気(びょうき)によって隊員(たいいん)たちが次々(つぎつぎ)と倒れ(たお )ていきました。この病気(びょうき)の原因(げんいん)は、ビタミンCの不足(ふそく)でした。航海(こうかい)中(ちゅう)には、野菜(やさい)や果物(くだもの)などの新鮮(しんせん)な食べ物(た もの)を食べる(た  )ことが難しい(むずか  )ので、知ら(し )ず知ら(し )ずのうちにビタミンCが足り(た )なくなっていたのです。
 十九世紀(せいき)の終わり(お  )ごろから、探検(たんけん)家(か)たちはさまざまなルートで北極圏(ほっきょくけん)に入り(はい )、地球(ちきゅう)の最も(もっと )北(きた)である北極(ほっきょく)点(てん)をめざしました。ノルウェーのナンセンは、北極(ほっきょく)点(てん)のすぐ近く(ちか )まで船(ふね)で近づく(ちか  )ことができました。しかし、すぐ近く(ちか )と言っ(い )てもその距離(きょり)は、東京(とうきょう)と大阪(おおさか)ほども離れ(はな )ていました。また、南極(なんきょく)探検(たんけん)で有名(ゆうめい)なアムンゼンは、大西洋(たいせいよう)からアメリカ大陸(    たいりく)の北(きた)を通っ(とお )て太平洋(たいへいよう)にぬける北西(ほくせい)航路(こうろ)を、初めて(はじ  )通過(つうか)することに成功(せいこう)しました。
 西洋(せいよう)人(じん)として北極(ほっきょく)点(てん)に最初(さいしょ)に立っ(た )たのは、アメリカのロバート・ピアリーだと言わ(い )れています。しかし、彼(かれ)も簡単(かんたん)に北極(ほっきょく)点(てん)に到達(とうたつ)できたわけではありませんでした。初めて(はじ  )北極(ほっきょく)点(てん)に挑ん(いど )だ探検(たんけん)は大(だい)失敗(しっぱい)に終わり(お  )、凍傷(とうしょう)により足(あし)の指(ゆび)を八本(はっぽん)も失っ(うしな )てしまったのです。普通(ふつう)だったらどうしようと途方(とほう)に暮れ(く )てしまうところですが、それでもピアリーは負け(ま )ませんでした。失敗(しっぱい)した体験(たいけん)を生かし(い  )、長い(なが )
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時間(じかん)をかけて計画(けいかく)を練り直し(ね なお )、再び(ふたた )新た(あら )な探検(たんけん)に出(で)ました。この探検(たんけん)では、寒(さむ)さに強い(つよ )犬ぞり(いぬ  )や、イグルーという氷(こおり)で作っ(つく )た家(いえ)をうまく使い(つか )、ついに北極(ほっきょく)点(てん)に到達(とうたつ)することができました。十六世紀(せいき)に北極(ほっきょく)地方(ちほう)への探検(たんけん)が始まっ(はじ  )てから、約(やく)三百(ひゃく)年(ねん)もの年月(ねんげつ)がたっていました。
 西洋(せいよう)人(じん)にとっては、長い(なが )間(あいだ)、北極(ほっきょく)は未知(みち)の世界(せかい)でしたが、北極圏(ほっきょくけん)には、もともと先住民(せんじゅうみん)族(ぞく)が住ん(す )でいました。彼ら(かれ )はイヌイットと呼ば(よ )れており、何世紀(なんせいき)もの間(あいだ)、外部(がいぶ)とほとんど接触(せっしょく)をしないで暮らし(く  )てきました。海(うみ)に住む(す )アザラシやセイウチなどの狩り(か )を中心(ちゅうしん)に生活(せいかつ)を営み(いとな )、独自(どくじ)の文化(ぶんか)を作っ(つく )ていたのです。イヌイットは、西洋(せいよう)人(じん)よりもはるかに北極(ほっきょく)のことをよく知っ(し )ており、探検(たんけん)家(か)たちが、彼ら(かれ )から学ぶ(まな )べきことは多く(おお )ありました。最後(さいご)の探検(たんけん)のとき、ピアリーは、厳しい(きび  )北極(ほっきょく)の環境(かんきょう)に慣れ(な )た多く(おお )のイヌイットを連れ(つ )ていました。イヌイットの力(ちから)を借り(か )たことも、ピアリーを成功(せいこう)にみちびく大きな(おお  )要因(よういん)だったのでしょう。

 言葉(ことば)の森(もり)長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(κ)
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