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 また人に好かれる人は、他人に対してもよいイメージを抱くいだ ことに心がけながら交際していきます。相手に対して悪いイメージを抱きいだ つづけると、潜在せんざい意識はイメージ通りに反応していくことはご承知のとおりです。それは同時に、自分にとっても悪い現象がおこることをよく知っているからです。
 わたしたち人間は、いやな人に対しては決してよいイメージを抱いいだ てはいません。それと反対に、好ましい人にはよいイメージを持っていることに気づきます。男女間の恋人こいびと同士を見ればよくわかるでしょう。顔のあばたもえくぼに見えてくるのです。
 ところが、自分の抱いいだ ている悪いイメージによって、その人が嫌いきら になっているということに気づかないのです。そして、いつまでも悪いイメージを持ちつづけて、結局は何一つ得にならないばかりか、損ばかりしていることになるのです。
 このイメージも、創造そうぞう的に活用することが大事です。相手の長所にだけ目をむけるように、イメージ作りをしていけば、好きだった人はますます好きになり、きらいだった人とも次第にうちとけ合うようになります。
 人に好かれる大きな魅力みりょくは、利己りこ的でなく利他的であるということです。自分の利益より他人の利益を先にすることをまず考え、奉仕ほうしの精神で他人に接するように心がけることです。そして困っこま ている人を見れば、すすんで力を貸してあげるのです。
 この心得が、お釈迦さま しゃか  のいう「功徳」をつむことにつながるものと、わたしは考えています。自分の利益を先にして、相手に恩を売るのは、決して功徳にはなりません。
 キリストの言葉に「与えよあた  、さらば与えあた られん」と説いているのも、単にギブ・アンド・テーク        の打算的な考えではなく、功徳と同じ深い内容の意味を持っているものと思います。
 人間はとかく打算に走りやすく、自分の利益につながらないことはしたがりません。また、他人に何かをしてやる場合でも、必ずその見返りを期待しています。その見返りが多い少ないで、争いがおこります。このように、目さきの損得ばかりを考えて行動していくと、優劣ゆうれつを意識する場合と同じように、必ずさまざまな破壊はかい的現象がおこります。
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 釈迦しゃかやキリストのような人類の聖人せいじん呼ばよ れる人は、そんなことは遠の昔にお見通しです。その上でわたしたちに、「与えるあた  こと」のほんとうの意味を説いているのです。損や得をぬきにして、純粋じゅんすいな心で他人にほどこせば、本人は気分がさわやかであるばかりか、相手からも感謝され、その恩はいつかきっと返ってくる。もし仮に相手が忘れわす たとしても、よそから必ず何倍にもなって返ってくる。その上功徳をつめば、それだけ人間の徳は高くなるという、高遠な因果の教えを説いているのです。
 集団生活をしていて、わたしたちが生涯しょうがいに出会うことのできる人の数はかぎられています。それだけ人生における出会い(えん)というものは大切なものです。特に友だちと名のつく人は、生涯しょうがい掛けか がえのない存在そんざいです。フランスの作家ロマン=ロラン(一八六六〜一九四四)は、このことを次のようにいっています。
「わたしは世界に二つのたからを持っている。わたしの友とわたしのたましいと」
 またゲーテは、次のようにいっています。
「空気と光と、そして友だちの愛、これだけが残っていれば、気をおとすことはない」
 わたしたちが一生を通じて得られる友だちの中で、生涯しょうがいの友が得られるのは、若いわか 年代の時といいます。みなさんも、この絶好の黄金の時期を決して無にしないように、今まで述べてきたことをよく理解し、積極的に活用して下さい。

百瀬ももせ昭次 『君たちは偉大いだいだ』)
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