1物の命と人間の心が結び合って一つになる。我の強い人には友達ができがたいように、おたがいの心が結び合ってこそ友人になるのである。2河井寛次郎先生が、物を自分や友人に見立てて「物を買って来る、自分を買って来る」とか、物を親しい友人として「自分の家に連れて来る」というように表現されていたことを思い出すのである。そのように考えると、美しい物は何か人の心に与えるものを持っている。3したがって、物と心が結び合う時、自分の水準が高められる。それゆえ、美を味得する道は人によって違うのである。一般的に、生まれながら情操的な人と理知的な人があるように、誰でも同じようにはいかないが、情操的な人ほど友人が多くできるように、美しい物との出会いは多い。4そういう人ほど直感力が強いといえる。
さて、この直感力を強くする道は、修業によらなければならないが、柳先生は参考として役に立つ二つの実際的方法を示唆して、練習の資に供したいと言われている。一つは標準法で、他は擬人法である。5物は程度の差はあっても、いろいろな条件によってそれぞれ異なっているもので、作った人の性質、境遇、意志、取りあつかい方などが直接できあがった物に影響してくる。これは人間性の反映である。それゆえ人間と同じように見ていくことはその理解を早める一つの道である。6例えば、工芸品の一つを例として取り上げると、色とか模様とかデザインなどが派手にすぎていたら、ぜいたくな人間の性質と同じように見えるだろう。ぜいたくという言葉は道徳の世界から見れば、必ずしも善ではないし、華美というものと真の美とはどうしても反発する傾向がある。
7今度は別に装飾はなくても、落着いた形、確実な材料や機能、おだやかな色調などを見る時、かざり気のない実直な人のほうがどれだけ人に信頼されるかということに通じる。物としても、そのような人に通じるものがあることを考えないわけにはいかない。物としてもそのような美しさを持っている物があるといえよう。8また細々とやせて、きゃしゃな形を見ると、やはりそれは健康体とはいえない。(中略)
また例えばそまつな材料や、粗雑な仕事でありながら、上っ面ば
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