1あまのじゃくな人が嫌われるのは、みんなと歩調を合わせないので、なにかと足手まといになるからです。人間は一人で生きているのではなく、他人とともに生きるようにつくられているのです。ところが、一人ひとりの人間はあらゆる点で違います。2生まれつきの差もありますが、ものの見え方や音の聞こえ方も経験によって違ってくるように、後天的につくられる脳機能の差はさらに大きいのです。その違いがいわば個性ということになります。個性というと、先天的な差を連想する人もいるので、個人差という方が誤解が少ないでしょう。3単なる感覚でさえも一人ひとりが違うのですから、価値観やものの考え方が違うのも当然です。
このように、一人ひとりが違うのですが、その違いをお互いに主張し合えば、誰もがあまのじゃくになってしまいます。そこで、人間同士の間には一種のなれあい現象が必要になってきます。4つまり相手と意見が違っても、すぐに反論するのではなく、一応は聞いておいて、自分の意見も修正し、相手の考え方もおだやかに改めてもらえるように工夫します。お互いに妥協するということにもなります。
5たとえば、ある料理を食べたときに、相手が「さすがにホンモノの味だ」といったとしても、自分にはそうも思えないというようなことはよくあります。しかし、それを口にすることはせずに一応は相槌を打って、味わい直してみるのがふつうでしょう。それでその場はなごやかに過ごせるし、自分の味覚が進歩することにもなります。
6このように、他人と歩調をそろえなければならないときには、誰もがひとりでになれあうのがふつうです。従って、あまのじゃくになるひとつの原因は、そこにいる人と歩調をそろえるつもりがないために、自分の意見をそのまま主張するということです。7誰に対してもあまのじゃくになるとしたら、その人はできるだけ自分だけで生きてゆこうとする人です。実際はそんなことは無理であっても、そういう姿勢をとろうとするわけで、どこかで人間嫌いになる原因があったのでしょう。
(中略)
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