a 長文 7.1週 hi
「いただきます。」
 わたしは、世界の食べ物の中でカレーがいちばん好きだ。カレーだと、必ずおかわりをしなくては気が済ます ない。カレーのどこが好きなのかと聞かれてもおいしいものはおいしいのだから理由などない。
 この前、学校の林間学校で、飯盒はんごう炊さんすい  をしてカレーライスを作ることになった。まず、学校の授業で、カレーに使われる材料や、カレールーの歴史などについて調べ、発表をした。そこで、カレーの材料にはいろいろな人が関わっていること、また、長い歴史があることが分かった。そして、自分の家で、一人でカレーライスを作ることが夏休みの宿題の一つとなった。
 カレーが大好きなわたしでも、生まれてから一度もカレーを自分で作ったことはなかった。母に教えてもらいながらやっとのことで作り上げたが、その時、こんなに大変なのに林間学校で自分たちだけで作れるのかと不安になった。
 その不安を抱えかか たまま、林間学校が始まり、二日目の夜に飯盒はんごう炊さんすい  が行われた。もし、作ることができなかったら、わたしたちのその日の夜ご飯はなしになってしまう。わたしまきの係りだった。お米を研ぎ、野菜を全て切り終わった後に火をつけた。その火はまるで、紅葉こうようしたモミジのように真っ赤だった。途中とちゅうで、火が消えそうになって慌てあわ たが、以前、火を作る練習をした時、火が消えそうになったらうちわであおげばよいと習ったのを思い出した。みんなで、一生懸命いっしょうけんめいうちわであおぐと、消えかけていた火が勢いを盛り返しも かえ た。しばらくすると、飯盒はんごうから、水滴すいてきがたれてきた。まきでさわってみると、ぐつぐついっている振動しんどうが手にも響いひび てくる。
「やったあ。」
なぜみんなが喜んでいるのかというと、そうなったらご飯が炊けた たという合図だからだ。本当にできているか確かめるために、火から下ろし、軍手をした手で飯盒はんごうのふたを開けてみた。すると、真珠しんじゅ
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のような真っ白なご飯が姿すがたを現した。そのご飯を見たとき、わたしはとにかくうれしかった。
 ご飯は、飯盒はんごうごと逆さにして蒸しむ ておき、わたしたちはカレーのなべの方に取り組んだ。しかし、このあと、わたしたちは小さな失敗をしてしまった。水を多く入れ過ぎてしまったのだ。なべの中はびちゃびちゃになっていたが、わたしたちはあまり気にすることなく作業を続けた。そして、やっとカレーの方も完成した。
「いただきます。」
と声をそろえ、一斉いっせいに食べ始めた。わたしは水が多すぎて、おいしくないカレーになっていないかと思っていたが、その心配は無用だった。なぜなら、家のカレーよりもおいしかったからだ。わたしは、もちろん、それをおかわりした。
 この飯盒はんごう炊さんすい  以来、わたしはもっとカレーが好きになった。母が、今日の夕飯もカレーだと言っていたので、とても楽しみだ。

(言葉の森長文作成委員会 Λ)
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