a 長文 1.1週 ke
 1今日(きょう)、ぼくは、ムサシの家(いえ)に遊び(あそ )に行き(い )ました。ぼくとムサシは大の仲良し(なかよ )で、学校でもよく遊ん(あそ )でいます。ムサシの家(いえ)で、ポケモンのゲームの攻略(こうりゃく)本を読み(よ )ました。難しく(むずか  )てよくわからないところもあったけれど、ムサシが説明(せつめい)してくれました。 
2「なんだ、こんなふうにやればいいのか。」 
ぼくは大発見(だいはっけん)をしたかのように、興奮(こうふん)してきました。すぐにでも家(いえ)に帰っ(かえ )てDSをやりたくなってきました。 
「おれ、今日(きょう)は帰る(かえ )ね。バイバイ。」 
と、ムサシにさよならして家(いえ)に走り(はし )ました。3まるで獲物(えもの)を狙う(ねら )動物(どうぶつ)のように全速力(ぜんそくりょく)で走り(はし )ました。家(いえ)に帰る(かえ )と早速(さっそく)、 
「ねえ、お母さん( かあ  )、ゲームやってもいい?」 
と、お母さん( かあ  )をそっと見ながら言い(い )ました。お母さん( かあ  )は少し(すこ )考え(かんが )てから、
「うーん、じゃあ、三十分(ぷん)だけね。」 
と言い(い )ました。 
4「やった。ありがとう。絶対(ぜったい)三十分(ぷん)で止(や)めるね。」 
と言い(い )ながら時計(とけい)を確認(かくにん)して、DSの電源(でんげん)を入れました。ピコーンピコーンピコーンといい音がしました。わくわくします。ぼくは、さっき覚え(おぼ )てきたやり方(  かた)を片っ端(かた ぱし)から試し(ため )てみました。 
5「ええっ、なんだ、これでいいのか。」 
「これなら簡単(かんたん)。」 
など、ぼくは大騒ぎ(おおさわ )です。ひとりでゲームをしているのに、まるで友達(ともだち)といっしょにやっているようにしゃべりました。今(いま)までクリアできなかったことが、簡単(かんたん)にできてしまいます。楽しく(たの  )てたまりません。6ぼくはもう夢中(むちゅう)です。時計(とけい)を見ることさえ忘れ(わす )ていました。
 ふと気がついて時計(とけい)を見ると、残り(のこ )時間(じかん)はあと五分(ふん)です。もっと続け(つづ )ていたいけれど、約束(やくそく)は守ら(まも )なくてはいけません。約束(やくそく)の時間(じかん)
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を守れ(まも )なくて一週間(しゅうかん)ゲーム禁止(きんし)になったことが何(なん)度(ど)かあるからです。7ゲーム禁止(きんし)なんて二度と(にど )ごめんです。ぼくは、ちょうど一分(ぷん)前(まえ)に電源(でんげん)を切り(き )ました。ギリギリセーフでした。 
「お母さん( かあ  )、いまやめたよ。ちゃんと三十分(ぷん)でやめたよ。」 
ぼくは得意(とくい)そうに言い(い )ました。8お母さん( かあ  )は、 
「約束(やくそく)が守れ(まも )て偉かっ(えら  )たね。今日(きょう)は盛り上がっ(も あ  )てたね。」 
とにっこりしました。 
「うん。今日(きょう)はすごく進ん(すす )だ。ムサシにやり方(  かた)を教え(おし )てもらったからね。」 
と、ぼくが今日(きょう)のことを説明(せつめい)しました。9お母さん( かあ  )は、
「今日(きょう)みたいに約束(やくそく)が守れる(まも  )と、お母さん( かあ  )も気持ちよく(きも   )ゲームをやっていいって言える(い  )よ。次(つぎ)も守ろ(まも )うね。」 
と言い(い )ました。ぼくも、ほんとうにそのとおりだと思い(おも )ました。0

(言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい) ω)
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長文 1.1週 keのつづき
 1オリンピックのメダルが一位(い)から順に(じゅん )金、銀(ぎん)、銅(どう)でできているように、金は大昔(おおむかし)から、とても人気のある金属(きんぞく)でした。なにしろ他(た)の薬品(やくひん)におかされず、やわらかくてコインやアクセサリーにも加工(かこう)しやすく、そして何より美しかっ(うつく   )たからです。2しかし、金は、一トンの金鉱(きんこう)石の中から、わずか三グラムから五グラムくらいしか取れ(と )ないという貴重(きちょう)なものです。
 今から八百年くらい昔(むかし)、ヨーロッパの人々は、珍しい(めずら  )食べ物(た もの)や宝物(たからもの)を求め(もと )て、まだ知られていない海の向こう(む  )の国々へと出かけていきました。3その中の一人、マルコ・ポーロは、旅(たび)の途中(とちゅう)で見聞きしたことを集め(あつ )、のちに『東方見聞録(とうほうけんぶんろく)』という本を出しました。その中で、東洋(とうよう)には「ジパング」という名前の「黄金(おうごん)の国」がある、と書きました。
 4この「ジパング」というのは、実は(じつ )日本のことで、日本の英語(えいご)名である「ジャパン」はこれに由来(ゆらい)しています。マルコ・ポーロ自身(じしん)は、実際(じっさい)に日本を訪れ(おとず )たことはなく、中国で聞いた話として書いただけでした。5しかし、この本に「ジパングにはものすごい量(りょう)の黄金(おうごん)があり、国王の宮殿(きゅうでん)はすべて金でできている」と書かれていたため、コロンブスも、この黄金(おうごん)の国を求め(もと )て船出したのではないかと言われています。
 6ヨーロッパの人が夢見(ゆめみ)た「黄金(おうごん)の国」ほどではありませんが、日本にはかつて佐渡(さど)や鴻之舞(こうのまい)など、とてもりっぱな金鉱山(こうざん)があり、貴重(きちょう)な金がたくさんとれていました。しかし、これらの鉱山(こうざん)もやがて掘り(ほ )尽くさ(つ  )れ、今ではそれほどたくさんの金をとることはできません。
 7そこで、最近(さいきん)注目(ちゅうもく)されているのが、「都市(とし)鉱山(こうざん)」と言われるものです。実は(じつ )、パソコンや携帯(けいたい)電話、液晶(えきしょう)テレビなどの中には、「レアメタル」と呼ば(よ )れる貴重(きちょう)な金属(きんぞく)が、少量(しょうりょう)ずつですが使わ(つか )れています。8その中にはもちろん、金もあります。ですか
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ら、これらの機械(きかい)をうまくリサイクルして、その中の金属(きんぞく)を取り出し(と だ )て使お(つか )う、という試み(こころ )が始まっ(はじ  )ています。9家電製品(せいひん)などがたくさん使わ(つか )れている日本には、世界(せかい)有数(ゆうすう)の都市(とし)鉱山(こうざん)があると言われています。
 今も昔(むかし)も、大人気の金。リサイクルを進め(すす )て、日本は再び(ふたた )、「黄金(おうごん)の国」になれるでしょうか。0

 言葉(ことば)の森長(ちょう)文作成(さくせい)委員(いいん)会 τ
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a 長文 1.2週 ke
 1そうじをおわって、わたしがかえろうとすると、運動(うんどう)場(じょう)から、バラバラと男の子たちがやってきて、わたしをとりかこみました。
 (こりゃ、ひとあばれけんかをしなけりゃならなくなったぞ。)わたしはそう思い(おも )ました。2でも、けっして、その男の子たちがにくらしかったわけではありません。ほんとうは、はやく、その子たちといっしょになってあそびたかったのです。めいわくだったのは、むしろしんせつにしてくれる女の子でした。
 3(あの子がこなければよいが。)みんなにかこまれて、わたしがそうおもったとき、もう女の子は見つけて、こちらにかけてくるのがわかりました。
 4と、わたしは、いちばんちかくにいた男の子を、ポカンとぶっていました。それから、とっくみあいになりました。ほかの男の子たちは、わたしの先手に、いささかあきれたかっこうです。
 5女の子は、それを見ると、わたしがさきに手をだしたこともしらずに、先生をよびにいきました。とっくみあいになると、なかなかしょうぶがつきません。
「おい、先生がきたぞ。」
 だれかがいいました。そして、ほかの男の子たちが、学校の外(そと)へにげだしました。6わたしも、とっくみあいをちゅうしして、みんなといっしょに、にげました。
 わたしは、ごくしぜんにみんなといっしょににげだせたのがうれしくてたまりませんでした。わたしたちは、学校が見えなくなるまで、フーフーいいながら走り(はし )ました。7そして、ひとりが草の中へ、
「ああ、しんど。」
とたおれこむと、みんなも草の中へころがりました。わたしは、いまさっきけんかをしたこともわすれていました。ところが、あいてはわすれていなかったのです。とつぜん、おかしなことをいいだしました。
8「おまえ、へびつかめるか。」
「つかめらい。」
 わたしは、そうこたえずにはいられませんでした。それに、へびなど、そうかんたんにいるものとはおもっていませんでした。
「大阪(おおさか)の天王寺(てんのうじ)の動物(どうぶつ)園(えん)には、こんなふといへびがいるぞ。9おら、そいつにさわらせてもらった。ぬるっとして、手がぬれたぞ。」
 なぜ、じぶんのいちばんおそれていることを、わたしはわざわざしゃべってしまったのでしょう。もちろん動物(どうぶつ)園(えん)で、にしきへびに
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さわれるわけがありません。0へびがぬるっとしていて、手がぬれるなんて、まったくでたらめです。いいえ、わたしはそんなゆめを見て、いく夜(よ)うなされたかしれません。
 ところが、あいての男の子は、そのとき、まったく手じなのように、草むらの中から、へびをみつけだしたのです。しっぽをつかむがはやいか、バン、バンと、土の上にたたきつけました。小さなしまへびではありましたが、わたしはもうぶるぶるとふるえていました。
「さあ、つかめ。もうかみつきよらん。」
 みんなは、わたしがどうするか見まもっていました。
「はよう、つかまんか。こわいのか。」
 わたしはだまってつかみました。つかむとどうじに、それをぶんぶんふりまわしました。とても、じっとなどつかんでいられませんでした。へびは、すこしもぬるっとなんかしていませんでした。むしろざらっとしたかんじです。これはほんとうにいがいでした。
 わたしはへびをふりまわしながら、みんなにちかづけました。さすがにみんなにげました。ふと気がつくと、むこうのほうから、さっき学校でいっしょにそうじをしていた、女の子たちがふたりでかえってきます。わたしはへびをふりまわしながら、その子たちのほうへ走り(はし )ました。
 女の子は、わたしがそんなことをしているのを見ると、ハッとしたようにたちどまってから、それがへびであることがわかると、キャッとさけんで、にげだしました。
 なんでそんならんぼうをしたのか、じぶんでもふしぎでした。
 あくる朝(あさ)、先生からたいへんおめだまをいただきました。
「なにもわるいことをしないへびをころして、おまけに、女の子をいじめるなんて、いちばんひきょうもののすることだぞ。」
 先生にそういってしかられました。つくえをならべた女の子は、わたしをよけるように、つくえのはしっぽにすわり、口もきいてくれなくなりました。
 へびをつかむなんて、ほんとうにつまらぬことです。でたらめのうそをいったばかりに、じぶんのいちばんきらいだったへびをつかんでみせなければなりませんでした。
 でも、そんなことがあってから、わたしは、すぐ山の友だち(とも  )となかよしになりました。へびもこわくなくなりました。二年ほどしかいませんでしたが、たのしい山の小学校でした。

「ほらふきうそつきものがたり」(今西(いまにし)祐行())より
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a 長文 1.3週 ke
 1小学校一年生の三がっきのことです。こくごのべんきょうで、かん字が、十二、三字出そろい、それらを、三十かいずつ、ノートに書く(か )しゅくだいがでました。2絵(え)をかくとか、作文(さくぶん)を書く(か )というのなら、そんなにいやではなかったのですが、わかりきった字をなんかいも書い(か )たり、たしざんやひきざんのけいさんもんだいを、たくさんやらされるしゅくだいは、とてもにがてでした。
 3(三十かいずつか。いやだなあ。日、日、日……。人、人、人……。山、山、山……。ああ、いやだなあ。わかっている字じゃないか。いやだなあ……。)とおもっているうちは、まだいやいやでも家(いえ)にかえったら書こ(か )うとおもっていました。
 4ところが、学校の門(もん)をでて、山のすそをとおり、小川の土(ど)ばしをわたって家(いえ)についたころには、すっかりわすれてしまいました。
 しゅくだいをわすれるのと、ひきかえのようにおもいだしたことがあります。5というのは、その日が、毎月(まいつき)買っ(か )ているざっしの売り(う )だし日だったのです。
 さっそく、ざっしを買う(か )お金をもらって、やく二キロメートルはなれている、小さな町の本屋(ほんや)へでかけました。うめの花を道(みち)みち見ましたが、風(かぜ)はまだつめたかったようです。
 6そのころ、テレビなんてものはありませんでした。ラジオも、まだ町にしかありませんでしたから、毎月(まいつき)のざっしが、なによりのたのしみでした。
 ざっしを買っ(か )て家(いえ)にかえってくると、からだじゅうがほかほかしていました。7ときどき、グラビヤのところをのぞいてたちどまったり、小走り(こばし )にあるいたりしてきたのです。
 夕食(ゆうしょく)まえに、ふろへはいるように母(はは)にいわれましたが、「あとにする。」といって、まずざっしをよみつづけました。
 8ねるまえに、いちどカバンの中でも見ればしゅくだいをおもいだしたでしょうが、そのころのぼくは、本もどうぐも、みんなカバンにいれっぱなしで、学校と家(いえ)とをおうふくしていました。しゅくだいをわすれなければ、けっして、カバンの中のものをとりだすひつようがなかったのです。
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 9さて、もんだいはそのあくる日です。こくごの時間(じかん)がはじまり、しゅくだいをしてきたノートを、つくえの上にひろげることになりました。
 (あっ、そうだった。あの、いやなしゅくだいがあったっけ。)と気づいたが、もうなんともなりません。0せめて、はじまるまえにでも気づいていたら、すこしは書い(か )ておけたのでしょうが。
 たんにんのわかい女の先生は、かくべつきびしかったのです。(さあ、どうしよう。しかたがない。しょうじきにいおう。わすれました。)と。そうおもって、先生に見てもらうばんを、びくびくしてまっていました。
「はい、どこにやってありますか?」
「わすれました。ぼくう、すっかりわすれてしまいました。」
「わすれた? どうしてわすれたの? わすれたといえばすむの?なまけたのでしょう?」
「なまけたんじゃありません。」
「なまけたのでしょう。」と、いわれて、きゅうにくやしくなりました。
「なまけたんじゃなかったら、どうしてやってないの?」
「わすれたのです。」
「わすれたといえばすむの? どうしてわすれたの? ただわすれたではゆるしません。」
 さあ、ぼくはこまってしまいました。ざっしのことでわすれたといえば、先生は、よけいおこるにちがいありません。(よし。家(いえ)の用(よう)でやれなかったといおう。)と、とっさにおもいつきました。
「家(いえ)に用(よう)があったのです。」
「どんな用(よう)?」
「となり村の水車小屋(こや)へ、米(べい)を一ぴょうついてもらいにいったのです。」
「あんたひとりで?」
「はい。」
 これは、とんでもないことをいってしまったなとおもいました。でも、そういってしまったいじょうは、それでとおさにゃならんとおもい、あることないこと、おもいつくままにならべました。
「ほらふきうそつきものがたり」(赤座(ざ)憲久())より
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a 長文 1.4週 ke
 日本の主食(しゅしょく)は、お米(こめ)です。日本と同じ(おな )ように、お米(こめ)を主食(しゅしょく)とする国(くに)は多く(おお )、インド、中国(ちゅうごく)、東南アジア(とうなん   )の諸国(しょこく)などがあります。お米(こめ)は、粒(つぶ)のままで食べる(た  )場合(ばあい)が多く(おお )、水で炊い(た )てご飯( はん)にしたり、多め(おお )の水で炊い(た )ておかゆにしたり、蒸し(む )ておこわにしたり、蒸し(む )たあとついておもちにしたりするなど、さまざまな食べ(た )方(かた)があります。また、炊い(た )たお米(こめ)をいためてたべる焼き飯(や めし)や、いためてから炊く(た )ピラフやパエリヤなどもよく知ら(し )れています。
 世界(せかい)には、お米(こめ)以外(いがい)の主食(しゅしょく)もあります。代表(だいひょう)的(てき)なものは小麦(こむぎ)です。小麦(こむぎ)は、アメリカ、インドなどで多く(おお )生産(せいさん)され、食べ(た )方(かた)は、粉(こな)にしてから食べる(た  )ことが多く(おお )、ねって焼い(や )たり、めんにしてゆでる方法(ほうほう)がほとんどです。パンやスパゲッティは、小麦(こむぎ)から作ら(つく )れます。中国(ちゅうごく)で食べ(た )られている饅頭(まんとう)も、ねった小麦粉(こむぎこ)を丸め(まる )て蒸し(む )たものです。日本でおなじみの肉まん(にく  )も、饅頭(まんとう)の一種(いっしゅ)です。
 トウモロコシは、米(こめ)、小麦(こむぎ)に並ん(なら )で、世界(せかい)三大穀物(こくもつ)の一つと言わ(い )れています。メキシコでは、トウモロコシの粉(こな)で作っ(つく )た生地(きじ)をうすくのばして焼い(や )たトルティーヤが主食(しゅしょく)です。そのほか、トウモロコシを粉(こな)がゆにしたり、蒸し(む )たりして食べ(た )ます。
 世界(せかい)には、それぞれの国(くに)の気候(きこう)、風土(ふうど)によっていろいろな食べ物(た もの)があります。寒く(さむ )て作物(さくもつ)を栽培(さいばい)できない北極(ほっきょく)近く(ちか )に住む(す )イヌイットは、カリブーやアザラシの肉(にく)を主食(しゅしょく)としています。昔(むかし)のイヌイットはアザラシなどの肉(にく)を生で食べ(た )て、ビタミンCが足りなくなるのを防い(ふせ )でいました。もっとも、氷(こおり)の上で肉(にく)を焼い(や )て食べ(た )ていたら、氷(こおり)が溶け(と )て海(うみ)に落ち(お )てしまうという理由(りゆう)もあったかもしれません。
 北極(ほっきょく)を探検(たんけん)したヨーロッパ人たちは、生肉(なまにく)を食べる(た  )のをきらったために、壊血病(かいけつびょう)に苦しめ(くる  )られました。生肉(なまにく)を受け付け(う つ )ないヨーロッパ人にとって、壊血病(かいけつびょう)の問題(もんだい)は、なかなか解決(かいけつ)できませんでした。生の肉(にく)を食べる(た  )のは、北極(ほっきょく)というきびしい場所(ばしょ)で生きのびていくためのイヌイットの知恵(ちえ)だったのです。
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 言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(κ)
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a 長文 2.1週 ke
 1ぼくは、毎日(まいにち)六時(じ)からアニマックスでドラゴンボールを見ています。おもしろくてやめられません。その日も、ぼくはお兄ちゃん(にい   )と、いつもどおりドラゴンボールを見ていました。悟空(ごくう)とピッコロ大魔王(まおう)が対戦(たいせん)しています。手に汗(あせ)握る(にぎ )戦い(たたか )です。ぼくたちは夢中(むちゅう)でした。
 2そこへ、何(なに)かがこげたような匂い(にお )が漂っ(ただよ )てきました。ぼくは、今日(きょう)の晩(ばん)御飯(ごはん)はきっと魚(さかな)だなと思い(おも )ました。でも、魚(さかな)にしては臭(くさ)過ぎる(す  )ような気がします。
「なんか変(へん)な匂い(にお )がするぞ。」
と言い(い )ながらふと台所(だいどころ)を見ると、ガスコンロからぼわっと火が出ているではありませんか。3ぼくたちは、
「お母(かあ)さあん。お母(かあ)さあん。大変(たいへん)、火事(かじ)だよう。」
と、大声(おおごえ)で二階(かい)にいるお母さん( かあ  )を呼び(よ )ました。お母さん( かあ  )は、
「やだあ、魚(さかな)焼い(や )てるの忘れ(わす )てた!」
と叫び(さけ )ながらドンドンドンと階段(かいだん)を転がる(ころ  )ように降り(お )てきました。4ガスコンロから燃え上がる(も あ  )火を見て動か(うご )なくなったお母さん( かあ  )は、急(きゅう)に、
「新聞(しんぶん)。いらない新聞(しんぶん)持っ(も )てきて。たくさん。早く!」
と、ぼくたちに言い(い )ます。ぼくとお兄ちゃん(にい   )はぶつかりあいながら新聞(しんぶん)を取り(と )に走り(はし )ました。5お母さん( かあ  )は、
「ありがと。」
と言う(い )と、勢い(いきお )よく水を出し新聞(しんぶん)をぬらしました。
 メラメラと火が燃え(も )ているのは、グリルという魚(さかな)を焼く(や )ところと奥(おく)にあるたくさん穴(あな)の並ん(なら )だところです。お母さん( かあ  )はまず、奥(おく)の穴(あな)の上に濡れ(ぬ )た新聞紙(しんぶんし)を並べ(なら )ました。6次(つぎ)に、グリルを引き出す(ひ だ )と、火が大きく噴き出し(ふ だ )てきました。ぼくたちはびっくりして声(こえ)も出ません。お母さん( かあ  )はグリルの上に濡れ(ぬ )た新聞紙(しんぶんし)を乗せる(の  )と、すぐにグリルを閉め(し )ました。少し(すこ )火が小さくなったような気がします。
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7お母さん( かあ  )はまた、グリルを出して濡れ(ぬ )た新聞紙(しんぶんし)を乗せ(の )ました。ぼくたちはお母さん( かあ  )の後ろ(うし )でじっと見ています。それを何(なん)度(ど)か繰り返す(く かえ )とだんだん火が消え(き )てきました。ぼくはほっとして、
「よかった。火事(かじ)になるかと思っ(おも )たよ。」
と言い(い )ました。
8「危なかっ(あぶ   )たね。」
と言う(い )お兄ちゃん(にい   )の顔(かお)は、まるでおばけ屋敷(やしき)から出てきたときのようでした。ぼくは、お兄ちゃん(にい   )も怖かっ(こわ  )たんだなと思い(おも )ました。
 お母さん( かあ  )は、
「やったやった。危なかっ(あぶ   )たけどなんとかなるもんだね。こういうのを火事場(かじば)の馬鹿力(ばかぢから)って言う(い )んだね。」
と得意(とくい)そうです。9怖かっ(こわ  )たけど、スリル満点(まんてん)でした。騒ぎ(さわ )が終わっ(お  )たときにはドラゴンボールも終わっ(お  )ていました。ぼくたちが、
「あーあ、ドラゴンボール見逃し(みのが )ちゃったよ。」
と言う(い )と、お母さん( かあ  )は、
「まあ、いいじゃん。火事(かじ)にならなかったんだから。」
と笑い(わら )ました。0

(言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい) ω)
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a 長文 2.2週 ke
 1ぼくは、べんとうをとりだそうとして、ごそごそと、カバンの中をさがしました。
 そのころは、きゅうしょくはありませんでした。
 みんな、アルミニュームのべんとうばこに、ごはんとおかずをつめて、もってきていたのです。
 2ところが、どんなにさがしても、べんとうばこはありませんでした。
 わすれんぼうの名人だったぼくは、しゅくだいはもちろんのこといつだって、べんとうをわすれるくせがありました。
 3かあさんが、毎朝(まいあさ)つくってくれるのに、ぼくは、うっかりして、台所(だいどころ)のすみっこだのつくえの上だのに、一しゅう間(かん)に、一かいや二かいは、かならずわすれました。
 4そんなとき、ぼくはうちまでかけていっては、かあさんたちに、
「また、べんとうがないてるずら。」
なんて、からかわれながら、つめたくなったごはんを、口の中へながしこむようにいそいでたべたものです。
 だから、その日も、そうすればよかったのです。
 5ところが、その日は、となりの源(げん)ちゃんが、あわてたぼくのようすを、じっと見つめて、そして、やさしい声(こえ)で、じしんありげに、そっと、ささやいたのです。
「そうか! のんちゃんわかったよ。おめんちは、お米(こめ)がないんだろ。6おらあ、おめえ、よくべんとうわすれるなあって、おもってたけど、そうじゃあなかったのか。そうだったのか。」
 そういわれると、ぼくも、ほんとに、そんな気もちになってくるのでした。
 7だから、源(げん)ちゃんの同情(どうじょう)したことばにはなんにもこたえないで、あわてていすにすわりなおし、しょんぼりと下をむいていました。
 ちょうどそのとき、前沢(まえざわ)先生が、はいってきたのです。
8「おおい、きょうは、みんなと会食(かいしょく)するぞ。」
と、いわれてから、もじもじしているぼくに、気がついたのでしょう。
「代田(しろた)、どうした。」
と、たずねました。
 ぼくはきゅうにかなしくなってきて、「ううっ。」と、しゃくりあげて、なきだしたのです。
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 9すると、源(げん)ちゃんが、
「先生、のんちゃんは、べんとうがないんです。」
と、べんかいしてくれたのでした。
 先生は、気にもしないで、
「ああ、そうか、わすれたのか。」
と、いってから、教(きょう)だんのつくえのほうにいこうとしました。0ところが、源(げん)ちゃんは、
「先生、そうじゃあないんです。のんちゃんは、べんとうがもってこられないんです。」
と、おもわせぶっていったのです。
 ぼくは、ぎょっとしました。
 いや、ぼくよりも先生のほうが、もっとおどろいたようでした。
「そうかあ!」
と、しばらくたちどまって、かんがえているようでした。
 それから、おもいだしたように、
「ああ、きょうはつごうで、会食(かいしょく)はやめだ。」
と、いわれてから、
「代田(しろた)、はなしがあるから、いっしょにこい。」
と、気のどくそうに、やさしい声(こえ)でぼくにはなしかけるのでした。
 先生は、ぼくを、ようむいん室(しつ)のとなりのたたみのへやに、つれていきました。
 それから、りょう手で、ぼくのかたをかるくたたいてから、
「おまえ、ずーっと、おべんとうをたべていなかったのか?」
と、ききました。
 ぼくは、みょうにみじめな気もちになってきました。
――はい――、というかわりに「こくり」と頭(あたま)をさげました。
 すると、いよいよ売ら(う )れていったあわれな東北(とうほく)の子どもにおもえてきました。
 しゃっくり、しゃっくりをくりかえしながら、なきだしていました。

「ほらふきうそつきものがたり」『げんこつゴツン』(代田(しろた)昇(のぼる))より
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a 長文 2.3週 ke
 1先生は、
「もういい、もういい。どうも、はじめてで、じじょうがわからなくて、気のどくをしたのう。さあ、そこにすわれ。」
といって、もうしわけなさそうに、ぼくを見つめるのでした。
 2それから、先生は、じぶんのべんとうをはんぶんずつにわけて、
「さあ、たべろ。なあにえんりょするな。人間(にんげん)ちゅうもんはなあ、いいか、どんなにつらいことがあっても、けっしてへこたれるんじゃあねえぞ。」
と、やさしくいってくれるのでした。
 3そういわれれば、いわれるほど、ぼくは、
「ううっ!」
といって、しゃくりあげてなきました。
 しゃくりあげながらも、先生から、もらったおべんとうをたべていました。
 わけてくれたおかずのしおじゃけも、こうやどうふのにしめも、おいしくておいしくて、みんなたいらげました。
 4ところが、そのあたりから、ゆめがさめはじめたようでした。
――おまえは、うそをついて、先生のべんとうをたべたのだ。
 どこからか、そんな声(こえ)がきこえます。
――いや、あれはゆめの中のぼくで、ほんとは東北(とうほく)の少年(しょうねん)なんだ。
 そんな、べんかいもきこえました。
 5しばらくすると、
――まあいいや、とにかく、こんどのあたらしい先生から、やさしい声(こえ)をかけてもらって、べんとうをわけてもらったのは、ぼくだけなんだから。
と、いばった声(こえ)もきこえました。
6――いや、おもいちがいをした源(げん)ちゃんが、わるいのだ。源(げん)ちゃんのくそぼうずめ。
 こんどは、源(げん)ちゃんのせいにした声(こえ)もでてきました。
 とにかく、ぼくは、おもいあまってしまいました。
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 7そのおもいあまった気もちは、うちにかえってからも、つづいていました。
 つぎの日になりました。
 先生にあうのが、こわくなりました。
――いっそ、ずる休みするか。
と、おもいました。
 でも、ぼくのうちは、かんしがきびしくて、とてもだめです。
8――ええ! どうにでもなれ。
 ぼくははんぶんやけっぱちになって、しぶしぶと学校にいったのです。
 やっぱり、おもっていたとおりでした。
 ぼくは、一時間(じかん)めに、しょくいん室(しつ)によびつけられました。
 9いがぐり頭(あたま)のぎょろめの前沢(まえさわ)先生は、ぼくを、にらみつけて、
「代田(しろた)! よくも、おれをだましたな。」
 そういうなり、げんこつで、
「ゴツン」「ゴツン」
と、ぼくののうてんを、力いっぱいなぐりました。
「いたたっ!」「いたたっ!」
 0目から火のでるほどのいたみが、ずしんと、からだぜんたいにひびいてきました。
 でも、ぼくは、声(こえ)をだしませんでした。
 もちろん、なきもしませんでした。
 いや、かえって、この「げんこつ」で、むねの中のもやもやが、すうっと、きえていくのがわかりました。

「ほらふきうそつきものがたり」『げんこつゴツン』(代田(しろた)昇(のぼる))より
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a 長文 2.4週 ke
 シマウマの体(からだ)の模様(もよう)は、まるで横断(おうだん)歩道(ほどう)のようです。横断(おうだん)歩道(ほどう)の模様(もよう)はとても目立つので、シマウマの白と黒(くろ)の模様(もよう)も、草原(そうげん)の中で目立ってしまい、肉食(にくしょく)獣(じゅう)に簡単(かんたん)に見つかってしまうのではないかと思う(おも )かもしれません。しかし、そんなことはありません。
 アフリカの日差し(ひざ )は強烈(きょうれつ)です。昼間(ひるま)、太陽(たいよう)がぎらぎらと照りつけ(て   )て大地(だいち)が熱く(あつ )なると、かげろうが立ちのぼります。シマウマの住ん(す )でいるサバンナ地帯(ちたい)は、広く(ひろ )なだらかな丘(おか)のところどころに、背(せ)の低い(ひく )木の茂み(しげ )や、背丈(せたけ)の高い(たか )草むらがあります。ゆらゆらするかげろうの中で、シマウマの姿(すがた)はちょうど木や草にまぎれて、見えにくくなります。あのシマ模様(もよう)は、ライオンやハイエナの嗅覚(きゅうかく)がとどかないところにいるかぎり、身(み)を守る(まも )のにとても都合(つごう)がよいのです。このように、身体(からだ)を見えにくくさせる色(いろ)のことを、保護色(ほごしょく)と呼び(よ )ます。
 シマウマが、なぜ横断(おうだん)歩道(ほどう)のような模様(もよう)をしているかについて、もう一つ説(せつ)があります。それは、サシバエ(刺し(さ )バエ)から身(み)を守る(まも )ためという説(せつ)です。アフリカには、ツェツェバエという大きなハエがいて、アブのように人や動物(どうぶつ)を刺し(さ )ます。ツェツェバエという名前(なまえ)は、ボツワナの言葉(ことば)で「牛(うし)を倒し(たお )てしまうハエ」という意味(いみ)です。ハエにとっては、栄(は)えある名前(なまえ)かもしれません。人間(にんげん)がこのハエに刺さ(さ )れると、体(からだ)の中に病原(びょうげん)体(たい)が入って、ときには命(いのち)を落とす(お  )こともあります。
 ツェツェバエの目から見ると、シマウマのシマ模様(もよう)は見えにくいらしく、シマウマのまわりにたかるハエは、ほかの動物(どうぶつ)と比べ(くら )てぐんと少ない(すく  )のです。
 ところで、シマウマのしま模様(もよう)は、一頭(とう)ずつすべて異なっ(こと  )ています。人間(にんげん)の指紋(しもん)には一つも同じ(おな )ものがありませんが、シマウマの模様(もよう)もちょうどそれと似(に)ています。私(わたし)たち人間(にんげん)から見ると、どれも同じ(おな )ように見える模様(もよう)ですが、一つとして同じ(おな )ものがありません。
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 さて、しまのつく動物(どうぶつ)は、ほかにもいます。シマリス、シマダイ、シマヘビ、島田(しまだ)君(くん)。それは人間(にんげん)です。

 言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(κ)
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a 長文 3.1週 ke
1「あ、宿題(しゅくだい)忘れ(わす )てた。」 
学校に着い(つ )て、教室(きょうしつ)に入ったぼくは、宿題(しゅくだい)を忘れ(わす )たことに気がつきました。昨日(きのう)は三丁目(ちょうめ)公園(こうえん)に遊び(あそ )に行っ(い )て遅く(おそ )まで鬼ごっこ(おに   )をしました。三月になってからずいぶん日が延び(の )たので六時(じ)まで遊ん(あそ )でいいことになりました。2家(いえ)に帰っ(かえ )たらやろうと思っ(おも )ていたのに、すっかり忘れ(わす )てしまったのです。
 先生が来(く)る前(まえ)に終わら(お  )せてしまおうと大急ぎ(おおいそ )でランドセルから宿題(しゅくだい)のプリントを出しました。ぼくがプリントをやろうとすると、 
「中田君(くん)。もしかしたら、それ、宿題(しゅくだい)?」 
と、ダイちゃんが、小林先生の真似(まね)をしてやってきました。3小林先生というのは、ぼくたちの担任(たんにん)の先生です。まるでお笑い( わら )芸人(げいにん)みたいな面白い(おもしろ )先生です。
 ダイちゃんが先生の真似(まね)をしたので、周り(まわ )にいたみんながげらげら笑い(わら )ました。ぼくたちは調子(ちょうし)に乗っ(の )て次々(つぎつぎ)と先生の真似(まね)をしました。4突然(とつぜん)、ゆきちゃんが、
「三年生になったら、どの先生が担任(たんにん)になるのかな。」 
と言い(い )ました。ぼくは、いすから滑り落ち(すべ お )そうになりました。 
「小林先生じゃないの?」 
と、思わず(おも  )叫ん(さけ )でしまいました。5みんなは、ちょっとあきれた顔(かお)で、
「知ら(し )ないの? 三年になったら先生変わる(か  )って、お母さん( かあ  )が言っ(い )てたよ。」 
と、口々に言い(い )ました。ぼくは全然(ぜんぜん)知り(し )ませんでした。考え(かんが )たこともありませんでした。ずっと先生と一緒(いっしょ)のような気持ち(きも )でいたのです。
 6先生の机(つくえ)の後ろ(うし )に貼っ(は )てあるポケモンカレンダーを見ました。春休み(はるやす )まであと何(なん)日あるのか知り(し )たくて、ぼくは数え(かぞ )始め(はじ )ました。
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「一、ニ、三、四、五、六、七、八、九、十。あと十回(かい)!」 
あと十回(かい)学校に来(き)たら小林先生とお別れ(わか )なのだと思う(おも )と、急(きゅう)に寂しく(さび  )なってきました。7どうして大事(だいじ)なことを言っ(い )てくれないのかとお母さん( かあ  )に文句(もんく)を言い(い )たくなってきました。今日(きょう)の夜(よる)、絶対(ぜったい)に言っ(い )てやるぞと思い(おも )ました。 
 ぼくがテレビを見ていると、買い物(か もの)袋(ぶくろ)をぶら下げたお母さん( かあ  )が仕事(しごと)から帰っ(かえ )てきました。 
8「もう春(はる)だね。まだ明るい(あか  )もんね。春(はる)になると、なんだかうきうきしちゃうね。」 
なんて嬉し(うれ )そうに言い(い )ます。ぼくはお母さん( かあ  )の顔(かお)を見ないで、
「三年になったら小林先生じゃなくなるんだって。」 
と不機嫌(ふきげん)そうに言い(い )ました。9お母さん( かあ  )は買い物(か もの)袋(ぶくろ)を置い(お )てぼくの横(よこ)に座り(すわ )ました。 
「そうだね。お母さん( かあ  )も小林先生のファンだったから寂しい(さび  )よ。ずっと小林先生だったらいいのにね。でも、そんないじけた顔(かお)をしていると、小林先生も元気(げんき)がなくなっちゃうよ。」 
と言っ(い )て、ぼくの背中(せなか)をぽんとたたきました。0小林先生は楽しい(たの  )ことが大好き(だいす )です。寂しい(さび  )けれど、最後(さいご)まで元気(げんき)な顔(かお)でいようとぼくは思い(おも )ました。

(言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい) ω)
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a 長文 3.2週 ke
 1ふと気がついたとき、しっかりと、手にもってきたふろしきづつみが、ぬれているのです。くすりをつつんできた、あのふろしきづつみです。
 はっとして、雪(ゆき)の道(みち)にうずくまると、つつみをといてみました。2水ぐすりがこぼれて、三分の(ぶん )一ぐらいへっているのです。こなぐすりのふくろは、べったりとぬれて、茶(ちゃ)いろのしみをつくっていました。コルクのせんが、ゆるんでいたのです。ほてっていたからだじゅうのあせが、つめたくなるほど、びっくりしました。
 3そのくすり代(だい)がいくらだったか、いまはおもいだせませんが、わがやのくらしの中で、それは、たいへんなお金だったことだけは、たしかです。けんこうほけんなどはなかった、ずっとむかしのはなしです。
 どうしたら、よかっぺか――
 4わたしは、雪(ゆき)の上に、べったりと、すわりこんでしまいました。
 このまま家(いえ)へかえったら、母(はは)がどんなにがっかりするか……、うんとしかられることは、わかりきっています。もう一どもどってくすりをもらうには、お金がありません。5五年生だったわたしには、どうしたらいいのか、わかりませんでした。
 そのとき、小さな水の音がきこえてきました。道ばた(みち  )の石がきのあいだから、ちょろちょろとながれでている、わき水の音です。学校のいきかえりに、きまってのんでいく水でした。6だれがもってくるのか、みじかい青竹が、かけひのようにさしこんでありました。青竹は、ときどきだれかにひきぬかれます。すると、フキの葉っぱ(は  )をまるめて、さしこんであることもありました。
 わき水は、夏(なつ)の日のように、ふきだしてはおりません。7雨だれのように、ぽつん、ぽつんと、そこだけ、雪(ゆき)をとかしておちていました。
 わたしは、おもわず、まえとうしろを見まわしました。ひとっこひとり、あらわれません。たちあがると、そのかけひの下に、くすりびんを、あてがっていたのです。
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 8びんの中のくすりは、うす茶(  ちゃ)いろになりましたが、三日分(ぶん)のその目もりまで、いっぱいになりました。
 しっかりせんをすると、びんだけをふろしきにつつみなおし、こなぐすりのふくろは、ふところのはだのところまで、じかにいれました。9からだのぬくもりで、すこしでもかわかそうとしたのです。
 そして、のろのろ、あるきだしました。あるきながら、うそのいいわけを、いっしょうけんめいかんがえていました。
「いってきたよ。」
 わたしは元気(げんき)のない声(こえ)で、そうあいさつしながら、おもい大戸(おおど)をあけました。
 0いろりには、火がもえていて、けだるそうな顔(かお)をして、母(はは)はおきていました。
 わたしは、だまって、あがりはなにこしをおろすと、母(はは)のほうにせなかをむけたまま、ゆっくりと、長(なが)ぐつをぬぎました。そのようすが、ふだんとはちがうことに、母(はは)は気づいたのでしょう。
「どうかしたんか? 頭(あたま)でもいてえだか? くすりは、もらえたんか?」
と、やつぎばやに、ききました。
「もらってきたけえど……。いしゃどんからでたとこの水ったまりへおとしちまって……。」
 わたしは、ふところからぬれたこなぐすりをだすと、いろりばたからはとおい、あがりはなのいたのまに、ひざをついてなきだしたのです。
 道(みち)みち、かんがえてきたうそのいいわけを、とうとういってしまったじぶんが、こわくなっていたのかもしれません。
「ぬれたぐれえ、かわかせばすむこった。あっち(心配(しんぱい))はねえ。こんだっから、気いつけるだよ。」
 ないているわたしが、かわいそうだったのか、母(はは)は、やさしくそういっただけで、ぬれたくすりぶくろを、かわかすように、いろりのすみにおきました。
 色(いろ)のうすくなった水ぐすりは、いつもいれておく戸(と)だなへ、じぶんでそっとしまいました。
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長文 3.2週 keのつづき
 さむいけれど、母(はは)とむきあって、いろりの火にあたるのは、つらかったので、
「おひるごろっから、頭(あたま)がいたくってー。」
 そういって、こたつの中へもぐりこみました。
「かぜっけなだっぺあ、かぜにこたつはどくだぜ、ちゃんとふとんにねて、ひとあせかいたがいい。」
 むりやり、ふとんにねかされたのでした。
 目をつぶると、
(くすりって、なんの水でつくるのだんべえか。くすりの中へ、ただの水をたしてしまって、どくにはならなかっぺえか――。)
 と、つぎつぎ、またしんぱいになりました。

「ほらふきうそつきものがたり」『かけひの水』(宮川(みやがわ)ひろ)より
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a 長文 3.3週 ke
 1ふいに、わたしは、かたのあたりをうしろからぐいとおされて、ころびそうになりました。ふりむくと、
「おい、じゃまだぞ。どけよ。」
 そばに、グローブをつけたのっぽの男の子が、わたしを見おろしてたっていました。2しらないまにわたしは、やきゅうのコースのまんなかにたっていたのです。はっと気がつくのといっしょに、
「さっさといけよ。のろまのあんぽんたん。」
「どかないと、ぶんなぐるぞ。」
 東京(とうきょう)べんのわる口が、ポンポンいりみだれて、わたしの耳にとびこんできました。3ぶんなぐるなどといわれたのは、うまれてはじめてです。それに、あるけっていったって、どっちへいけばいいのかわかりません。わたしは、頭(あたま)がかっとなって、からだをかたくしてつったったまま、なきそうになりました。4そのとき、
「どうしたの、キミちゃん。」
 よかった、としえちゃんでした。かけとおしてきたのか、まだ、ふうふういっていました。わたしは、ほっとして、どもりながら、
「あの、あのう、あの人たち、たたくって。じゃまだって、ここにいると……。」
 5じぶんでなにをいったのか、きれぎれにそれだけいうと、きゅうにかなしくなって、ポロポロ、なみだがでてきました。
「どの子が? ああわかった、けんちゃんでしょ。おかあさーん、けんちゃんがね、キミちゃんをぶったんだって。」
 6わざとそういったのか、かんちがいしたのか、としえちゃんは、うちのほうへむかって、大声(おおごえ)でさけんだのです。元気(げんき)なおばさんのことだから、その声(こえ)をきいたら、ひばしかほうきをもって、すっとんでくるかもしれません。7わたしは、あわてて、ちがうって、せつめいしようとしましたが、なきながらだし、それに、東京(とうきょう)べんでいおうとするので、ことばがうまくいえません。
 8いっしゅん、男の子たちは、おどろいたように、ポカンとつったっていましたが、けんちゃんとよばれた、いちばん気のよわそうな子が、なきそうな声(こえ)をふりしぼって、
「ぶちゃしないよォ、いなかっぺの、うそつきィ。」
と、ありったけの声(こえ)でさけぶと、くるりとうしろをむき、ワーッとなきながら、いちもくさんにおかをかけおりていきました。
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9ほかの子も、くもの子をちらすように、にげさっていきました。
 夕やけはいつのまにかきえて、はださむい夕やみがおかの上にもただよいはじめていました。
0「さ、いきましょ。」
と、としえちゃんは、ねえさんぶって、わたしのかたに手をまわしあるきだしました。
 「いなかっぺの、うそつき」――そのときになって、はじめて、このことばのいみが、おもく、わたしにのしかかってきました。
 うそつきは、どろぼうのはじまり。うそをいうと、死ん(し )でから、えんまさまにしたをぬかれるって、いつもかあさんがいう。わたしは、東京(とうきょう)の子に、みんなのまえでうそつきといわれた。しらない土地(とち)で、しらない子が、「いなかっぺの、うそつき」と、はっきりそういった。それも、あんなにくやしがって、なきながら。――「いなかっぺ」って、そんなにわるいものなのかしら、それに、わたしは、ほんとに「うそつき」なのだろうか。このことは、かあさんと秋田(あきた)の家(いえ)へかえってからも、頭(あたま)からきえませんでした。
 とおいとおいむかしの小さな小さなできごとです。けんちゃんとよばれたあの子も、いまはおじいちゃんになって、どこかでまごとあそんでいるかもしれません。それとも、日本じゅうのわかものたちが、せんそうにつれていかれた、あのころ、中国(ちゅうごく)か、マレーおきの海(うみ)で、みじかいいのちをちらしてしまったのかもしれません。
 戸山(とやま)が原(はら)も、いまは学校やビルがたちならび、ひろいどうろができ、すっかりかわってしまいました。あのあたりの町のようすも、どこがどうなったのか、おもいだすこともできません。あそんでいる子どもたちも、みんな、しらない顔(かお)ばかりです。
 それなのに、あの東京(とうきょう)のうら町の、小さいおかから見た、夕ぐれどきのものがなしいけしきと、小さなわたしの目の中でピンクいろにふくらんでいった大きななみだと、あの東京(とうきょう)の男の子のかなしそうな声(こえ)だけが、カラーテレビのように、いまもはっきりと、わたしの目に、耳に、のこっているのです。

「ほらふきうそつきものがたり」『いなかっぺのうそつき』(増村(ますむら)王子(きみこ))より
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a 長文 3.4週 ke
 1夏休み(なつやす )の友(とも)といえばやはりカブトムシです。昆虫(こんちゅう)の王様(おうさま)と呼ぶ(よ )にふさわしいその姿(すがた)は、子どもたちの視線(しせん)をとらえてはなしません。ペットショップのカブトムシコーナーは、毎年(まいとし)黒山(くろやま)の人だかりができていますし、採集(さいしゅう)ツアーも登場(とうじょう)するほどです。
 2いかにも丈夫(じょうぶ)そうな姿(すがた)のカブトムシですが、その命(いのち)はそれほど長い(なが )ものではありません。卵(たまご)からかえり、冬(ふゆ)を越し(こ )た幼虫(ようちゅう)は、蛹(さなぎ)へと姿(すがた)を変え(か )、夏(なつ)になると成虫(せいちゅう)、つまりカブトムシへと変身(へんしん)しますが、成虫(せいちゅう)になってからの命(いのち)はおよそ一か月ほどといわれています。3ですから、夏休み(なつやす )が終わる(お  )ころは、ちょうどカブトムシの命(いのち)もつきる時期(じき)にあたるのです。クワガタムシも、カブトムシと並ん(なら )で人気があります。カブトムシがひと夏(なつ)の命(いのち)なのに対して( たい  )、クワガタムシの場合(ばあい)、種類(しゅるい)によっては越冬(えっとう)できるものもあります。えっとうれしくなってしまうでしょう。
 4大切(たいせつ)に育て(そだ )ていたカブトムシの死(し)は悲しい(かな  )ものですが、死ん(し )でしまったからといってすぐに飼育(しいく)ケースを処分(しょぶん)してはいけません。ケースの中の腐葉土(ふようど)をそっとのぞいてみましょう。もしかしたら、小さな卵(たまご)が見つかるかもしれません。5直径(ちょっけい)三ミリ程度(ていど)の白くて丸い(まる )卵(たまご)です。孵化(ふか)直前(ちょくぜん)の卵(たまご)は大きさは五ミリ程度(ていど)になり、色(いろ)も黄色(きいろ)味(み)を帯び(お )てきます。この卵(たまご)をじょうずに育てる(そだ  )ことができたら、大切(たいせつ)にしていたカブトムシの二世(にせい)と対面(たいめん)できる日がやってくるのです。
 6卵(たまご)からかえった幼虫(ようちゅう)は、おもに腐葉土(ふようど)を食べ(た )て大きくなります。幼虫(ようちゅう)時代(じだい)に摂取(せっしゅ)した栄養(えいよう)が、成虫(せいちゅう)のカブトムシの大きさを決定(けってい)付(づ)けます。いったん成虫(せいちゅう)になってしまったら、どんなに樹液(じゅえき)を吸っ(す )たところでそれ以上(いじょう)大きくはなりません。7立派(りっぱ)な大きさのカブトムシは、幼虫(ようちゅう)時代(じだい)に十分(じゅうぶん)な栄養(えいよう)を取っ(と )ていたのです。もしも人間(にんげん)がカブトムシと同じ(おな )性質(せいしつ)だったらどうでしょう。成人(せいじん)したらいくら食べ(た )ても太ら(ふと )ないわけですから、ダイエットに励ん(はげ )でいる大人にとってはなんともうらやましい話(はなし)です。
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 8通常(つうじょう)、一匹(ぴき)の幼虫(ようちゅう)が蛹(さなぎ)になるまでに食べる(た  )腐葉土(ふようど)の量(りょう)は、洗面(せんめん)器(き)に山盛り(やまも )一杯(いっぱい)分(ぶん)にもなるそうです。カブトムシは、そんな大量(たいりょう)の腐葉土(ふようど)をかぶっとむしゃむしゃ食べ(た )てしまうのです。さすがに昆虫(こんちゅう)の王者(おうじゃ)、驚い(おどろ )てしまいます。
 9友達(ともだち)に自慢(じまん)できるくらいの大きなカブトムシを育てる(そだ  )ためには、良質(りょうしつ)な腐葉土(ふようど)を絶えず(た  )補充(ほじゅう)してあげることが大切(たいせつ)です。また、飼育(しいく)ケースの中のフンを取り除い(と のぞ )たり、掃除(そうじ)をしたり、根気(こんき)よく世話(せわ)を続ける(つづ  )ことが必要(ひつよう)です。
 0では、カブトムシとクワガタムシでは、どちらが強い(つよ )でしょうか。カブトムシの得意(とくい)技(わざ)は、カブト割り(わ )でしょう。クワガタムシの得意(とくい)技(わざ)は、もちろんクワ固め(かた )です。結果(けっか)は、カブトもクワガタも、お互い( たが )をムシして引き分け(ひ わ )になりました。

 言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(かい)(ω)
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