1「早く夜にならないかなあ。」
ぼくは、そうつぶやきました。
「また言ってる。これで何回目?」
お母さんは、おかしくてたまらないという顔をして笑いました。今日の夜は夏祭りなのです。ぼくは、カレンダーに赤のペンで丸をつけて楽しみにしていました。2綿あめにかき氷、たこ焼きにチョコバナナなど、いろいろなものを食べられるのです。
ついに待ちに待った夜です。お母さんがくれた五百円をお財布に入れて、ぼくは校門に急ぎました。3校門に着くと、コウジとユウキが待っていて、ぼくを見つけると、
「おう、早く行こうぜ。」
と僕をひっぱりました。たくさんのちょうちんがぶら下がっていて、いつもの校庭ではないみたいです。まるでおばあちゃんの家の近くの商店街みたいだなと思いました。
4何を食べようかときょろきょろしていると、ソースのこげるにおいが漂ってきました。ぼくたち三人は、
「いいにおいだなあ。焼きそば食べよう。」
と、鼻をクンクンさせながら列に並びました。ぼくとユウキが先に買って、コウジの順番になりました。5コウジは、お店のおじさんに、
「いっぱい入っているのをください。」
とお願いしたので、ぼくとユウキは、思わず顔を見合わせて笑ってしまいました。コウジは、クラスの中でも食いしん坊で有名なのです。6おじさんは、重なった焼きそばの中からひとつひっぱりだして、
「これはたくさん入ってるだろ。」
と言いました。ぼくは、うらやましいなあと心の中で思いまし
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