1あることがらや出来事を私たちが他の人に伝えたいと思った時、大きくわけてふたとおりの方法が考えられます。一つはそれを写真やビデオに写して見てもらうということです。もう一つの方法は、手紙を書いたり電話をしたりして、読んだり聞いたりしてもらうということ」です。2かりに、前者を「映像による伝達」、後者を「言葉による伝達」と呼ぶことにしましょう。
さて「映像による伝達」と「言葉による伝達」を比較した場合、どちらが、ことがらや出来事を正しく伝えることができるかと質問されたら、みなさんはどう答えますか。
3最近は、テレビやビデオなどの目覚ましい発達にともなって、映像の力を私たちもいやというほど見せつけられることがしばしばです。特に、衛星放送が可能になってから、私たちは、世界で起きている出来事をいながらにして同時中継で見ることができるようになりました。4ごく最近の中国の天安門事件の時も、そこに集まった群衆の熱狂的な姿や、その後の軍隊の出動の様子などは、まるで私たちがそこにいるかのような錯覚を与えるほど生々しいものでした。5そうした、生々しいリアルな映像に接すると、その迫力に圧倒されてしまい、「映像による伝達」の前では、「言葉による伝達」も影がうすくなってしまうように思えます。そして、さきほどの質問にも、文句なしに「映像による伝達」に軍配をあげることになりそうです。6昔から「百聞は一見にしかず」ということわざもあり、「映像による伝達」の優位は、疑えないことなのかも知れません。
しかし、ほんとうにそうなのでしょうか。ほんとうに「言葉による伝達」は、おとっているのでしょうか。7たとえば、みなさんのことを全く知らない人に、みなさんの家族の紹介をしようという時、家族全員のそろった写真をとって送れば、一番てっとり早いし、なによりも分かりやすいように見えます「しかし、それで、ほんとうにみなさんの家族を相手の人によく理解してもらえるでしょうか。8なるほど家族それぞれの顔や姿などは、言葉で説明する
|