1人間には、他人と違っていることを非常にいやがる気持ちと、他人とどこかちがっていないと満足出来ない気持ちとがからみ合っているようであります。2かなり小さい時でも、ほかの子供とちがった身なりをしていることはいやなことでありまして、たとえ自分がほかの子供よりも上等な服を着ていましても、それを一刻も早く脱ぎたいことを大概の人が何かの折りに経験していると思います。3そうかと思いますと、一様の制服を着せられている女学生などが、殆ど目につかないところに一本襞を入れるとか、胸を少しばかり広くあけるとかして、みんなと違ったところを創り出そうとしていることが見受けられます。4世の中の服装の流行は、目まぐるしく変りますが、学生の制服でも細かい流行があります。どんどん新しい流行が生まれるのは、他人と同じではいやだというところと、それに遅れて自分だけが流行おくれのなりをしては大変だということが微妙にからんでいるようであります。5服装などの流行は、大部分表面的なもので次々と移り変って行きますけれども、私が先程真似をするといいと申しましたのは、もう少し深い意味を含めていたつもりなのです。つまり真似をして、どうしても真似られないところに突きあたった時に自分自身の創造する力、創り出す力、それを発見することを含めていたのです。6自分には独創性というものがないのではないか、最初は誰もがそう思うのですけれども、何か一つの活動を真剣になってやっていれば、必ず自分の独特の力量というものが発見される筈です。それですから真似をすることは一つの手段であります。7手段といいますよりは、私どもを動かすいわば原動力であります。したがって、うまく真似ることが出来たと思ってそこで満足をしてそれで終わってしまっては何にもなりません。
そこで私は真似の仕方に上手下手があると思います。8ひょっこり大金が手に入ったような時に、ある人は、それまで漠然と夢みていたハイカラな生活をしてやろうとして、何でもかまわずお金持
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