1アメリカ人が日本にやって来ると、日本人のあいさつはうるさくて仕方ない、と思うようだ。例えば思いがけないところで知っている人とバッタリ会う。「どちらにお出かけですか」と尋ねる。アメリカ人はうるさいと思う。2「どこに行こうと俺の勝手だ。俺の秘密を探ろうとしているのだろうか」。日本人は何もそういうつもりではない。「こんなところでお目にかかるとは思いがけないことだ。あなたの身の上に何か大変なことがおこったのではないだろうか。3もしそうだったら、一緒に心配してあげましょう」とこういう気持ちで聞くわけである。
「先日は失礼しました」。これもよく私たちが口にするあいさつである。アメリカ人はびっくりする。4「確かに先日この男に会った。しかしそのときにこの男は俺に何にも悪いことはしていない。するとこの男は、俺の知らない間にとんだことをしてくれたのではないか」と心配になるという。日本人の気持ちはそうではない。5「先日あなたにお目にかかった。私としては失礼なことをした覚えはないけど、私は不注意な人間である。もしかしたら失礼なことをしたかもしれない。もしそうだったらおわびする」。こういうことを言っている。6そういう言葉でも分かるように、私たちは謝ることが非常に好きである。感謝することよりも、謝ることを尊ぶ。
みなさんがバスに乗っている。おばあさんが乗ってきた。誰かが席をゆずる。7おばあさんは何というか。「ありがとうございます」とお礼を言う人もいるが、「すみませんねえ」と謝る人の方が多いだろう。おばあさんの気持ちはこうである。8「私がもし乗ってこなければ、(あなたは座っていられた。私が乗ってきたばかりにあなたは立たなくてはならない。)すみません」とこういう論理で、日本人は謝ることを非常に喜ぶ。
9アメリカで暮らしていた次男の話だが、次男の家にいるお手伝
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