1タケとササは花が違うと聞いても、そもそもタケとササに花が咲くの? と思われる方も少なくないだろう。もちろん、タケにもササにも花が咲く。タケやササは風で花粉を運ぶ風媒花で、イネによく似た花を咲かせる。2ただし、タケが花を咲かせるということはほとんどない。タケの花にお目にかかるチャンスはきわめて少ないのだ。
一説には「タケは六十年に一度花を咲かせる」といわれている。3実際にモウソウチクでは六十七年、マダケでは百二十年の周期で花を咲かせたという記録もある。
世にも珍しいタケの花。ところが、タケの花が咲いた後、竹林には奇妙な現象が起こる。一面に広がっていた広大な竹林がいっせいに枯れてしまうのである。
4しかし考えてみれば、これは不思議でもなんでもない。植物のなかには何度も何度も花を咲かせる多回繁殖性の植物と、一度花を咲かせて種子を残すと枯れてしまう一回繁殖性の植物とがある。5たとえば、ヒマワリやアサガオなどは花を咲かせて種子を残すと枯れてしまう。タケも花が咲いて枯れる。これは、ごくふつうのことである。ただ、タケの場合はその周期が途方もなく長いというだけなのだ。
6タケは地下茎で伸びて増えていくから、無数のタケが生えた広大な竹林が、すべて地下茎でつながった一つの個体ということも決して大げさな話ではない。7つまり、一本のヒマワリが花を咲かせて枯れるように、タケが花を咲かせて枯れるということは、竹林全体のタケが枯れてしまうことになるのだ。そうはいっても、いままで夏も冬も青々としていた竹林が、いきなり枯れだすのだから、大変である。8そのため昔の人は気味悪がって、タケに花が咲くのは天変地異の前触れだといってひどく恐れたのである。
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