1科学は自然の対象を観測し、そこに存在する構造や機能の法則性を明らかにする。ある対象領域に成り立つ法則を発見した、法則を確立したというのは、どのようにして保証するのだろうか。
2ボールを投げると放物線をえがき、ある一定の距離に落ちる。ある物質と物質を混ぜてある一定の温度に保つと、反応してある物質ができる。3こういった多くの実験から、そこにある種の規則性を認識し、そこから法則を確立していくわけであるが、その法則は実験によって確かめるというプロセスを絶対的に必要とする。しかも、誰がやっても同じ結果が得られるということでなければならない。
4このように、科学は、自然のなかに存在する対象を分析し、そこから法則を抽出し、対象を分析的に理解するというところに中心があった。5こうして法則が確立されると、つぎの段階として、これらの法則の新しい組み合わせを試みることによって、それまで世界に存在しなかった新しいものをつくりだせる可能性があることに人々は気づいたわけである。
6法則を組み合わせて、実験をしてみて、もとの対象が復元できることを確かめるところまでは、科学の領域であろうが、法則をいろいろと新しく組み合わせて何か新しいものをつくっていくというつぎのステップは、シンセシス、あるいは合成・創造の立場であり、それが現代における技術であるということができる。7つまり、現代技術は科学の法則を意識的にあらゆる組み合わせで使ってみて、何か新しいものをつくりだしていこうとする明確な意図をもったものとなっていて、これが従来の技術とは明確に異なっているところである。
8このように分析と合成とは対概念となり、したがって、科学と技術も対概念であり、コインの裏表の関係であると理解される。そこで、これら全体は科学技術という一つの概念、一つの言葉としてとらえることができるだろう。
9科学と技術とはまったく異なる概念で、科学技術という表現は適当でないという考え方をする人もいる。しかし、現代科学は高度の技術なしにはありえず、その技術も科学によって支えられている。0今日では、科学者自身がシンセシスの領域に本格的にのりだしてくる一方で、技術者のほうも、技術を押しすすめるために本格的な科学的基礎研究をおこなっている。
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