1「泣きながらごはん食べると、おいしくない」。小さいとき、どこかでそんな歌を聞いた。
歌の内容は、もうすっかり忘れてしまったのだが、そのワンフレーズだけはよく覚えている。きっとその当時から、「それはそうだなあ」と実感し、納得していたのだろう。
2両親にしかられたり、友達とけんかをしたり、先生にお説教をされたりしたあとに食べるご飯は、確かにおいしくない。悲しいとかくやしいとか、そんな重苦しいものがお腹にズウンとつまっているようで、食欲すらわいてこないこともある。
3もしかしたら、どんなに嫌な気分でいても、ご飯を食べているうちに忘れていって、満腹になったらケロッとしてしまう明るい性格の人もいるのかもしれないが、大多数の人はそうではないだろう。4つまり「おいしい」とか「まずい」というのは、食べ物そのものより、自分の心の持ちようで変わるものなのかもしれない。
そういえば、こんなこともあった。前、沖縄へ旅行をして、海辺でゴーヤチャンプルーを食べたときのことだ。5新鮮な感じがして、とてもおいしかった。それをもう一度味わいたくて、帰ってから母にゴーヤチャンプルーを作ってほしいと頼んだ。
しかし、いざそれが我が家の食卓に乗り、一口食べてみたら、なぜかそれほどおいしくは感じられなかった。6いや、はっきり言うと変な味だと思ってしまった。
せっかく作ってくれた母に悪かったので、全部食べたが、「こんな味だったっけ?」と首をかしげたくなったものだ。
7今思うと、沖縄の海で思いきり泳ぎ、お腹を空かせて、美しい海を眺めながら食べた、という雰囲気が、おいしさを倍増させたのだろう。
やはり、よい気分で食べるご飯はおいしい。楽しい気持ちでいると、不思議とお腹も空く。
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