1バッシャン。シャッターを押すと、そんな音がするカメラがあるなんて信じられるだろうか?
今や、カメラといえばみなデジカメである。シャッター音といえば、「ピピピ」、「ピロリロ」、「シャラーン」などという、電子的でオシャレなものを思い出すだろう。
2中には気を利かせて、「カシャッ」という機械音を再現してくれるものもあるが、それでもてのひらに、シャッターが動いた振動まで伝わってくることはない。
一つ一つの部品を、すべて人の手で組み上げたカメラ。3鉄製の機械じかけのカメラ。そういう古いカメラは、シャッターを切るときに、確かな音と手ごたえがあるのだ。
私がそのカメラを手にしたきっかけは、ある日の先生の一言だった。
4「今度の校外学習では、みんなで写真を撮りにいきます。ただし、デジカメや携帯ではいけません」
私たちは、はじめ、何を言われたのかよく分からなかった。みんながぽかんとしていると、先生はこう続けた。
5「フィルム式の古いカメラが、必ず家にあるはずです。ご両親に聞いてみてください。分からなかったら、おじいさんやおばあさんに確認してもらってください」
そんなものあるわけない、と思った。家族旅行に行くときも、いつも写真はデジカメで撮っている。6そんな骨董品のようなもの、私は見たことがなかった。
しかし意外なことに、そんな「見たこともない古いカメラ」は、私の家にあったのだ。
話をしたら、父はあっさりとそれを出してきてくれた。おじいちゃんの家からもらってきたものだという。7先生の言葉は的中していたわけだ。
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