一番目の長文は暗唱用の長文で、二番目の長文は課題の長文です。
1研究に限らず、大事業の成功に必要な三要素として、日本では昔から「運・鈍・根」ということが言われている。科学者の伝記を読むと、その人なりの「運・鈍・根」を味わうことができる。
2「運」とは、幸運(チャンス)のことであり、最後の神頼みでもある。「人事を尽くして天命を待つ」と言われるように、あらゆる知恵を動員することで、逆に人の力の及ばない運の部分も見えてくるようになる。3人事を尽くさずにボーッとしているだけでは、チャンスを見送るのが関の山。運が運であると分かることも実力のうちなのだ。
4次の「鈍」の方は、切れ味が悪くてどこか鈍いということである。最後の「根」は、もちろん根気のことだ。途中で投げ出さず、ねばり強く自分の納得がいくまで一つのことを続けていくことも、研究者にとって大切な才能である。5論文を完成させるまでの数々の自分の苦労を思い出してみると、「最後まであきらめない」、という一言に尽きる。山の頂上をめざす登山や、ゴールをめざすマラソンと同じことである。
6それでは、なぜ「鈍」であることが成功につながるのだろうか。分子生物学の基礎を築いたM・デルブリュックは、「限定的いい加減さの原理」が発見には必要だと述べている。
7もしあなたがあまりにいい加減ならば、決して再現性のある結果を得ることはなく、そして決して結論を下すことはできません。しかし、もしあなたがちょっとだけいい加減ならば、何かあなたを驚かせるものに出合った時には……それをはっきりさせなさい。
8つまり、予想外のことがちょっとだけ起こるような、適度な「いい加減さ」が大切なのである。このように少しだけ鈍く抜けていることが成功につながる理由をいくつか考えてみよう。
9第一に、「先があまり見えない方が良い」ということである。頭が良くて先の予想がつきすぎると、結果のつまらなさや苦労の山の方にばかり意識が向いてしまって、なかなか第一歩を踏み出しにくくなるからである。0
第二に、「頑固一徹」ということである。「器用貧乏」や「多芸は無芸」とも言われるように、多方面で才能豊かな人より、研究に
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