1国際感覚があるということは、ただ流暢に外国語を話し外国人とそつなくつきあえるというような単純なことではありません。また国際感覚を身につけるということは、これさえ手に入れれば大丈夫というような一本の「魔法の杖」を見つけることでもありません。2国際感覚という言葉は、国際化という言葉がそうであるように、そのとらえ方が人によってまちまちだからです。
ただ、いま私たちにとって大切だと思う問題は、たとえばそれが人権であれ、平和であれ、環境であれ、それについて掘り下げて考えようとすれば、たいていの場合に、国際的な側面とかかわりあいをもってきます。3したがって、「国際感覚ってなんだろう」と考えることは、来たるべき二十一世紀に生きる私たちの生き方について考えることでもあるのです。それは、現代社会の中で、一人の人間が自分の生き方を貫こうとしたらいったいどういう資質が求められるのか、と問うことでもあります。
4だから「国際感覚をもってる人って、どんな人でしょうね」とたずねられたとしたら、こう答えることだけはできそうです。「そうですね。あなたがたった一つの正答を期待しているとしたら、それを示すことは私にはできません。5でも、つぎのような最大公約数の回答を出すことならできるように思います」と。
国際感覚を身につけている人というのは、たとえばつぎのような人のことです。「自分なりの意見をきちんともっている人」「それを正確に人に伝えることのできる人」6「つねにステレオタイプ(型どおり)の発想をさけようと努めている人」「海外のことだけでなく、日本についてもよく知ろうとしている人」そして「異文化と正面からむきあおうと心がけている人」などです。
7ただ、私たち日本人の場合、どうしてもまず日本という国の枠を考え、その枠組みの中で、「世界に誇れる日本人の資質とは何か」と考えることになってしまいがちです。しかし、現代では、自分の国の国益さえ守れればそれでよい、という時代ではなくなってきています。8そのことは、グローバル・イシュー(地球的課題)が広く認識されるようになったことにもあらわれています。
たとえば、世界の自然環境を守ることと、ある国の経済的利益が衝突するということは、いくらでも起こりうることです。9そのときに私たちが、自分の国の国益だけにとらわれずに、より普遍的な視点から発想できるかどうかが問題になってきます。一つの時
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