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 自分の脳の「好み」を知ってそれを上手に活用することが「生き方探し」の勉強法の究極のコツになります。ところが、「生き方探し」に迷っている人や失敗する人は、たいてい「自分の脳」の「好み」ではなく「他人の脳」の「好み」を自分の脳の好みだと錯覚さっかくしています。だから、勘違いかんちが しないことが第一のコツなのです。どんな仕事であれ生き生きと充実じゅうじつ感をもって打ち込んう こ でいる人は、必ず他人の脳ではなく自分の脳の好むことを選択せんたくしています。
 しかし、自分の脳の「好み」に合わせているだけでは不十分です。「好み」は「偏りかたよ 」でもあるからです。だから、「好みに合わせてはまる」ことと併せあわ て、あえて「好み」に合わないことや「食わず嫌いく  ぎら 」だったことにチャレンジしてみることです。これが第二のコツです。異なる視点からの情報が思考のはばを広げ、発想をより豊かにしてくれます。
 おもしろいことに、それまで「食わず嫌いく  ぎら 」だったことのほうがじつは自分の脳の「好み」にぴったりだった、ということも珍しくめずら  ありません。私は英文学の勉強をしていた人が心理学で成功したケースを知っています。
 これこそ自分の脳の「好み」だと考えてきたものより「食わず嫌いく  ぎら 」だったものがじつは本当の好みだった、ということがあるくらい、自分の脳の「好み」を探すのはむずかしいものです。だから、ときに自分の脳の「好み」を疑ってみる必要もあるわけです。そのために、あえて「好み」に合わないことや「食わず嫌いく  ぎら 」にチャレンジしてみることが第二のコツになるのです。
 それにいくら好みに合ったところで、人間の脳は「飽きあ 」という問題も抱えかか ています。死ぬまではまり続けるという幸せな人もいますが、そうでない人もたくさんいるのは、いくら好みでも「飽きあ 」があるからです。この「飽きあ 」の問題に対処するためにも、今の自分の脳の「好み」とは別の「好み」を開拓かいたくする努力を怠らおこた ないほうがよいでしょう。
 そして「生き方探し」の第三のコツは、人と人との対面するコミ
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ュニケーションを欠かさないということです。人の脳はそれぞれ異なった偏りかたよ をもっています。「好みの違いちが 」もその一つです。そして人は互いたが の脳の偏りかたよ 方が違うちが からこそ、互いにたが  理解しあうことが難しいのです。だからこそ、コミュニケーションが大切なのです。他者や異文化の視点が加わることで、自分の考え方の偏りかたよ が自覚され相対化されるからです。
 それゆえ、「他者との語り合いの場」に参加することが「生き方探し」の勉強法の第三のコツになります。学校でもサークルでも生涯しょうがい学習機関でも異業種間の勉強会でもかまいません。そのような場で語り合うことでしか得られないものがあります。それはあなたの「生き方探し」の強い力となってくれるでしょう。人と人とのコミュニケーションはまさに生きた勉強そのものなのです。

(中山 治「生き方探しの勉強法」より)
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