a 長文 5.4週 sa
長文が二つある場合、読解問題用の長文は一番目の長文です。
 シベリアやアラスカといった、さむさの厳しいきび  地方で暮らすく  人々は、古くから、人やもの運ぶはこ ために、犬ぞりを使っつか てきました。シベリアン・ハスキーやサモエド、アラスカン・マラミュートといった種類しゅるいの、さむさに強く、力持ちちからも の犬たちにそりを引かせるのです。これらの犬たちは、ふさふさした毛と厚いあつ 脂肪しぼう持っも ているため、北極ほっきょくこおりの上で眠っねむ ても平気へいきです。また、長い距離きょりを走っても耐えた られる、すぐれた体力の持ち主も ぬしです。
 なかでもハスキー犬は、探検たんけん家ピアリーやアムンゼンによる北極ほっきょく南極なんきょく探検たんけん使わつか 有名ゆうめいになりました。また、ドッグレースや犬ぞりレースで、いつも優秀ゆうしゅう成績せいせき収めおさ ていました。
 あるとき、アラスカのノームという町に、ジフテリアという恐ろしいおそ   病気びょうきがはやりました。現在げんざいでは多くの国で予防よぼう接種せっしゅが行われているので、ジフテリアはほとんど流行りゅうこうすることがありません。しかし、当時はまだ、おおぜいの人が死ぬし こともある怖いこわ 病気びょうきでした。ジフテリアの症状しょうじょう抑えるおさ  には、ワクチンというくすり必要ひつようですが、この時ノームの町では、ワクチンがそこをついてしまいました。あまりに患者かんじゃが多かったからです。このままでは、人々がどんどん死んし でしまいます。
 ノームの町からアラスカしゅう政府せいふがあるアンカレッジに、助けたす 求めるもと  連絡れんらくが入りました。すぐにでも、ワクチンを送らおく なければなりません。しかし、その時はとても天気が悪くわる もう吹雪ふぶき続きつづ 飛行機ひこうき飛ばすと  ことができません。自動車じどうしゃでさえ走れないようなひどいあらしです。ワクチンをラクチンに運べるはこ  ような状況じょうきょうではありませんでした。
 「そうだ。犬ぞりで運ぼはこ う。」政府せいふは、そう決断けつだんしました。そして、すぐさま村々に連絡れんらくが行きました。ただちに二十の犬ぞりチームが、ワクチンを届けるとど  ために準備じゅんびをしました。
 外は、マイナス五十にもなる厳しいきび  さむさと、荒れ狂うあ くる 吹雪ふぶき
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す。この中を、二十の犬ぞりチームは五日間かけて走り通し、ワクチンは無事ぶじにノームに届けとど られたのです。このおかげで、数百人のいのち救わすく れました。
 このときの働きはたら をたたえて、ハスキー犬の銅像どうぞうが、ニューヨークのセントラル・パークに立てられています。また、この出来事できごと記念きねんして、毎年、世界せかいでいちばん難しくむずか  いちばん長い犬ぞりレースがアラスカで行われるようになりました。このレースは、アンカレッジからノームまでを人間一人と犬たち十数ひきで走るレースです。ふつう、ゴールするのに三週間くらいかかるそうです。
 犬たちのがんばりも相当そうとうなものですが、人間の根性こんじょうもたいしたものです。こんなに大変たいへんなレースの後では、犬たちに号令ごうれいをかけ続けつづ た人間の声もしわがれて、きっと「ハスキー・ボイス」になってしまうことでしょう。
 寒いさむ 地方で使わつか れる犬ぞりのほかに、日本にもさまざまなそりがあります。有名ゆうめいなところでは、エビぞり、ひげそり、のっそり、ごっそり、もっそり、こっそり、ひっそり、げっそり、などです。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(τ)
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長文 5.4週 saのつづき
 哺乳類ほにゅうるいの赤ちゃんは、母親からミルクを与えあた られて育ちそだ ます。動物どうぶつのミルクの成分せいぶんは、みな同じではなく、それぞれに特徴とくちょうがあります。たとえば、オランウータンやチンパンジーなどは、母親がいつも子供こどものそばにいてミルクを与えるあた  ことができる生活をしているので、ミルクは薄くうす たんぱく質    しつ脂肪しぼうが少なくなっています。
 ところが、ライオンなどの狩りか に出かける動物どうぶつは、母親が何時間も留守るすにするため、その間は子供こどもにミルクを与えるあた  ことができません。長時間子供こどものおなか満たしみ  ておく必要ひつようがあるので、ミルクは濃くこ たんぱく質    しつ脂肪しぼうをたくさん含んふく でいます。
 また、寒いさむ 地方や水中にすむ動物どうぶつは、体温たいおんをうばわれないように、皮膚ひふの下にたくさんの脂肪しぼうをたくわえています。この仲間なかまであるアザラシやアシカのミルクはとても濃くこ 脂肪しぼうがたくさん含まふく れています。
 クジラやイルカの赤ちゃんは、水中でミルクを飲みの ますが、まだ赤ちゃんなので長時間もぐっていることができません。そこで、短いみじか 時間でもたくさんの栄養えいよう取れると  ように、やはり濃いこ ミルクになっています。
 人間のおなかなかには、たくさんの細菌さいきんがすんでいて、その中には役に立つやく た ものと病気びょうきのもとになるものがあります。赤ちゃんのおなかなかにも、生まれて間もなく、さまざまな細菌さいきんがすみつきはじめます。母乳ぼにゅうには、赤ちゃんにとって役に立つやく た 微生物びせいぶつ増えるふ  ための成分せいぶんや、病気びょうきのもとになる細菌さいきん増やさふ  ないようにする成分せいぶんが入っていて、赤ちゃんの健康けんこう保つたも 大きなやく割りわ 果たしは  ています。
 赤ちゃんが生まれて間もないころの母乳ぼにゅうは、初乳しょにゅう呼ばよ れています。人間の体には、外から入ってきた病気びょうきのもとを撃退げきたいするための免疫めんえきというシステムがありますが、生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ免疫めんえき十分じゅうぶん持っも ていません。初乳しょにゅうには、お母さんが
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持っも ている免疫めんえき物質ぶっしつがふくまれていて、それが赤ちゃんの体の中で吸収きゅうしゅうされて、いろいろな病気びょうきから赤ちゃんを守っまも ているのです。

 おっぱいには、このようにいろいろなものがいっぱい入っています。
 しかし、赤ちゃんが大きくなり、自分でご飯 はんが食べられるようになると、やがて赤ちゃんは自分の力で生きていくようになります。
 そこで、「おっぱいさん、グッパーイ」となるわけです。

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