長文が二つある場合、音読の練習はどちらか一つで可。
1「やった! 跳べた。」
高田さんが跳べたとき、クラス中のみんながざわめきました。高田さんはそのまま動きません。じっと立っています。女子が何人かかけよりました。うれしそうな声をあげながら、高田さんの肩をゆすったり、背中をたたいたりしています。2やっと、高田さんが顔をあげてこちらを向きました。
「みんな、ありがとう。」
とても小さな声で、あまり聞きとれませんでしたが、確かに口がそう動きました。誰からともなく拍手が起こります。パチパチパチパチ。3このクラスで最後の体育の授業、ずっと跳び箱を跳べなかった高田さんがついに跳んだのです。クラスの誰もが待ち望んでいた瞬間でした。
跳び箱の授業は、二月に入ってから始まりました。4みんなが大はしゃぎで段を上げている中で、高田さんは何度跳んでも、跳び箱にまたがって止まってしまうのでした。
「まだ、跳べないの。」
と言う人もいました。跳ぶ前に、
「ドッスーン。」
などとからかう人もいました。5もし、ぼくが高田さんだったら、とっくに、できないと言って投げ出してしまったことでしょう。
しかし、高田さんは、あきらめませんでした。何度も何度も挑戦していました。6放課後、先生と練習している日もありました。その姿に、それまで冷やかしたり笑ったりしていた人も、だんだん応援するようになったのです。
やがて体育は次の種目になりましたが、特別に高田さんのために跳び箱が用意されました。7高田さんは、毎回黙々と練習していました。クラスでいちばん早く七段を跳べるようになった川上君が、何度もアドバイスしていました。
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