1母まで、まるでわたしのことなどわすれたように、白いまえかけのひもをきゅっとむすぶと、もうながしばのほうにいってしまいました。
わたしはしかたなく、かつよねえちゃんを、よこ目でひとにらみしてから、うらにわのむこうのはなれにいきました。
2はなれでは、太郎くん、みっちゃん、としぼうたち、ちびすけばかり五、六人が、ひとかたまりであそんでいました。
「あ、ゆう子ちゃんだ。」
と、みっちゃんがとびついてきました。みっちゃんは、わたしより一さい年下のなかよしです。3でもわたしは、ぶすっとつったっていました。このままはなれでちびすけたちのあいてをするなんて、じつにつまらないことにおもえてきたからです。
「ねえ、あそぼうよ。」
みっちゃんがわたしの手を、しきりにひっぱります。4そのとき、いいことをおもいつきました。家の中のたんけんをしてやろう、とおもったのです。
「みっちゃん、おいで。」
わたしはみっちゃんをつれて、いそいではなれをとびだし、うらにわのしげみにかくれて、ざしきのようすをうかがいました。
5「なにするの。」
「しっ、だまって、たんけんよ。」
「たんけん?」
「うん、そうっと家の中にはいってなにかいいものさがしだそう。かあちゃんたちに見つからないようにね。」
「見つかったらいけないの?」
「そうよ、見つかったら、たんけんにならないよ。」
「うん、おもしろそうだね、たんけんって。」
6みっちゃんはすぐにうなずきました。みっちゃんは、いつもわたしのいうなりになるのです。
ふたりはざしきのよこにまわり、ろうかのすみっこから家の中にしのびこみました。そしてまず、ふろばにとびこみました。
7ざしきのほうからきこえてくる、おじいさんたちのはなし声やわらい声。だいどころの水の音、おさらのふれあう音や足音。いろんな音に耳をすましながら、ふたりは、かがみのまえでくびをすくめてくすりとわらいました。
8「あ、かあちゃんの声だ。」
みっちゃんが、とびだそうとしました。
「だめ、みっちゃん。見つかったら、また、はなれにつれもどされるよ。」
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