1しんがっきが、はじまりました。
ぼくたちの四年男子組のうけもちは、となり町からうつってきた森先生にかわりました。
森先生は、はじめてのじゅぎょうのとき、
「きょう女子組の先生から、男子組のせいとが、ヘビのようなものをつかって、女子をおどしたり、なかせたりするものがいるから、げんじゅうにちゅういしてくれといわれた。2よわいものいじめはよせ! 男子らしくないぞ。」
といって、口をきつくむすんで、こわい顔をして見せました。ぼくたちの組の男子は、そのはん人が、だれであるか、ひとりのこらずしっていましたが、みんなしらん顔をしてだまっていました。
3そのとき、ガキだいしょうの勝五郎が、「ふん」と、はなをならしました。勝五郎は、よくないことをけいかくするまえに「ふん」とはなをならすくせがありました。(で、あいつ、なにかやるつもりだな。)と、ぼくはすぐかんじたのです。
4この小学校でも、あたらしい先生がきたときは、なにか、いたずらをして、先生をびっくりさせたり、おこらせたり、おおわらいをして、からかったりするのが、しきたりのようになっていました。5いたずらのさしずをするのは、ずうっとまえから、まえのガキだいしょうが、つぎのガキだいしょうにひきつぐとりきめになっていたのです。
「おい、みんな、ひる休みに校ていのサクラの木の下にあつまれ、省ちゃんは、ぞうりぶくろをもってくるのだぞ。」
6勝五郎のめいれいが、耳から耳へまたたくまにつたわりました。
ぼくが、ぞうりぶくろをもってサクラの木のところへいくと、もう、勝五郎の子分いちどうが、顔をそろえてまっていました。
7勝五郎は、ぼくから、ぞうりぶくろをうけとると、じぶんのふところから、ぼくのヘビをひっぱりだしてふくろの中にいれました。
「いいか、みんな、このふくろを、教卓の上にのせておくんだ。8先生が、だれだ、このようなけがらわしいものをここにおいたのは、とかなんとかいいながら、ふくろの中に手をいれる……、それからは、見てのおたのしみだぞ。」
勝五郎は、そこでまた、「ふふ」と、とくいのはなをならしました。
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