1「なにか、ないかなァ。」
と、家じゅうの戸だなをあけてみましたが、きょうにかぎって、いつもよういしておいてくれる四人分のおやつがありません。
そのとき、おもいだしたことがありました。2せんだっての夕方、うちへ、大きなブリキかんをとどけにきた人がいて、かあさんが、
「なにしろ、たべざかりが、こんなにおおくちゃ、このせつ、おやつ代だって、ばかになりませんからね。」
といいながら、お金をはらっていたのです。
3「そうだ、あれはきっと、おかしの買いだめにちがいない。あれだ!」
と、気づいたまではいいけれど、さて、どこにしまったのかな? みんながるすなのをさいわい、あっちこっち、おしいれや戸だなをさがしているうちに、ありました! 4しんさつしつの入り口のかげがかいだんになっている、そのふくろ戸だなの、ふるしんぶんがつんであるかげに、そのかんが見つかったのです。
「なんだ、こんなところに。」
ふたをあけてみると、やっぱり! あの、さかなのかたちをした、小さい、あめいろのおせんべいが、ぎっしりつまっています。
5わたしは、はっと、いきをのみました。いつもなら、十つぶぐらいずつ、かぞえてわけてもらうおいしいおかしが、こんなにたくさん、目のまえで「たべてください」といっています。それにぷーんと、いいにおい。
6わたしは、金貨の山をまえにしたよくばりじいさんみたいに、手ですくってはあけ、またすくって、たのしんでいましたが、おもいきって、りょう手をおさらにして、山もりすくうと、たちあがりました。さて、かんのふたが、しめられません。7そこで、いったんぜんぶ、かんの中にあけて、こんどは、おでこで、ふたをおさえ、すくってからそーっとおでこをはずしてみます。うまくいきました。こんどは、戸だなの戸をしめるばん。りょう手がつかえないから、足でしめるしかありません。8おもいガラス戸なので、ガラガラッと大きい音がします。大いそぎでこれだけやると、べんきょうべやにもどって、一つずつ口にほおばります。そのおいしいこと。たべおわるころは、おなかがいっぱい。
それからかんがえました。9おかしが、きゅうにへったと、かあさん、気がついて、おこるかな? いや、あんなにあるんだから、わかりっこない。いもうとたちに、おしえてあげようか。いや、三人のうち、だれかがつげ口するかもしれない。0それに、みんながまねをしたら、たちまちかんがからっぽになって、すぐバレてしま
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