1私たち日本人にとって、海苔はとてもなじみ深いものですが、外国の人たちにはそうでもないようです。
明治時代に日本にやってきた西洋人は、「日本人は黒い紙を食べる」と言って不思議がったようですが、今でも海苔が苦手な外国人は多いようです。2外国人のパーティーに、巻きずしを作って持っていったら、その美しさには感心されたが、海苔をはがして食べるので、せっかくの巻きずしがぐちゃぐちゃになってしまったという話も聞きます。どうして海苔をはがしたのかというと、「皮だと思った」のだそうです。
3あまり知られていませんが、二月六日は「海苔の日」です。なぜこの日が「海苔の日」になったのかというと、今から千三百年くらい前の日本最古の法律である「大宝律令」が広められた日だからです。奈良時代のすぐ前、飛鳥時代の終わり頃のことです。4その「大宝律令」の中には、朝廷に納める税金として、二十九種類の海産物がのっていました。そのうち八種類が海藻で、その中の一つが海苔でしたが、その海藻の中でも、海苔は一番の高級品でした。
5その後の時代も海苔は貴重品として扱われてきましたが、ただ、この頃食べられていたのは生海苔で、今私たちが食べているような乾物の海苔ではありませんでした。6のちに、江戸時代になってから、浅草で紙の漉き方にヒントを得た「漉き海苔」が登場し、「浅草海苔」として全国に広まりました。この頃、海苔巻きも大流行し、人気の食べ物となったようです。
7海苔の養殖は江戸時代から始まっていましたが、まだ失敗も多く、海苔の生産は不安定で、値段も一定しませんでした。しかし、昭和二十四年、イギリスのドゥルー女史が、海苔の一生を細かく調べることに成功しました。8この知識を基に、ようやく海苔は人工的に養殖できるようになったのです。
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