1ニトログリセリンのグリセリンは、石けんをつくるときにできる副産物です。ねばっこい液で、薬や、機械のうごきをなめらかにするための油としてつかわれます。2「硝酸が変化させたグリセリン」というのが、ニトログリセリンのいみですが、じっさいには、とくべつのそうちで、こい硝酸と硫酸をまぜた液に、水分をとりさったグリセリンをそそいでつくります。
3これくらいのことは、技術雑誌にしたしんでいるアルフレッドには、とっくにわかっています。
(つくりかたがわかっても、ばくはつをコントロールすることには役だたないなあ……。)
4そうおもいながら、アルフレッドは、いくどか、小さなばくはつ実験をこころみました。けれども、ニトログリセリンは、うんともすんともいわないか、とんでもないときにばくはつして、きもをひやさせるかです。
5「いずれにしても、導火線を用いなければならないよね……。」
アルフレッドが、ちえをかりにいったジーニン先生は、大学の研究室でいいました。
6導火線は、黒色火薬を紙と糸でまいてつくった線です。手もとに火をつけると、シューッともえていき、ばくやくをばくはつさせるのです。
7「……そうなんです、先生。まさか大量のニトログリセリンを、鉄のはりでばくはつさせるわけには、いきませんものね。いのちあってのものだねです。」
8「しかし、導火線では、ばくはつしない……と。あたえるショックが小さすぎるのかなあ。」
9「そうかもしれません。といって、導火線をうんと太いものにすると、もちはこびのとき、きけんですし……。」
アルフレッドは、そうこたえながら、「あたえるショックを強めるには?」と、ノートにメモしました。0
(「ノーベル」大野進著より)
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