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 みなさんは空の絵をかくとき、何色でかきますか。ふつうは空色、つまり薄いうす 青色にするのではないでしょうか。しかし、もしかすると、ある人は、昨日きのう夕焼けゆうや の空を思い出してきれいなオレンジ色にするかもしれません。
 確かたし に、空の色は時刻じこくによっても、天気によっても変わりか  ます。空だけではありません。木でもベンチでも人の顔でも、その時々でいろいろな色合いに変わりか  ます。では、その時々の色を決めるき  のはなんでしょうか。
 それは光です。ものは、光との関係かんけいによってさまざまな色合いに変化へんかします。特にとく 、外の景色けしき太陽たいようの光をじかに受けう ているので、一日のうちでもさまざまに印象いんしょう変えか ます。この光というものを大切に考えて、自然しぜん姿すがたをそのまま絵にしようと考えたのが、印象派いんしょうは呼ばよ れる芸術家げいじゅつかたちでした。
 印象派いんしょうはとは、十九世紀せいきの後半にフランスで起こっお  た画家を中心とするグループです。それまでは、時間をかけてかきこんだ重々しいおもおも  作品さくひんがよいとされてきました。そのため、一瞬いっしゅん輝きかがや をとらえてすばやく仕上げるしあ  印象派いんしょうはの絵は、最初さいしょ単なるたん  スケッチにすぎないと見られていました。印象派いんしょうは最初さいしょ印象いんしょうは、あまりよくなかったのです。
 しかし、印象派いんしょうはの人たちは、実はじつ しっかりした科学てきな考え方にもとづいて制作せいさくをしていました。そのひとつが、シュヴルールという人の色の考え方です。かれは本の中で、となり合う色がおたがいに影響えいきょうしあって、いろいろな見え方になることを説明せつめいしました。そしてとなり合う色どうしが違えちが 違うちが ほど、より大きな効果こうかがあるとしました。
 例えばたと  、赤とみどり、黄とむらさきなどは、最ももっと 違うちが 色合いで、このような色の組み合わせを補色ほしょく関係かんけい呼びよ ます。補色ほしょく並べなら てみると、目がちかちかするような効果こうかを生みます。青っぽい色はおく
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引っ込みひ こ 、赤っぽい色は前に飛び出しと だ てくるようにも見えます。
 その印象派いんしょうはの画家たちの中で中心となったのが、クロード・モネです。モネは、移ろいうつ  やすい光や自然しぜん鮮やかあざ  な色を、だれよりも深くふか 追い求めお もと ました。
 それまでの絵は、絵の具え ぐ混ぜるま  ことによってさまざまな色を作り出していました。絵の具え ぐ混ぜ合わま あ せれば混ぜ合わせるま あ   ほど、明るさがなくなっていきます。絵の具え ぐふで洗っあら ていると、水がどんどん暗いくら 色になっていくことを知っている人も多いでしょう。印象派いんしょうは以前いぜんの絵は、暗いくら 部分ぶぶんかげをつけることによってものの奥行きおくゆ を出していたので、絵が更にさら 暗くくら 重いおも 感じかん になっていました。
 モネはこうした暗いくら 絵を嫌いきら ました。そして、光に溢れあふ たみずみずしい景色けしき描くえが ために、新しい技法ぎほう使いつか ました。ある色を作るのに、絵の具え ぐ混ぜ合わせるま あ   のではなく、純粋じゅんすいな色を数多くの点としてとなり合わせるように描いえが たのです。こうすると、離れはな て見た場合、それらの色が混ざりま  合って見えます。しかし、絵の具え ぐ混ぜま 使っつか たときよりもはるかに明るい色になるのです。モネは、となり合う点どうしを補色ほしょく関係かんけいにするなど、いろいろな工夫くふう重ねかさ ました。こうして、モネの絵は、自然しぜんの風や太陽たいようのあたたかさまで感じかん させるようなものになっていったのです。
 最初さいしょ受け入れう い られなかったモネの絵も、次第にしだい 多くの人に認めみと られるようになりました。今その光溢れるあふ  絵は、世界中せかいじゅうの人々から愛さあい れています。

「モネさんのような絵を、印象派いんしょうはの絵と言ってもイーンショウか。」
「うん、いいかモネ。」

   言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(α)
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