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 アルフレッドのゆいごんじょうは、十二月十七日、サン=レモのやしきでひらかれました。立ちあったのは、リュドビグの長男イマニュエル、ロベルトの長男ヤルマル、それにソールマンと弁護士べんごしです。
「なんですって。わたしが、ノーベルさんのゆいごんをとりしきることになっているんですって……。」
 ソールマンは、おどろきました。たしかに、ゆいごんじょうのおもて書きには、ソールマンの名があります。ゆいごんじょうが、弁護士べんごしによってよみあげられるにつれ、ソールマンはさらに大きなおどろきにうたれ、まばたきもしません。
「わたし、アルフレッド=ノーベルは、あとにのこすざいさんについて、つぎのようにゆいごんする……。」
 アルフレッドは、ごくわずかなお金をおくる友人、しんるいの名をあげたあと、こう書いていました。
「のこりのすべての金の利子りしを、毎年、そのまえの年に、人類じんるいのために役だつやく  しごとをした人々に、しょうとしてわけること。
 利子りしは五つにわけ、
一、物理ぶつり
一、化学かがく
一、医学いがく生理学
一、文学
一、国際こくさい平和へいわ
の、それぞれの分野で、重要じゅうよう発明はつめい発見はっけんをし、あるいは理想りそうにみちた作品さくひんをあらわし、あるいはまた戦争せんそうをふせぐことにつとめた人物じんぶつにあたえること。」
 ゆいごんじょうを、弁護士べんごしがよみおわると、ソールマンが、ぼうぜんとして、いいました。
「このしごとを、わたしがやるのですか。たった二十六さいのこのわたしが……。」
「ソールマンさん……。ロシア語では、ゆいごんをとりしきる人のことを『たましいの代理人だいりにん』というのですよ。しっかりなさい。おじのアルフレッドは、あなたがこれをやれるとみこんだから、あ
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なたをえらんだのですよ。」
 イマニュエルが、なき父リュドビグそっくりの、かしこそうな目をむけてはげましました。
 そうはげますイマニュエルは、ヤルマルとともに、ゆいごんじょうがもしなかったら、アルフレッドのばく大なざいさんをもらえるはずの人なのです。
「わかりました。では、このしごとを、わたしのしょうがいのしごととして、おひきうけします。」
 そうちかったソールマンは、十二月二十九日、ストックホルムの教会で、アルフレッドのそうしきがおわったあと、しごとにとりかかりました。
 
(「ノーベル」大野すすむちょより)
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