1「ほんとに、たからものがあるのか!」
竹ちゃんが、ぼくにむかってねんをおすようにいいました。
そういわれると、ぼくもあとにはひけません。
「うそじゃない。おじいちゃんが、いったんだ、ほらあなの中に、千りょうばこにはいった大ばん小ばんが、ごっそりうずめてあるって。」
2ぼくのうそはますます大きくなり、とりかえしのつかない大ぼらになっていきました。
「よし、いってみよう。だけど、おまえがいちばんさきにはいるんだぞ。いいな。」
竹ちゃんが、だめおしをするように、ぼくの顔を見つめていいました。
3「ああ、いいとも。」ぼくは、むねをはってこたえました。
でも、ほんとうのところ、ぼくの心は、(こまったぞ。どうしよう……。)と、おろおろしていました。
やがて、ローソクやマッチなどをもったぼくたち五人は、ドンドンあなへむかいました。
4あなの入り口は、やっと人がとおれるだけのせまさです。
「さあ、おまえからはいるんだ!」
竹ちゃんがぼくの心を見すかすようにせきたてました。ぼくは、とたんに、ぶるるる……と、からだがふるえました。
5「おい、さっきいったの、あれみんなうそっぱちなんだ!」
ぼくは、のどのあたりまでそんなことばがでかかったのですが、またゴクン、とのみこんでしまいました。
みんなから「大うそつき、大ぼらふき」と、いわれるのがしゃくだったからです。
6ぼくは、ローソクに火をつけてまっさきにあなにはいりました。
正ちゃん竹ちゃん、六ちゃんとあとにつづき、いちばんしんがりは竹ちゃんの弟で、二年生の清ちゃんでした。
7はいったとたんに、しめっぽくかびくさいいやなにおいが、ぷーんとはなをつき、ローソクの光におどろいたコウモリが、パタパタ……と、とびたちました。
(ばか、ばか、ばか! おまえって、なんてばかなんだ。なぜ、つまらないうそなんかついたんだ!)
8ぼくの心が、しきりにぼくをせめたてました。
「おい、たからのありかはどのへんだ!」
うしろから、竹ちゃんがたずねました。
「もっとさきだ。」
ぼくは、かぼそい声でこたえました。
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