1「でもね、お母さん、小学校って、まるで軍隊みたいなんだ。だからぼく、いやなんだよ。」
なるほど、そのころのドイツの小学校は、規則第一で、暗く重苦しいふんいきに満ちあふれていました。2授業も、暗記ばかり。自分で考えることは、いっさい許されません。先生にさからうことはもちろん、質問することさえ禁じられていたのです。おさないアルバートが「軍隊そっくり。」というのも、もっともでした。
3おまけに、無口で体育がにがてなアルバートには、なかなか友だちもできません。一か月もしないうちに、学校がすっかりいやになってしまいました。
4とはいえ、勉強まできらいになったわけではありませんでした。下校してくると、ヤコブおじさんに助けてもらいながら、辞書をひき、本を読み、自分の好きな勉強を深めていきました。
5数学に興味をもったのも、そのころのことです。
ある日、アルバートはヤコブおじさんにたずねました。
「ねえ、おじさん、『代数』ってなんのこと?」
おじさんは、待っていましたとばかりに、説明をはじめました。
6「『代数』とは、わからない数をさがしだす数学だよ。まず、わからない数を、文字の『X(エックス)』とよぶ。そして、問題でいわれたとおりに、計算式をつくっていくと、さいごに、『X』がどんな数かが、ちゃんとわかるんだ。」
7「なんだか、おもしろそうだね。」
「おう、頭の体操みたいなものだからな。」
こうして、アルバートは、小学生ではとても理解できないような数学を、どんどん、自力で学んでいったのです。
8勉強にあきると、こんどはバイオリンを取り上げ、小さな手で器用に、モーツァルトやベートーベンの曲をかなでます。
そういえば、バイオリンも、ほとんど独習でした。
9六さいになったとき両親に連れていかれたバイオリンの先生
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