1私が小さい頃から大切にしているものは貝殻です。大切にしているだけではなくて、今も集めているので、大切にしているものはどんどん増えていきます。
最初に貝殻をもらったのは、たぶん幼稚園の年中のときです。2伊豆にあるお父さんの会社の保養所でお泊まりをしたときです。きれいな伊豆の海には広い砂浜があって、私は、そこでよく砂の山を作って遊びました。砂の山を固めたあと、真ん中を掘ってトンネルにするのが大好きでした。
3私は、浮輪をしても波が怖かったので、あまり海には入らないで砂遊びばかりしていました。砂を掘っていたら、小さい貝や貝のかけらがたくさんみつかりました。私はそれを洗ったアイスのカップに集めました。
4そのときも私が砂を掘っていたら、赤い水着を着たお姉さんがやって来て、
「たくさん集めたね。これきれいでしょう。桜貝というのよ。」
と、ピンクの二枚貝をくれました。すけて見えそうなうすい貝で、まるで貝のお姫様のようでした。5私はうれしくて、ありがとうと言いたかったけれどはずかしくて言えませんでした。代わりに横にいたお父さんがお礼を言いました。
夕ごはんのとき、お母さんにそのことを話しながら桜貝を見せました。6お母さんは、
「あら、ほんと。こんなにきれいな桜貝ってあんまりないのよねえ。よかったわね。」
と言って、そっと桜貝を手に乗せました。そして、
「これねえ、うすくてわれやすいから、何かでつつんでおいた方がいいね。」
と、ティッシュを出して、そっとつつんでくれました。
|