a 長文 12.2週 su2
 そこでエジソンは、とうとうかるい蓄電池ちくでんち研究けんきゅうにとりかかることになりました。
 さて、研究けんきゅうに手をつけてみると、いままでだれも手をださなかったわけです。それは、おそろしくむずかしいしごとでした。なまりいがいのあらゆる金属きんぞくをつかい、あらゆる薬品やくひんをつかって、実験じっけんをこころみてみましたが、どうしてもうまくいかないのです。
 ある日、友人のビーチという人がやってきました。この人はのちに、ゼネラル電気会社の電気鉄道てつどうのしごとをした人ですが、エジソンの蓄電池ちくでんち研究けんきゅうのことをたずねて、
「おもいのほかむずかしい問題もんだいらしいね。さすがのきみも、よわったろう。」
といいました。すると、エジソンがこたえました。
「ビーチくん、わたしは、よい蓄電池ちくでんちのひみつをあかしてくれないほど、神さまかみ  はふしんせつじゃないとおもうね。」
「じゃあ、このひみつのかぎは、どうしたら見つかるというんだね。」
「もうれつにかんがえたうえで、もうれつに実験じっけんをやってみることさ。」
 だが、エジソンの研究けんきゅうも、しっぱいのれんぞくでした。月日はどんどんと、たっていきます。それでもエジソンは、気をおとしません。
「きょうのしっぱいは、あすはとりかえせる。あすだめならあさってとりかえす……。」
 いつも希望きぼうをすてません。朝からばんまで、硫酸りゅうさん硝酸しょうさん化成かせいソーダなどのつよい薬品やくひんをいじるエジソンの手は、すっかりあれてしまいました。
 世界一せかいいちの天才発明はつめい家が、かんがえにかんがえぬき、たいへんな熱心ねっしんさで、しかも、だれもまねのできないほどのしんぼうづよさで研究けんきゅうをつづけ、それで一年たっても二年たっても発明はつめいできない、かるい蓄電池ちくでんちそんな研究けんきゅうは、はたの人々の目には、まったく不可能ふかのうなことととりくんでいるとしか見えなかったのもむりはあり
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ません。
 エジソンといつもいっしょに研究けんきゅうをつづけていた一人の所員しょいんなどは、
「この研究けんきゅうは、エジソンがいままでやりとげたぜんぶの研究けんきゅうをいっしょにしたのより、もっとたいへんだ。しかもエジソンは、一つの実験じっけんにしっぱいすると、『これで成功せいこうに一歩ちかづいた。』というのだ。これほどの努力どりょくには、いかなる自然しぜんも、こんまけせずにはいられまい。
 わたしは、エジソン蓄電池ちくでんちがうまくいくかどうか知らないが、いずれにしても、もうエジソンは、世界せかいてき発明はつめい家などというよりも、世界せかい偉人いじんだという気がしてきた。」
と、しみじみいったものです。

(「エジソン」 崎川さきかわ範行のりゆきちょ 講談社こうだんしゃ 火の鳥伝記でんき文庫ぶんこより)
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