a 長文 4.1週 ta
「ああっ、これ、だれがやったの!」
 お母さんのさけび声が聞こえます。だれかって、犯人はんにんはぼくだとわかっているのにいつもそんなふうに言うのです。
「うわあ、こんなことするのは、シゲしかいない。」
 続いつづ て聞こえるお姉ちゃんの声もいつもどおりです。二人がキッチンでぼくのことを言っているのが聞こえます。ぼくは、ドラキュラのマスクをかぶって階段かいだんのかげにひそんでいて、いつ飛び出しと だ 驚かおどろ せようかと考えていたのですが、ちょっとひるんでしまいました。ついにお姉ちゃんが、
「こうなったら、お父さんに言いつけるしかない。」
と言い出しました。
 ぼくは、いたずらが大好きだいす です。学校でもうちでも、年がら年中、いたずらのネタを考えています。人がびっくりしたり、不思議ふしぎそうな顔をしたりするのを見ると、とてもうれしくなります。だから、先生や家族にどんなに叱らしか れても、また次のいたずらを思いついてしまうのです。
 昨日きのうは、トイレットペーパーの内側うちがわにゴムでできたトカゲをはさんで、ペーパーを引き出すとトカゲが落ちてくるようにしておきました。
 また、夜には、キッチンのしお砂糖さとうの入れ物のフタをとりかえておきました。しおが青で、砂糖さとうが赤のフタなのをぎゃくにしておいたのです。
 そして、今日のいたずらは、お姉ちゃんの問題集のカバーを全科目つけかえたのと、お母さんのショッピングバッグに小さい鉄アレイを隠しかく たことです。
 さて、お父さんが出張しゅっちょうから帰ってきました。お姉ちゃんは真っ先にぼくにされたいたずらを言いつけにいきます。
 お父さんは、笑いわら ながらそれを聞いていましたが、心配でのぞいていたぼくに気がつくと、
「おっ、いたずら小僧こぞうがいたぞ。」
と、ぼくに手招きてまね をしました。
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そして、
「シゲ、お前のいたずらはスケールが小さいなあ。やるんだったら、もっとでっかいいたずらをやれ。」
と、ぼくのおしりをたたきました。そして、
「それと、いたずらっていうのは、人を困らこま せるんじゃなくて、喜ばよろこ せるものじゃないとな。」
と言いました。
 おばあちゃんによると、お父さんも相当ないたずらっ子だったようです。ぼくは、うなずきながら、お父さんはどんないたずらをしたのかなと心の中で思いました。

(言葉の森長文ちょうぶん作成さくせい委員会 φ)
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