a 長文 6.1週 ta
長文が二つある場合、音読の練習はどちらか一つで可。
「エリ、バドミントンやるぞ。降りお てこい。」
 今週も父の声が響きひび ます。毎週日曜日の朝、わたしは父とバドミントン、テニス、キャッチボールなどをします。家の前の広場でやるのですが、本当は少し恥ずかしいは    気もします。父は、声が大きいので近所中に聞こえるし、となりのおばあちゃんが必ずかなら まどから顔を出してこう言うのです。
「親子でなかがいいねえ。」
 父とのスポーツは、まるで特訓とっくんのようです。父は、テニス漫画まんがに出てくるおにコーチのようにわたしをしごきます。だから、冬でも汗だくあせ  になります。
 「エリ、これおいしいぞ。もっと食べろ。」
夕飯ゆうはんの時は、自分のお皿からわたしのお皿におかずを移しうつ ます。自分の好物こうぶつは、わたし好きす だろうと思い込んおも こ でいるのです。
 父は出張しゅっちょうに行くと、必ずかなら おみやげを買ってきます。それは、わたしから見ると大体へんなものです。その地方の名産めいさんお菓子 かしではなく、だいぶ前にはやった小物や、学校に持っていけないような変わっか  文房具ぶんぼうぐ、もう遊ばない小さい子用のおもちゃなどです。
 父は、会社でとてもむずかしい仕事をしている経理けいり専門せんもん家なのですが、うちにいるときは、とてもそんなふうには見えません。昨日きのう
「えっ、今夜はキムチなべ。そりゃ、きむちいい(気持ちいい)。」
などと受けないダジャレを言って、母にジロリとにらまれました。
 テレビのドラマで見るような格好いいかっこう  父親とは違うちが けれど、わたしはそんな父が大好きだいす です。いろいろ好きす 勝手にやっているように見えますが、本当は日曜日の特訓とっくんも、体育が苦手なわたしのためにやってくれているのです。
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 わたしは、今度の父の日に、秘密ひみつのプレゼントを用意しています。それは自然しぜん教室の陶芸とうげいコーナーで作った湯のみです。H・Eと父のイニシャルを入れ、大きなハートで囲みかこ ました。父がどんな顔をするかとても楽しみです。

(言葉の森長文ちょうぶん作成さくせい委員会 φ)
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長文 6.1週 taのつづき
かえるの子はかえる

 カエルのたまごがふ化すると、オタマジャクシになる。オタマジャクシの時は、があって、カエルの子どもとは思えない。ナマズの子みたいだ。それが大きくなるにつれ、がとれ足がはえて、けっきょくはカエルになる。そこから、なにごとも子は親に似るに ものだ、というんだ。体のことではなくて、人間のなかみとか、心が似るに という。あまりいい意味のことわざではなくて、わるい意味に使われるよ。
 たとえば、「あいつのお父さんはなまけ者で、ぐうたらしていたが、かえるの子はかえるだ。あいつもやっぱりぐうたらな人間だ」というように使われる。でもことわざの意味をとりちがえて、ほめことばとして使う人もいる。「息子さんは○○大学に入学されたんですか。さすがはあなたのお子さんだ。かえるの子はかえるですね」これは、けっしてほめたことにはなっていない。まちがった使い方だ。
 おなじような意味のことわざに、「うりのつるには茄子なすびはならぬ」がある。平凡へいぼんな親からは、すぐれた子どもはうまれない、という意味だよ。また、「まむしの子はまむし」というのがある。これは、親が悪人ならその子はやっぱり悪人だ、ということになる。
 このことわざでは、カエルをすぐれたものとしてはあつかっていない。けれどむかしの日本人は、カエルを神様の使いとしてうやまっていたんだ。群馬ぐんま県では「ヒキガエルは神様のお使いである」といい、千葉県では「オオガマガエルは天神さまのお使いだから、殺しころ てはならない」といったんだ。また福島県・東京都・福井ふくい県・和歌山県などでは、「アマガエルは神様のお使い」なので、つかまえてはいけないとか、殺しころ てはいけない、とされていた。熊本くまもと県玉名ぐんでは、「アマガエルはほとけ様を背負っせお ているので、殺しころ てはいけない」といわれ大切にされていたんだよ。これは、カエルたちは田んぼに多くすんでいるから、田の神の使いとされていたからだ。
 かえるつらに水」ということわざは、どんなことをされても平気なようす。また人からきつく忠告ちゅうこくされても、知らん顔して聞こ
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うとしないことをいうんだ。
 かえるも歌のなかま」というのもある。カエルはあまりいい声ではないが、さかんにカエルの歌をうたっている。鳥も虫も、歌をうたう。そのように、カエルから人間まで、生きものはみんな歌がすきである、という意味だ。ほんとにそうだよ。だから、小さな生きものとも仲よくなか  した方がいいんだ。ことわざの中にも、こんなすばらしいものもあるんだ。

 「常識じょうしきのことわざ探偵たんていだん」(国松くにまつ俊英としひでちょ フォア文庫)より
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