道のはじまり
1それはすばらしいことでした。以前人々が狩りをしてくらしていた時代には、一つの山に動物がいなくなると、人々はべつの山へと移動しなければなりませんでした。えもののない日は十日でもニ十日でも、食事をせずに、食糧をさがし歩かなければなりませんでした。
2ところが、いまではちがいます。一つの水田はよく年も、そのまたよく年も、きちんきちんと実りをあげてくれました。畑でとれた作物は、長く保存することもできました。雪にうもれた季節にも、梅雨の長雨の季節にも、人間は安心してその土地で、くらすことができました。
3畑しごとのない日には、べつのしごとをすることもできました。はたおりをして、着物をつくることもできました。わらしごとをして、わらじやむしろや、なわをつくることもできました。4農作業の道具をつくったり、どうしたらお米がたくさんとれるようになるかと、みんなでゆっくり考えあう、ゆとりもできていきました。
畑をたがやすということは、それほどすばらしいことでした。一つの土地にすみつくということは、たいへん幸せなことでした。5家と畑とをむすぶ道は、こうして毎日ふみかためられていきました。家と畑とをむすぶ道も、しっかりつくられていきました。
お米がたくさんとれるようになると、あまったお米は、べつの物と交換することができました。6漁村でとれた海のさかなと交換することができました。山村でおられた布と、交換することができました。村と村とをつなぐ道も、こうしてつくられていきました。
お米がたくさんとれるようになると、十人の人をやしなうのに、八人が畑へしごとにでれば、すむようになりました。7あとの二人はべつのしごとにつくことができました。武士になったり、坊さんになったり、貴族や学者や技術者になることができました。そして、商人になることもできました。こうして都市ができました。大きな都がつくられていきました。8物と物との交換は、さらに活発になりました。人と人との行き来もしだいにさかんになりました。
ちがった土地の人たちが、たがいに交流しあうようになると、ちがったくらしのちえも交換されました。くらしの技術はさらに進歩
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